ミネルバ、ディオキアに滞在中……
ダンシング議長〜アスランの悲劇〜
「ザラ隊長ぉ〜!」
皆が寝静まった深夜0時近く、タンタンタン!とアスランの部屋の扉をノックする。
胸には大きめの箱を抱えている。
「隊長〜、ザラ隊長〜〜」
迷惑だなんて考えちゃいない。
お願いです、出て下さい。
念じながら呼び続けること数分……
「ん゛っ、?」
寝起きのしわがれた声で、「どうした?」と言いながら隊長は出てきた。
くたびれた体をベッドに投げ出し、気持ちよく休んでいたアスラン。
ムスっとした顔で出てきてもおかしくないのだが……
何故かアスランは微笑みを浮かべながら出てきた。
訪ねてきたのが「可愛らしいな」と思っていただったからだ。
ミーアだったら?出なかった。
ルナマリアだったら?迷惑そうな顔で出た。
議長だったら?普通に出た。
レイだったら?普通に出た。
シンだったら?……
シンだったら……
シンだったら……
嫌味を言うか、殴っていた。
「どうしたんだ?こんな時間に」
優しく聞いてくれるアスラン。
はニパッと微笑みながら言う。
「すみません、起こしちゃって。ちょっと、その……お願いがあって」
お願い。
可愛いのお願い。
アスランの表情はさらに緩くなる。
自分に出来る事なら何でも協力する。言って欲しい。
そう伝えながら微笑むとは「ありがとうございます!」と喜んだ。
そして、お願いを遠慮なく述べた。
「ロボットを一緒に作って欲しいんです。音に反応して踊る人型ロボットなんですけど、ちょっと改造したくて。
ザラ隊長はロボットにお強いんですよね?お願いしますっ」
胸に抱えた箱を差し出しながらニッコリ。
アスランは、「フ○ワー○ックの人型版か……少し時間がかかるぞ?」なんて言いながら軽くOK。
を部屋に入れ、早速ロボット作りに取り掛かる。
作業開始から3時間経過……
「……、そこの配線は……そう、そこを繋げて……」
「えっと、こうで、ここを繋げて……」
「ああっ、そこじゃなくて……ほら、これを繋げないと喋らないぞ」
音に反応して踊り、喋る人型ロボット。
段々と出来上がってきた。
後は髪と服の改造のみ。
「ここは黒くして、こっちは白で」
は楽しそうに作っている。
アスランは微笑みながら見守っている。
髪と服の改造だけならもう手を出す必要はないから。
作業開始から5時間経過……
「出来たー!」
嬉しそうに出来た出来たと騒ぐ。
横にいるアスランは……固まっている。
完成したロボットを見て固まっている。
出来上がったロボットは……
プラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダル。
どこからどう見ても議長。
どう見ても彼にしか見えない。
「、そのロボット……どうするつもりなんだ?」
議長のロボットなんて……
どうするつもりなのか激しく気になる。
アスランの問いには……
「ふふっ、議長へお贈りしようと思って」
サラッと答えた。
議長へのプレゼントだ、と。
嬉しそうに。
「……そ、そうか」
アスラン、少しぐったり。
そして、がっくり。
疲れた体に鞭を打ち、眠いのをこらえながらアドバイスをしたり一緒に作ったり……
の為にと頑張った。
のに、出来上がったロボットは議長で、しかもプレゼントだと……
泣ける。
もう落ち込むしかないじゃないか。
虚ろな目をしているアスラン。
落ちに落ちている男の横で無邪気に喜んでいる。
両手にマラカスを持ち、の手拍子に合わせて腰をフリフリ踊っている議長ロボ。
『冗談ではない、冗談ではない、認めたくないものだな、認めたくないものだな』
口をカタカタ鳴らしながら喋ったりもしている。
「もー凄く良い出来〜。さすがザラ隊長!っと、いけない!急がなきゃ!議長帰っちゃう!
それじゃザラ隊長、私、もう行きますね。ありがとうございました〜〜」
上機嫌で出来を確かめていたは、ヤバイ!議長が帰ってしまう!と、慌てて部屋を出て行った。
突然来て突然帰る。
通り雨のような少女。
シーンと静かになった部屋の中、アスランは一人膝を抱える。
目の下にはクッキリとクマ。
第二のシンが誕生した。
……後日、ギルバーロボは……
『冗談ではない、冗談ではない、認めたくないものだな、認めたくないものだな、これが若さか』
執務室、議長の目の前でカタカタフリフリ踊っていた。
誰かが何かを喋るたびにカタカタカクカク。
「ぎ、議長……」
「何かね?」
カクカクカタカタ
「いえ、あの……そのロボットは……」
「ああ、可愛いだろう?私に似せて作ってくれたのだよ、愛しい人がね」
フリフリカクカク
『冗談ではない、冗談ではない、認めたくないものだな、認めたくないものだな、まだだ、まだ終わらんよ』
「そ、そうですか……」
議員や兵には不評。
だが、ギルバートはご満悦。
片思い中の愛しい少女に貰った物……宝物……
「いけそうだな」
ロボットを突付きながら呟く。
想いを告げたら受け入れてもらえそうだ、と……
おまけ
「ぃやったぁー!」
「上手くいったな」
レイ&シン(不在)の部屋で大喜びしている。
新しい機体、グフイグナイテッド(カラーはパールブルー)を貰ってご機嫌。
ギルバーロボのお礼だと言って議長が贈ってくれた。
「プレゼントを手渡してすぐ、欲しそうにグフを見れば量産前に貰える。なんて、半信半疑だったけど……レイの言ったとおり貰えたっ」
「良かったな」
「うんっ」
グフが欲しいと騒いでいたにレイが勧めた『贈り物(手作り)をしてグフを貰っちゃおう作戦』
見事成功。
ふー、やっと出来ました。
ネタだけ考えて放置していた作品、完成です。
最初に考えていたものとはかなり違うものになったけれど……
(最初はシンやハイネも出ていました--; レイももっと……)
いつものこと--; き、気にしないっ。
それでは、コソコソと逃げ……ありがとうございました。
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