別れ





夕暮れ、仕事から帰った羅那は儀荘内の空気がおかしい事に気づく。
嫌な予感。


っ!何処にいるんだ!?」


最愛のの身に何か起きたに違いない。
羅那は必死の表情で儀荘内を捜すが見当たらない。



外か!?



儀荘の外を捜し、町中を捜し回った。
が、見つからない。
羅那はもう一度儀荘へ帰ってみることに。


ー!」


名を呼びながら儀荘の裏口へ回ってみると……


っ……」


服を引き裂かれ、顔に殴られたと思われる傷をつくったが蹲り震えていた。
羅那が抱きかかえ背を撫でてやると、ガチガチと震えながら泣き出した。


「羅……ごめっ……ごめん、な……さ」
「いいっ、謝ることなどないっ。もう大丈夫だ……済まない、もっと早く帰っていれば……」


何があったのか、の姿を見れば分かる。
一目瞭然だ。
自分が留守の間、押し入ってきた男に乱暴されたのだろう。
何かあった時、護身の為にと少しだけカンフーを教えておいた。
それなのに……
撃退しきれなかったということはを襲ったのは複数ということになる。


、立てるかい?」


羅那はを支えながら立たせる。
体を清めさせなければ。
一刻も早く。



―――――



清めの湯から上がったは羅那に抱かれて寝所へと運ばれた。


「ゆっくりお休み?大丈夫、俺がいるから。さあ」


頬を撫で額に口付けを落として微笑んだ羅那は、が目を閉じたのを確認し退室する。



に乱暴した者、このままにはしておけない。
生かしておいてなるものか。



羅那の体……
いや、魂がざわつく。
魔人の魂が震える。
瞳に黒い火を宿し、羅那は祭壇を整える。
犯人は既に突き止めた。
が体を清めている最中に術を使い調べたのだ。



の体、心をズタズタにした者達……
二人の幸せの邪魔をした者達……
その罪、死をもって贖うがいい。



「……羅那?」


ふと目を開けた、羅那の姿がないことに気づく。
気配は感じるけれど、寝所にはいない。
側にいて欲しい。
ベッドから抜け出して羅那を捜しに廊下を歩く。
すぐに祭壇のある部屋から明かりが漏れているのを発見した。
何をしているのだろう?
そっと覗いてみると―――


「っ!!!」


羅那が行っている術を見たは愕然とした。
あの術は禁じられた術なはず。
人を殺す術だと、書物を指しながら話されたことがある。



「羅那……私の為に……私のせいで羅那が人を……」



耐えられない。
自分のせいで羅那が……
道士である羅那が禁じられた邪術で人を殺めるなんて。



止めたいが、既に手遅れ。
もうどうにも出来ない。
は壁を辿って寝所へ戻る。
戻る際聞こえた羅那の独り言。
「ははっ、を傷つけ俺達二人を邪魔する者はこれからこうして消し去ってやる」
恐ろしい言葉。
彼は変わってしまった。


「もう、戻れない?」


はある決心をし、小刀を胸にベッドへと潜り込んだ。
一時間程たっただろうか?
キィと戸が開く音がした。
羅那が帰ってきたのだ。
は鼓動の速さから来る息苦しさを堪えながら眠っているフリをする。


……もう大丈夫だからね」


羅那はいつもどおり優しい声でそう言うと、隣のベッドに入った。
今日は疲れはてた。
もう起きていられないのだ。


「……」










は静かに起き上がる。
震える手で小刀を持ち、眠っている羅那の側に立つ。
そして―


「ごめんなさいっ」





ドガッ





「がっ!……あ……」


羅那の心臓に小刀を突きたてた。
飛び散る紅。
最期の瞬間、確かに羅那はを見た。


「ごめんなさいっ!ごめんなさい羅那!こうするよりもう……」


は返り血に塗れながら涙する。
愛しているから罪を重ねて欲しくない。
もう見たくない。


「私も直ぐに逝くわ。会えないかもしれないけれど……」


は力なくそう言うと、ふらりふらりと外へ歩き出した。
役所に出頭するのだ。
道士、羅那を殺した、と。





――――――――――





「蒼兄っ!戻してくれ!このままではがっ、が!」


器を失い、魂……
霊体になった羅那は強制的に玄陰―魔界へと転送されていた。
故郷である玄陰。
そこで羅那は兄である鬼王、蒼凰に人界へ戻して欲しいと嘆願している。
このままではは間違いなく処刑されてしまう。
それだけは何としても止めたいのだ。
が……


「ふう。再び人間の器を与え人界へ戻す事は容易い。お前が生きていれば彼女は何の咎めも受けはしない。
が、鬼王として許可する事は出来ないな。彼女は人界で裁かれなければならない。お前を殺した罪で死刑になるだろう」
「だからっ」
「羅那。彼女の死はお前を殺めた事だけではなく、お前への罰でもあるのだ。お前も罪を犯したろう?」
「罰?俺の罪?……人間を数人殺したことか?だがそれは奴らが彼女をっ……知っているはずだ!」
「ああ、知っているとも。何故お前に殺められたのか、ちゃんと知っている。が、だからと言ってお咎めなしとはいかんのだ。
お前は最愛の者を失う。そしてお前の最愛の者は命を失う。罪に対する罰だ。
人界でも玄陰でも変わらない。さて、そろそろ準備をしておかなくてはな。明日にでも彼女がやってくる」
「蒼兄っ!いえ、鬼王様……どうかにお慈悲を……」


地獄行きだけは勘弁して欲しい。
羅那が苦しそうに願い出ると、蒼凰はニヤリと微笑んだ。


「私は彼女がどんな暮らしをしていたか知っているのだぞ?」


羅那を殺したことは情状酌量の余地がある。
今までの人生を総合的に見れば地獄へ送る程の罪は犯していない。
つまり―


「色々と"事情"もあることだし、天界へ転送だ。お前と顔を合わせる事は許可出来ないがな」
「兄上!」


羅那はホッとした表情を浮かべる。
また、また会えるチャンスがあるということ。
今度また会うときは、再会した時は……



もう絶対に離さない。



300年後―――



「あまり無茶をするんじゃないぞ?私だって面倒事は御免なのだから」
「はい。では、行って参ります」


羅那は蒼凰が作った人界へ抜ける為の穴を抜け、再び人界へ立った。
兄が再生させてくれた人間の肉体……器を纏って。
転生し何処かで生活しているを捜し出す為に―――










羅那との別れでした。
どうして羅那は冷酷になったのか、どうしては羅那の元を去ったのか、全てはこの物語のとおりです。
何ていうか……未熟すぎだな自分、と--;
思うように表現出来ていない。
これが精一杯です。
もっと精進しなければっ。
それでは、読んでくださってありがとうございました*><*/



TOP

戻る