医務室―――



「ベッドに横になって?」


医務室へ入ると、はアレルヤに横になれと言った。


「椅子じゃ駄目かい?」


二人きりの部屋。
体に触れられる。
ベッドの上で、医者のコスプレをしているようにしか見えない女の子に。
自分だって男、どうしても思考が桃色の方へいってしまう。
椅子ならきっと大丈夫だ。
そう思って言ったのだが、は首を振った。
駄目!と。


「じゃあ、ベッドに座るよ」


横にはならなくて良いよね。
そう言った瞬間―――


「オトナシクネロ!」


ハロの手がビヨーンと伸び、アレルヤを凄い力で押し倒した。
そして、そのまま拘束。
ベッドに括りつけられた。


!?なんかハロが暴走して……」

「暴走じゃないわ。ハロはアレルヤに安静にして欲しいだけなの。ね?ハロ」

「オウ アレルヤ ホカク イマダ ヤッチマイナ」


とても安静にして欲しいだけとは思えない台詞。
何だか怖い。
怖すぎる。


「そ、そうなんだ。じゃあ、部屋で安静にするから僕はこれで―――」

ピシュン!!

「え゛?」


恐怖を感じたアレルヤは部屋で安静にするからと言い、無理やり起き上がろうとした。
その時だった。
謎の光が二本走ったのは。
今のは何だ?
光が走った先を見ると黒焦げた壁が見えた。
煙まで上がっている。


「……えっと?」

「ん?今の?ハロ光線っていうの。
患者さんが無理をしようとするとハロが目から光線を出して止めてくれるの。
大人しく待っててね?いま注射の準備をしてるから」


教えられたとほぼ同時にハロを見たアレルヤ。
冗談だよね?
そう思いながら少し起き上がる素振りを見せたら―――



ヴヴヴヴヴ……



ハロはなにやら恐ろしい音を発しだした。
カタカタ小刻みに振動し、目を光らせている。
冗談ではない!!
黒焦げにされてたまるか。
アレルヤはベッドの上で気をつけをした。
それを見たハロは振動を止めた。


「ハレルヤ……僕は憂鬱だよ」


自分はこの後どうなるのか?少し怖い。
アレルヤは思わずハレルヤに語りかけた。
すると、馬鹿にしたような返事が返ってきた。


『怖いか?なら俺に体を渡せよ。代わりに受けてやるからさ』

「いいのかい?ありがとう。頼むよ」


いつも嫌なことを押し付けて悪いとは思いつつ、頼む。


「情けねー奴だな、ただの機械だろうが」


入れ代わりは直ぐに済んだ。
ハレルヤは文句を言いながらも大人しく待つ。
イイ女に世話を焼かれて悪い気はしないから。


「よく見るとエロい体してんのな」


注射の準備をしているの後姿を見ながら目を細めるハレルヤ。
抱きてー。
そんなことを思っていると―――


「どうしたの?もしかして、怖い?」


準備が出来たらしい。
はふふっと笑いながらハレルヤの側に来た。


「失礼しまーす」


ベッドにちょこんと腰かけ、注射器が乗った盆を膝の上に置き、ハレルヤの腕を消毒する。
そして―――


「じゃあ、注射す、するっ、しまっ、しますっ!」


注射器を手にした途端、ガタガタ震えだした。
手が激しく震えている。


「あ?どうしたよ?」


怪訝そうな顔でどうしたと聞くハレルヤ。
なんだ、一体どうした?


「あ、あのっ、あのねっ、わ、わわ、私っ、ちゅ、注射っ、打つの、こ、怖いのっ!」

「はあっ!?」


の衝撃の告白にハレルヤは驚き、素っ頓狂な声を上げた。
医者が注射打つの怖いって、そんなのありかよ。


「お前、何言ってんだ?それでも医者か?ったく、怖いなら止めろ」

「や、止めないっ!だ、だだ、大丈夫!注射くらいっ……立場じゃなく感情で打つわ!エゴで打つわ!」

「待て、注射は立場で打て!感情やエゴで打つな!なあ、今日は止めとけ?なっ?」


ガタガタと震えながら、止めない、打つ。と言うにハレルヤは焦り、必死に止めるよう言う。
ハロがいなければ力ずくで止められるのに。
もどかしく感じながら、心から止めろと言うが―――


「大丈夫よ!ちょっと痛い程度!そう、ちょおっと、ちょお、おちょっ!?」

「おちょっ!?じゃねーよ!頼むから止めてくれ!」

「や、やだっ!打つのっ!」


はハレルヤの言葉を聞き入れない。
大丈夫だと言って聞かない。


「し、失敗したら……ごめんね!?」

「ごめんじゃ済まねーよ!医者的にもソレスタルビーイング的にも失敗は許されねー!」

「シッパイシタラ コイツステル ショウコインメツ」

「うん」

「うんとか言うなよ!ってかさっきから物騒すぎるだろこのハロ!
ちょっ、待て!ちっ、おい、アレルヤ!アレルヤ!?テメー、シカトすんなよアレルヤ!」


はどうしても注射を止める気がないようだ。
こうなったら仕方がない。
代わってやる。
ハレルヤはアレルヤに代われと呼びかけた。
が、シカトされた。
こういう時は代わろうとしない。


『ごめんよ、もう一人の僕』


ただ、申し訳なさそうに詫びてきた。
ハレルヤはふざけるなと怒る。


「遊○みたいに言ってねーで早く代われよアレルヤ!」

「私のターン、ドロー!注射!アレルヤにダイレクトアタック!」

、お前はそこで話に乗るな!そんでもって俺はアレルヤじゃねー!ハレルヤだ!」


アレルヤじゃないから止めてくれ。
そう叫んだが―――


「えっ?アレルヤじゃないの?んー……よ、よく分からないけど打つ!」

「よく分からないなら打つなぁっ!」


やはり聞き入れられなかった。


「打つのっ!私、打つって決めたのっ!」

「なに意地になってんだよ!今からでも遅くねーから考え直せ!」

「トットトヤッチマイナ! テキトーニ ツキサシチマイナ!」

「ふざけんなこのハロ!おい、止めろっ、!た、助けてくれ!」

「ふ、ふふ、最後は何?ママ!?」


震える針が腕に近付いてくる。
もう刺さる。
止まらない、止められない。


「うわあぁぁっ!止めろおぉっ!」





ぷしっ。
ちゅー。





「……ふーっ。はい、おーわりっ。痛くなかったでしょ?」


何事もなかったかのように微笑み言う
ハレルヤは無言。
確かに痛くなかった。
上手すぎて針が刺さった時も液が注入された時も痛みを感じなかった。
ただ、激しく疲れた。
精神的に疲れた。
グッタリしたハレルヤは、無言のままアレルヤに体を渡した。


「あとは、今日一日安静にしててね?微熱だからって無理しちゃ駄目なんだから」

「……分かったよ。部屋で寝てる。……ありがとう」

「うんっ。お大事にね」


にお礼を言うと、アレルヤは医務室からフラフラと出て部屋へ戻った。



部屋―――



ベッドに横たわったアレルヤは静かに口を開いた。


「ハレルヤ、僕は今回の一件でに恋愛感情を抱いたよ。
怖くて嫌なはずなのに、僕の為に一生懸命やってくれて……」

『……色々と突っ込みたいが置いといてやるよ。あいつがイイ女だってのは確かだ』

「素直じゃないね。……ロックオンは許してくれるかな?」

『兄貴なんか関係ねーだろ』

「邪魔されるかも?」

『するならすればいい。……今度は俺が注射してやる』

「駄目だよ。それは僕の役だ」


アレルヤは腕に貼り付けられたガーゼを見ながら笑みを浮かべる。
必ず恋仲になってみせる。


「僕だけの白衣の天使……」









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