「どうしようー。刹那とはぐれちゃった」


アザディスタン王国。
刹那が偵察に出るというので無理やりついて来た
よそ見をしながら歩いていたら、刹那とはぐれてしまった。





少女と乙女座





「眼鏡(ティエリア)にバレたらヤバイー!」


やる事がないからといって無理やり同行した挙句、はぐれたということがティエリアにバレたら……
銃を突きつけられることは間違いない。
下手をしたら脅しではなく本当に撃たれるかもしれない。


「マズイー」


は泣きそうになりながら歩き回る。
どれくらい歩いただろう?
もうヘトヘト。と座ったところ、人の声が聞こえてきた。


「人!?なんでこんなところに……えっと、隠れなきゃ!」


見つかるわけにはいかない。
は慌てて岩陰に身を隠す。


「まったく物騒だな」

「ああ。この国では―」

「誰だ!?出てきたまえ!」


出来るだけ気配を消したのだが、バレてしまった。
は溜息をつき、ティエリアに撃ち抜かれる絵を想像しながら言われたとおりに出た。
無抵抗だと知らせるため両手はあげておく。


「あの、私っ」

「今度は女の子!?」

「君はっ……」


声の主は金髪男とポニーテール男。

ユニオンの……
なんて言い訳しようかな。

考えながら困った表情を見せていると、金髪男が突然すぎてわけの分からない事を聞いてきた。


「君は運命を信じるか!?」

「はあっ!?」


最近のユニオン兵は何かの勧誘じみたことをするの?
突然、運命を信じるか?なんて。

更に困った表情を見せていると、金髪男が目を輝かせながら近付いてきた。
そして、の両手をギュッと握ると、狂気さえ感じられるほどの笑みを浮かべて言った。


「こんな所で君のような娘と出会えるなんて夢のようだ!
乙女座の私にはセンチメンタリズムな運命を感じずにはいられない!」


貴方の星座なんてどうでもイイのよ。
勝手に運命を感じないで。
夢なら良いのに。
お願いだから手を離して。
私にはロックオンがいるの。

は全力で金髪男を拒絶していた。
口には出せないので、脳内で。
さて、どうしよう。


「えっと……」

「何かな?」

「あ、手を離した方が良いんじゃないか?この子、困って―」

「野暮はよせカタギリ。ああ失礼。自己紹介が遅れてしまった。私はグラハム・エーカー。
君も名を教えてくれ。恥ずかしがらなくていい」


ひたすら困っているを助けようとビリーが止めに入ったが、グラハムは全く気にしなかった。
話を聞かない。

駄目だこの人。

は大きな溜息をつき、投げやりに答える。


「ジュゲム(以下略)です」


普通なら嘘だと分かる。
が、グラハムは信じた。


「ジュゲム(以下略)……ああ、なんて美しい響きだろう。名を口にするだけでとろけてしまいそうだ!
抱きしめたいよジュゲム(以下略)!」

「えっ、ちょっ!?」


グラハムがを抱きしめようとしたその瞬間―――





トスッ!
トスッ!
ドサッ。





グラハムとビリーの頭に麻酔針が撃ち込まれた。
声を上げる間もなく倒れた二人を見て、は「あーあ」と思う。

何も頭に撃ちこまなくても。

そんなことを心の中で言いながら顔を上げると、麻酔銃を手にしたロックオンの姿があった。


「大丈夫だったか?ったくこの変態が」



トスッ!
トストストストストスッ!



至近距離からグラハムにしつこく針を打ち込むロックオン。
容赦なし。
麻酔針は最初の二本だけで、後はただの針だということが唯一の救い。


「ふぅ、これくらいにしておいてやるか。やりすぎは良くないからな」

「もう既にやりすぎだと思う」

「そうか?俺のに手を出そうとしたんだ、これくらいは当然だろ?それより、心配したんだぞ」


刹那からとはぐれてしまったという連絡を受け、命令違反を承知で必死に探していた。
そうしてやっと見つけたと思ったら、男に迫られていて……。


「ごめんなさい」

「駄目だ。そう簡単には許せない」

「そんなっ……」


本当に心配してくれていたのだろう。
目が揺れていた。
それを見た瞬間、心底反省した。
悪いと思ったから言い訳せず素直に謝った。
それなのに、駄目だと言われてしまった。
確かに色々と許されないことをしてしまったけれど、辛いものがある。
どうしたら良いのだろう?
分からず俯いていると、頭上からロックオンの声が注がれた。


「簡単には許せないから、帰ったらお仕置きだ。覚悟しとけよ?」


優しい声に顔を上げると、ポフンポフンと大きな温かい手で撫でられた。
いつもの瞳。
ジワリと涙が溢れる。


「ロックオン!」


はロックオンに抱きつき、えぐえぐと泣いた。
ごめんなさい。と繰り返しながら。


「お仕置き前に泣くなー」


ロックオンはを撫でながら苦笑い。
足元にグラハムとビリーが転がっていなければ実に良い場面である。


「さて、じゃあ持ち場に戻るとするか」

「うんっ」


二人は寄り添いながら歩き出した。
いつものようにじゃれあいながら。











ロックオン夢、やっと完成しました*^^*
あまり絡んでいないけれど、ロックオン夢ですv
……そ、それでは、読んで下さってありがとうございました*><*/



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