ミネルバ、食堂。
テーブルに向かい合って座っているアスランとシン。
二人の目の前にはお世辞にも美味しそうとは言えない特別料理が並べられている。





新作創作料理





「さあ、召し上がれっ」
「……い、いただきます」
「……いただきます」


料理が得意な
新作の創作料理が完成したので代表パイロット二人に試食をお願いした。
初めて見た食材も使った料理だ。
味の保証はない。
分かっていながら味見もせずに出した。
自分は料理上手だという自信があるから。
実際料理上手である。
それは死別してしまった前夫ラウも、現夫ギルバートも知っている。
保障有だ。

が、一口食べた二人の反応は―――


「……」
「……」


気のせいか、顔面が蒼白になっている。
アスランはただ押し黙りポーカーフェイス。
シンはあからさまに不味いという顔をしている。


「ねっ、どう?お味のほどは」


ニコニコと微笑みながら無邪気に聞いてくる
シンは思った。
申し訳ないが、本人の為にも正直な感想を述べようと。
に感想を伝えるべく口を開くシン。
感想は―――


「あのっ……っ!!」
「とても美味しいです」


シンの言葉を遮ってアスランが引きつった笑顔で答えた。
テーブル下では黙っていろの意が込められたアスランの蹴りがシンの脛に叩き込まれている。
軍靴でガスガスと蹴りを入れられている。
何も言えない。
痛すぎて。


「そうっ、良かったわ。今度ギルに作ってあげよ〜っと」


感想に満足したは嬉しそうに食堂を去っていった。
その後―――


「ちょっ、何だって言うんですか!さっきからガスガスと遠慮もなしに!俺が何をしたって言うんですか!?」


当然シンの猛抗議が始まった。
自分は正直な感想を口にしようとしただけ。
それなのに……
シンはアスランをギッと睨みつけ怒り心頭。
どういうつもりなのか教えて欲しい。
そう思っていたが、アスランから返ってきたのは謝罪の言葉でも説明でもなかった。


「馬鹿野郎!死にたいのか、シン!」


死にたいのか?という問い。
わけが分からない。
そんな表情のシンにアスランは更に捲くし立て言う。


「いいかシン!さんに悪い事を言うんじゃない!」


納得のいかないシンは食い下がる。


「議長の奥様だから遠慮しろってんですか!?そんなの本人の為になりませんよ!言い方に気をつければ―」
「死にたくなかったら言う事を聞くんだシン!聞かないと……殺されるっ」


驚愕の台詞。
殺される。


「こ、殺されるって、誰にです?まさか、議長はそんなっ」
「議長にじゃない!さんにだ!……いや、知られれば議長も動くかもしれないが……」
「そんっ……いくらなんでもそんな事……」
「する人だ!する人なんだ彼女は!俺はこの目で見て、この身体で恐怖を味わった!何度も!」
「まさか……戦艦の魔女って……」


噂で聞いたことがある。
二年前、ある戦艦に魔女が君臨していたと。
美人だが傍若無人で兵達を困らせたという……。


「まさか……」
「そのまさかだ!」
「そんなっ……」


あの人が……
あの美しく優しそうな議長の奥様が……
戦艦の魔女?
信じられない。
信じられない。


「まあその、落ち着いて食事をしよう」


アスラン、突然の態度変化。
危険。
だがシンは気づかない。


「き、きっと別人だ。議長の奥様は手料理を不味いと言われたからって怒ったりは―――」
「そう、不味かったの」


いつの間に戻ってきたのか、はシンの真後ろに立っていた。
冷たい目、冷たい声。
そして、シンの後頭部に押し当てられた銃。


貴方は正しかった―
シンは目でアスランに伝えた。
アスランは、だから言っただろ。という表情。


「ごめんなさい?不味いものを無理に食べさせたりして」


言葉とは裏腹に拳銃がゴリゴリいっている。
シン、最大のピンチ。
誰か―――


さん、彼は言葉の使い方が下手なんです。許してやって下さい。どうか、私にめんじて」
「レイ……そうね、まだ若いものね、仕方ないか。良いわ。今回は許したげる。ギルに食べてもらう為に改良しよう〜と」


は銃をおろし、しまうと今度こそ引き上げていった。


「レイ……」
「言葉には気をつけるんだな、シン」


たった一言を発し、レイは食事を取りに場を離れていった。


「アスラン……」
「解ったろう?」
「……」


ぶつかり合うアスランとシン、少しだけ分かり合うことが出来た。





おわり





デュランダル妻、、今回も中々やってくれたのではないかと思っております。
いや〜大好きです、さんv
それでは、読んでくださってありがとうございました^^



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