時間妖魔のリージョン
ここの主はちょっと変わり者。
妖魔自体変わり者なのだが・・・
「ふうっ ふんっ はっ」
広い部屋に気合の声が響いている。
スクワットをしているらしいこの方は、時を操ることができる唯一の妖魔。時の君。
仮にも「君」と呼ばれるこの妖魔、不思議なことに努力大好きなのである。
今日もサボらずスクワット中。
「ふっ ふっ ふっ」
何回までやるつもりか。
1000回を超えたとき、空間に歪ができ始めた。
休むことなく、誰が来るのかと歪に目をやる時の君。だいたい予想はできるが・・・
「やっほー」
やっぱり。
現れたのは、赤毛のちょん髷に星型ニプレス&ボンテージという職務質問の対象なカッコウの男。
ファシナトゥールに住み着いている魅惑の君、オルロワ(略)につぐ実力者・・・ゾズマ。
「ふっ やはりお前か はっ 今日は何だ」
客人が来ても休まない。
「別に用はないよ。何か、今日ここに来れば面白いことありそうな予感がしたから来ただけ」
「ふっ それだけかっ 酔狂な」
愛想もなにもない返事をし、スクワットに専念する時の君。
数分後
部屋の中にある物を勝手に漁っていたゾズマが異変に気付き口を開いた。
「ねぇ」
「・・・っ」
「ねぇ〜っ」
「・・・っ」
「ねぇってば!無視するなんてひどいじゃないかっ」
「はっ 何だっ 私はっ 忙しいのだ」
「そんなことどうでもいいよっ 誰か来るみたいだよ」
心底どうでもよさそうに言うと、上を見てみろと合図する。
時の君が言われた通り上を見ると、そこにはたしかに歪ができていた。
「妖魔じゃないみたいだね」
ゾズマは瞳を輝かせながら歪を見ている。予感的中か?
「・・っ 何者だ?」
時の君、気にはなるがスクワットをやめるつもりはないらしい。
「ふっ はっ ふっ」
やめるどころか移動もせずに続けている。たいした興味がわかなかったからか。
好奇心の塊ゾズマが見守る中、歪は広がっていった。
「来るっ!」
ゾズマが叫んだ途端・・・
「きゃーーーーっ!!」
女性の声が響いた。
「!?」
さすがにビックリした時の君。スクワットを中断し、頭上を見上げた瞬間・・・
ごっちーん!ずしゃあっ!!
突然降って来た女性とぶつかり、バランスを崩して一緒に倒れてしまった。
しかも下敷き。
「ぶはっ」
おかしいくらいに自分の期待通りなのにゾズマが噴出した。
「・・・???」
何が起こったのか考えがまとまらないでいる時の君。
と、突然現れた女性がムクリと起き上がった。
「いたたたたたた・・・はっ!す、すいません!大丈夫ですか!?」
時の君に乗ったまま、申し訳なさそうに謝罪してきた。
人間?そのへんの妖魔より美しい。そんなことを考えながら、やっと言葉を発する。
「・・・大丈夫だ。それより、どいてくれないか?」
下敷きのままはカッコ悪い。
「えっ・・・きゃあああっ すいませんっ」
さらに申し訳なさそうに謝り、慌ててどいた。
すると、今まで黙って見ていたゾズマがもう我慢ならんとばかりに話す。
「な〜に良い感じになってるのさ!」
「!?」
女性は突然の声にビックリして振り向いた。
「・・・!」
さらにビックリ。そりゃゾズマのカッコウ見れば誰でも・・・。
「やぁ、初めましてっ僕はゾズマ。君は?」
以前名前も名乗らなかったことでアセルスにこっぴどく叱られていたので自分から名乗った。
「あ、えっと・・・初めまして。と申します」
はちょっぴり顔を赤らめながら名乗った。
無理もない。ゾズマはこんなカッコウだが、超絶美男子なのだ。
(うわ〜カッコイイなぁ〜何か、おとこーって感じ。腹筋割れてるし〜)
自分が今どこにいるのか、どうなっているのかとか、色々考えることがありそうなものだが飛んでしまっている。
「か・・・うん。可愛い名前だねっvルックスも最高だしv」
期待通りのことばかりの上、目の前には不思議な女性(美人)ゾズマ様ご機嫌。
「とやら、何処から来たのだ?」
ゾズマの隙をつき、黙って聞いているしかなかった時の君が割り込んできた。
興味をもったらしい。色々と気になる。
「えっ、あ、」
さらに赤面する。
ゾズマに褒められた後に、これまた美男子に質問されているのだ。普通は赤くなる。
(うわっうわーっさっきは慌ててて気付かなかったけど、この人もカッコイイvすごい筋肉ったくましい〜素敵〜)
もう夢心地。
赤くなりポーっとしているを心配してゾズマが話しかける。
「ねっ、?大丈夫?」
「どこか悪いのか?」
時の君も心配そう。
「はっ!大丈夫です!」
慌てて返事をした。
「ならいいんだけど」
「うむ。で、どこから来た?」
そうそう、それですよ。
「どこから?えっと、京です。散歩してたら突然足元に穴が開いて・・・気付いたらここに落っこちて・・・」
事態を思い出したら急に不安になってきたのか、はそのまま俯いてしまった。
「そうか・・・」
「ふ〜ん、京から来たんだv大丈夫だよ。ちゃんと帰れる。だからそんな顔しないでっ、ね?」
ゾズマはニッコリ笑っての頭を撫でた。
するとミルミル元気を取り戻していった。
「はいっ!」
帰れるという事を聞き、安心した。極上の笑顔をプレゼント。
「(うっわ。可愛いvまいったな〜)うんうん。元気が一番。大丈夫っ僕ら妖魔にとっては君を帰すくらいなんでもない」
「えっ!今何て・・・妖魔・・・?」
妖魔という単語に反応し、は後ずさった。
「どうした?」
心配そうに訊ねる時の君。
「妖魔・・・妖魔なんですか?」
震えている。
「そうだが、大丈夫だ。何もしない」
の心情を察して安心させようと試みる時の君。
人間にとって妖魔は恐怖の対象なのだ。関わってはならない。これが人間の常識。
「で、でもっ・・・妖魔は人間の血を吸うって・・・」
今にも泣き出しそうだ。
「たしかに妖魔は人間の血を吸う。だが、無差別に襲うわけではない」
「そうだよっ 僕らは無理やり襲ったりはしないんだ。血を吸うのは同意を得てから」
ゾズマも加わってなだめた。
数十分後
二人の努力のかいあって、は解ってくれた。
「誤解しちゃってすいませんっ」
本日何回目かの謝罪。
「気にする必要はない」
「そうそう」
解ってもらえればそれでいいのだ。
「妖魔でも良い方がいるんですねっ お二人みたいな妖魔ならお友達になりたいです」
正直な感想。
「なればいい。これも何かの縁だ」
ふっと微笑む時の君。珍しい。
「僕は友達以上がいいなっv」
自分に正直ゾズマ様。
「、こいつは止めたほうが良い。ろくな奴ではない」
と、時の君はカオスストリームでゾズマをすっ飛ばした。
クスクスと楽しそうに笑う。
「面白いですねv」
ゾズマ様、体をはっての笑い取り?
「さて、そろそろ空間を広げてやろう」
以前、麒麟に空間の操り方を教わったことがある。これも努力。
時の君が呪文を唱えると、人が一人通れるくらいの穴が出来た。
「京の庭が見える!」
出来た穴の向こう側に、たしかに京の庭が見える。
「時の君さん、ありがとうございますっ」
嬉しそうに顔を輝かせながらお辞儀をする。
「フィオロだ」
「え?」
「フィオロというのが私の本当の名だ。そう呼べ」
滅多に名乗らない本名。知っているのはゾズマくらい。
「はいっ!フィオロさん」
「さんはいらん。話し方も普通でいい」
「分かった。ありがとっフィオロ」
ああ、もうメチャクチャ可愛い。帰すのやめようかなどと考えてしまう。
「ふっ。そうだ。これを持っていけ」
懐から取り出したのは、砂の器と呼ばれるアイテム。
それをの手に持たせてやる。
「これは?」
「それを使えばいつでもここに来れる。それに呼びかければすぐにお前のところにかけつけよう」
時の君は、今まで誰も見たことのないような優しい瞳をしていた。
「うん。ありがとvまた来るねっ」
ニッコリ微笑むと、は京へ向かって歩き出した。
その背中を見守る時の君。
もう少し一緒にいたかったが、今はすぐに帰りたいであろうのことを思い我慢した。
砂の器も渡したことだし、すぐに会える。
が京へたどり着くと、広がっていた空間は閉じた。
「ふぅ」
「とっき〜ぃぃ?」
今まですっ飛ばされ、気絶していた(気絶してたのかっ)ゾズマが背後から現れた。
心なしか怒っている。
「気付いたか」
しらっとしている時の君。
「気付いたかじゃないでしょ!?僕の知らないうちに帰しちゃってさ!」
そうとうくやしいらしい。
「またすぐに会える」
「本当に〜?・・・あっ!僕から行けばいいんだ」
簡単な事を忘れていた。
「やめておけ。他の人間が我々を見たら・・・」
「・・・だね」
たぶん大騒ぎになる。というわけで、の呼びかけを待っているということで固まった。
次の日
今日もゾズマが来ていた。
時の君に抜け駆けされないようにだ。
「ねぇ」
「何だ」
「の散歩中に突然出来た穴・・・なんだったんだろ」
「さぁな」
「まっ、いっかvその穴のおかげでに会えたんだもんね」
「うむ」
突然あいた穴の原因
それは零姫とのより戻しに失敗したオルロワが、そこら中に八つ当たりしたためできたものらしい。
と、二人は後から通りすがりのサイレンス(パトロール中)に聞いた。
めでたしっ
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