道士と弟子とキョンシーと 2








そしてあっという間に夜

夕食を摂りおわった後、
「あ、聖。軽くゴミを片付けてから、お風呂の準備お願い。
その後、お師匠様と私の布団、用意しておいてね。私は道具の整理やお手入れで忙しいから」
はテキパキと聖に指示を出した。
聖とは、朝に出会ったキョンシーに付けられた名。
キョンシー・キヨシー・聖。と劉で考えた名だ。
野良から居候へレベルアップできた。食事も線香も沢山貰える。聖に不満はない。
コクリと頷き、ご機嫌なのだろう、歌を歌いながら早速指示されたことをし始めた。
「ぁぅあああああ〜〜あああああ〜」
低音キョンシーボイス。結構不気味だ。
近所に民家はないが、もし誰かが通りかかったらさぞ恐ろしいだろう。
そう思い、はご機嫌な聖に
「聖、悪いんだけど、黙ってやってくれる?」
と、歌をやめるように言った。
聖は一瞬『なんで?』というような顔をしたが、追い出されてはかなわないので素直に従うことにして片付けを再開した。
素直な良いキョンシーだ。お札もいらないみたいだし。
はそう考えながら自分の仕事を始めた。

作業開始から五分ほどたった後

劉が難しい顔をしながらやってきた。
ソワソワしてどこか落ち着かない様子。
「お師匠様?どうかしたんですか?」
は師匠のいつもと違う様子が心配になって声をかけた。
すると劉は、
「ああ、嫌な予感がするんだ。、一応武器の用意をしておきなさい」
と指示を出してきた。
お師匠様は感が鋭い。きっと何か起こるに違いない。キョンシーが現れるかも。
は「はい!」と返事をすると、桃剣やもち米を準備した。
緊張した空気が室内を支配する。
ウロウロしていても仕方がないので、部屋の中央で座っていることにした。
桃剣を持ち椅子に腰掛けている劉の横に、はもち米が入った袋を膝に乗せ道長の袖を握り締め座る。

私の気のせいだといいが・・・。

劉は手のひらの嫌な汗を感じながら、桃剣を握り直した。
は不安な気持ちをグっと押さえ、今度は師匠の腕を抱え込んだ。気持ちを紛らわせなければこの場にいられない。
そんなを見て、やはり女の子、怖いのだろう。と思った劉は、
「大丈夫だ。いざとなったらお前だけでも逃がす。安心しなさい」
と言い、ニッコリ笑うとの手を握った。
いつも以上に優しい。
が、何かお別れみたいで嫌だ。
は半分涙目になって、
「お師匠様、嫌です!もしものときは私も!」
と訴えた。師匠を見捨てて逃げることなど出来ない。
・・・」
「お師匠様・・・」
師弟愛を確かめ合っていると、突然薄気味悪い声がした。

「ぅぅ・・・ぁぁぁぁあああああ〜〜」

ビク!っとなる劉&
武器を構え立ち上がると、背後で物音がした。

ガタン・・・

「来たか!?」
「化け物退散ー!」
二人が振り向くと、そこには言われた事を終えた聖がいた。
『何!?何!?』という顔でわたわたしている。
突然大嫌いな桃剣ともち米で攻撃されそうになり、少し混乱しているらしい。
「何だっ、お前か」
ホっとする劉。
「まったく!薄気味悪い声出さないでよね。ほら、謝りなさいっ」
は、驚かせた事に対する謝罪をしろと聖に詰め寄った。
すると、聖は激しく首を横に振って謝罪を拒否した。

『嫌だ!俺は何もしていない。声など出していない!濡れ衣だ!』

と、身振り手振りで訴える。
無実だという訴えを見て劉が、
「では誰が?」
と聞くと、聖は『あいつ』と窓の方を指差した。
は?という顔で劉とが振り返ると・・・


「キョンシーだ(よ)!!」


叫んだ途端、
「ぅああああああああああああああっ」
何だか恐ろしい顔のキョンシーが窓をブチやぶって突入してきた。
身に付けている物の豪華さから見て、成金だったらしい。
!下がっていなさい!」
劉はとっさに愛弟子のを後方へと下げた。
女とはいえ立派に修行を積んできた。戦うこともできる。そうは思ったが、やはりかすり傷一つとて負わせたくない。
師匠として、道士として失格でも良い。を守らなければ!そう思った。
「さあ来い!」
劉は桃剣を構え戦闘態勢。
「お師匠様!気をつけて!」
はもち米をいつでも投げつけられるようにして援護態勢。
『!!』
聖は応援態勢。
「ぅぁぇああああああああああああ〜〜〜」
成金キョンシーは劉に狙いを定め、攻撃態勢。


数秒の睨みあい


先に仕掛けたのは成金キョンシー。
「ぅぁぁああああ〜!!」
長く鋭い爪を突きたてようと向かってくる。
劉は低い態勢からキョンシーの腹部に桃剣を突き立てようと向かう。
真っ向勝負。
感じ的には劉のほうが優勢。
このまま行ければ確実にキョンシーを仕留められる。
はそう思った。

が―――




ばきぃっ!!




「お師匠様!」
あともう少し!というところで桃剣を折られてしまった。
「!はっ!」
劉がしまった!と思った時には既に少し遅い。
「っぐあああああっ!」
キョンシーの鋭い爪が劉の腕に突きたてられた。
苦悶の表情を浮かべる劉に、キョンシーは勝ち誇った笑みを向ける。
そしてそのまま首元へかぶりつこうとしたとき・・・
「お師匠様ーーー!このキョンシーめ!お師匠様から離れろーーーーーーー!!!」
が泣きながらもち米をキョンシーに向かってぶちまけた。
もち米がキョンシーにあたり、バチバチバチっという火花が飛ぶ。
「ぅあああああああ〜〜」
これはたまらない。
キョンシーは劉を突き飛ばし、後退りした。
「お師匠様!」
キョンシーが後退りした隙に、は突き飛ばされた劉に心配そうに駆け寄った。
倒れた劉を抱き起こし、傷口にもち米を当て応急手当をほどこすと、劉は
「私がくいとめているうちに、聖と・・逃げなさいっ・・・」
と言い、立ち上がろうとした。
相手は思った以上に動きも素早く手ごわい。このままではも毒牙にかかってしまう。
それだけは避けなければ・・・
弟子を大切に思う師匠からの命令。
だが、に逃げる気はない。
「嫌です!それだけは聞けません!」
強い口調で退く気はないということを伝える。
共にキョンシーに立ち向かうと。
・・・」
この子はいつの間にこんなに強くなったのか?弟子の凛々しさに劉は思わず瞳を潤ませる。
『っう、あああああ』
二人を見守っているだけだった聖の瞳も潤みだす。
キョンシーではあるが、人の心を失ってはいない。
ゴシゴシと袖で雫を拭った後、聖は劉の部屋へと走っていった。
攻撃するにも声を出すにもタイミングが・・・と困っていた成金キョンシーを突き飛ばして。


ガッシャーーーーーッン!!ガラガラガラッ!パリーン!!ゴンッ!


聖に思いっきり突き飛ばされた成金キョンシー、
宙を三回ほど回転しながら吹っ飛び、棚にぶち当たってド派手な音をたてひっくりかえった。
ピクピクしている。
それを見ていた劉&は、
「あ奴・・やるな・・・」
「聖ってば強っ。何年キョンシーやってるんだろ?」
と、さり気なくお互いの手を握り合いながら聖に拍手を送った。(心の中で)
成金キョンシーはまだダウン中、ほんの少し余裕がある。
が、いつまでもこのままとはいかない。
何とかしなければ!がそう思ったとき、

『あうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあう・・・・・』

少し間の抜けた声が聞こえた。聖だ。
劉とは顔を見合わせ、倒れているキョンシーを気にしながら部屋の方を見ると、
『あううううあううううあうあうあうううう』
銭剣を持ち痺れまくっている聖がいた。
「あの・・・馬鹿っ・・・」
「聖!何してるの!危険よっそれ離して!キョンシーの貴方が持てる物じゃないの!」
これを聞いた聖は、
『あうっああ・・・あう゛・・・う゛あ゛あ゛っあ゛』(訳:分かってる。でも、もうちょっと)
と返事をし、痺れながら倒れている成金キョンシーへと向かって歩いていった。
そして成金キョンシーの横に立つと、

ぽいっ

銭剣をキョンシーの胸の上に落とした。


「ぅ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ〜〜〜あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛〜〜〜」


今度は成金キョンシーが痺れ出した。
「ぅ゛ぅ゛あ゛あ゛っぁぁ゛っあ゛」
痺れている姿は(も)かなり不気味だ。気持ち悪い。
トドメをさされる寸前のゾンビのよう。
聖はそんな成金キョンシーにフッと笑うと、暴れて銭剣を振り払わないようにと、側にあった漬物石をキョンシーの上に置いた。
もちろん銭剣の上から。


鬼だ―――――


劉とはなんとも言えない顔でその様子を見守っていた。
聖はしゃがみ込み、痺れているキョンシーを木の棒で突っついている。
その目にはドス黒い炎が宿っているようにも見えた。
「お、お師匠様、彼、あのキョンシーに恨みでもあるんでしょうかね?」
「いや・・おそらく・・・私の敵討ちのつもりなのだろう」
手を差し伸べてくれた人を傷つけた事に対する仕返し。ということか。
義理人情万歳なキョンシーもいたものだ。
は少し感心した。と、感心している場合ではない。
とどめをささねば。
「お師匠様、どうしよう?」
どうやってキョンシーにとどめをさすか、師匠である劉に判断を仰ぐ。
すると、
「燃やしてしまいなさい」
という指示が出た。
やはり燃やすのがキョンシー退治の王道のようだ。
は「はいっ」と返事をすると、マッチを構えた。
すると、話を聞いていたらしい聖が何やら液体をバシャバシャとキョンシーにぶっかけた。
「この匂い・・・油?」
が聞くと聖はコクリと頷き、いざファイアーvと合図してきた。

色んなキョンシーがいるけど、聖が一番怖いかも・・・

そんなことを思いつつ、はキョンシーにマッチの炎を落とした。
油のせいであっという間に炎はキョンシーの全身を包む。
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛〜〜〜〜〜〜〜・・・・・」
成金キョンシーは断末魔の叫びを上げ、炎に包まれ動かなくなった。


「終わったな・・・」
劉はホッとしたのか、呟くと意識を失ってしまった。
「お師匠様っ」
は慌てて劉の側に駆け寄った。
聖の手を借り、寝室まで運ぶ。
そして手当てを済まし、今夜はこのまま看病ね。と聖に微笑んだ。
愛する者を心配し、気遣う女の笑み。
そんなの微笑みを見た聖は、
『俺は邪魔っぽいから、あっちにいっているよ』
と目で訴え、部屋を出ていった。
その背中はどこか寂しそう。





次の日の朝

、今日から素振りはしなくていい。それと、午後から精神修行だ。今のうちにゆっくり休みなさい」
「はーい、お師匠様v」
一段と絆の深まった劉との、元気な声があたりに響いた。
あれだけの大事件はもう起こらないだろう。
突然現れた謎の成金キョンシー、もしかしたら彼は二人の距離を縮めるために天が遣わせた者なのかもしれない。







おまけ

忘れてはいけない聖。
彼は・・・
『ZZzzz・・・ぁぅ・・・』
寝心地の良い棺の中で爆睡中。
今回の働きを高く評価され、倉庫にしまってあった豪華棺をプレゼントされたのだ。
とても気持ちよさ気。


今日からまた平和な生活が始ま、る?












はいっ。お疲れ様でした。
初のキョンシードリーム、いかがだったでしょうか?
予定狂いまくりだったこの作品、無駄に長くなってしまいましたが、少しでも楽しんでいただけたのなら・・・v
それでは、最後まで読んで下さり、感謝です!
ありがとうございました。





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