HALLOWEEN




秋のよく晴れたある日。
オルガ・シャニ・クロトの三人は、カボチャを抱えて周りの様子を気にしながら歩いている女性兵を見かけた。
「あれっ、じゃん?」
「・・・ホントだ」
「カボチャなんか持って、どこ行くんだろね?」
三人はとても気になった。
密かに想いを寄せる女性が、カボチャをどうするつもりなのかがたまらなく気になった。
「おい、どうする?」
リーダー的存在のオルガが二人に問う。
「・・・追いかける?」
音楽よりも好きなのことなので、珍しくシャニも話に乗ってきた。
「もちろん。追っ跡!」
クロト、シャニの追いかけ提案に賛成。
と、いうわけで、の後を少し離れて付いていくことになった。

数分後

辿り着いたのは、滅多に人が来ない倉庫。
はキョロキョロと辺りを見回し誰もいないことを確かめると、真ん中の何もない所にカボチャを下ろした。
「なにしてんだ?」
「静かにしろよオルガっ。見つかるだろヴァーカ!」
「お前らうざぁ〜い」
見つからないように荷物の陰に隠れている三人。
が次はどんなことをしだすのか、静かに喧嘩しながら暖かく見守る。
「さてっ♪じゃ〜そろそろ・・・」
と、は独り言を発して懐からナイフを取り出し・・・

ドスッ!!!!!

は鋭い光を放つナイフを振りかざしカボチャにつきたてた。
「「!!??」」
シャニ・クロトは、の行動が理解できない。
「はは〜ん・・・」
オルガは解ったようだ。
「んー・・・こんな感じかな?」
見られているとも知らず、ブツブツと呟きながらもくもくとカボチャにナイフを入れている
「・・・、どうしたんだろ」
「さぁ。カボチャに恨みでもあるんじゃない?」
シャニとクロトはのしていることが理解できず、首をかしげている。
すると、「はっ。これだから馬鹿は困るんだよ」と、オルガが二人を笑った。
「・・・・・(怒)」
「何だよっ、お前にはわかんのかよオルガっ」
馬鹿にされて黙っていられるはずもなく、くってかかるクロト。
「ああ分かるさ。はな、ジャック・オ・ランタン作りてぇんだよ。多分な」
さらっと教えてやる。
が、クロト達はジャック・オ・ランタンが何なのか解らない。
「はぁ?」
「・・・何?その、ジャックなんとかって」
馬鹿にされてくやしいが、聞くしかない。
シャニがオルガに尋ねたところ、
「あぁ?ジャック・オ・ランタンってのはな、カボチャの提灯だよ。ハロウィンの日に飾ってあるだろ?あれだ。
はあれを作ってんだよ」
と、親切に教えてくれた。
「へぇ」
そういえば、もうすぐハロウィンだったな。と、シャニは思った。
イベント好きののこと、きっと仮装までするんだろうな。とも。
「ハロウィンね〜。あれだろ?いろんな奴のとこ行って、何かよこさないと撃滅!ってやつ」
クロトは、それくらいなら僕だって知ってるよ!とばかりにしゃしゃり出た。
「・・・・・」
シャニは違う気がするものの、合ってた場合馬鹿にされるので何も言わなかった。
「・・・ああ、そうだよ」
オルガは、少しちげぇ。と思ったが、説明が面倒なので適当に返事をした。
得意げなクロトを呆れた目で見ているオルガ。その二人を後目に、
「・・・俺、手伝ってくる」
シャニはの方へ歩いていった。さり気なく抜け駆け。
「あっ!」
「おいっ!シャニィ!」
慌てて後を追うオルガ&クロト。

カツンコツン・・・

すぐ側まで近寄ったのに、夢中でカボチャをくり貫いているは気づかない。
無防備万歳。通信担当とはいえ、兵士だ。少しまずいだろう。
「「「」」」
三人は少し呆れつつ声をかける。
「ぅきゃあっ!?」
は突然声をかけられ、心臓が飛び出してしまうのでは?というくらい驚き振り向いた。
「おお、オルガ!?それに、シャニ!クロトも!何でっ?」
自分以外に人はいない。そう思っていたのに・・・
「あ〜・・・なんてーか」
「・・・実は」
「追・跡!」
オルガとシャニはどう説明しようかと迷っていたのだが、クロトはサラリと言い放った。
とても正直です。
「ついてきてたのー!?」
プクーっと頬を膨らませ、ご機嫌斜めになる
内緒のつもりだったのだ。ご機嫌斜めになるのも仕方ない。
「わりぃ・・・」
「・・・ごめん」
「謝・罪・・・」
愛しのに嫌われてしまったかも・・・と思い、項垂れる三人。
「・・・驚かせようと思ったのにな・・・でも、仕方ない。いいよっ」
ニコっと微笑み、三人を許す
その微笑を見て三人は一気に元気を取り戻した。
「・・あっ、お前、ジャック・オ・ランタン作ってたんだろ?」
話題がないと気まずくて、オルガがカボチャ提灯の話を持ち出した。
がいままで楽しそうにくり貫いていたカボチャの話。
「俺、手伝うよ」
すかさずシャニが申し出る。
「お前じゃカボチャ真っ二つにしちまうだろヴァーカ!僕が手伝うよっ」
グイっとシャニを押しのけ、クロトが前に出た。
睨みあう二人。すると、
「うぉらっ、どけ!ジャック・オ・ランタンがどんな物か知ってる俺が手伝ったほうが早いんだよっ。な??」
オルガが二人を後方へ押しのけながらにニッコリと申し出る。
は三人に迫られ、どうしようかと悩んだが、すぐに答えを出した。
「んー・・・あのね、カボチャ提灯はもう蝋燭入れるだけだから、協力してくれるんならこっちをお願い♪」
と、近くのダンボールへ歩いていった。
ガサゴソとダンボールを漁る
三人は、何だ?と不思議に思いながらその様子を見守る。

数分後

「あった♪これこれっ!前に衝動買いしたのっ!部屋に置いておくスペースなくなったから、ここに置いてたんだ♪」
嬉しそうに何かを抱えて戻ってくる。
何やら衣服のようだ。
「はいっ!オルガはこれ!似合うよ絶対♪シャニはこれしかない!はまり役♪クロトはこれね!あ、これも被ってねv」
取り出してきた服をテキパキと配る
「「「???」」」
それぞれ渡された服を、何なんだ?と思いながら広げる。
バサッと広げて判ったのは、仮装衣装だということ。
「っだよこれっ!?ドラキュラ!?マジかよ〜」
オルガが渡されたのは、漆黒の長いマント(全身すっぽり型)シルクハット付属。
シャニのは、灰色がかった黒のローブ。等身大鎌付属。
「・・・もしかしなくても、死の神役だよね」
オルガ&シャニの衣装は、これじゃなきゃどれだよ?というくらい本人の容姿などにハマっている。
問題はクロト。
「なっ・・・これ恥ずかしいよ!」
クロトが渡されたのは短めの、コウモリを思わせる黒マント・黒短パン・カボチャメット。
黒マントは良い。短パンも、クロトに合っているといえば合っている。問題はカボチャメットだ。
「ぶはっ!いいじゃん、クロト」
「似合ってるし」
まともな衣装を渡されたオルガ&シャニは人事のように笑う。
「駄目かなぁ・・・でもそれ、クロトしか似合わないと思うの」
ちょっと哀しそうに言う
クロトだから許せる、可愛く見える衣装。他の者が着たら爆笑ものの衣装。
アズラエルが着たら、第二の変態誕生。
「うっ・・・衣装はいいんだけどね、このメットは・・・かぶらなきゃ駄目?」
どうしてもこのメットだけは、カボチャメットだけは遠慮したい。
何故って、ジャック・オ・ランタン、あれが頭に噛り付いているような感じに見えるから。
「それないと、仮装の意味あんまりないと思う。ねっ、お願いv」
パチっvクロトにウインクしてお願いする
これにはまいった。さすがに断れない。
「///了・解!」
顔を真っ赤にし、クロトはカボチャメットを頭に乗せてみた。
「くっ、あははははははっ」
「・・・ださっ(笑」
赤いクロトの頭にオレンジ色のカボチャが食いついているように見えるものだから、オルガ&シャニは笑いが止まらない。
「てめぇーっ!」
カボチャメットを頭に乗せたまま怒るクロト。迫力0。
「クロト、似合ってるよっ。ほら〜オルガとシャニは笑わないっ」
必死に仲介する。せっかく楽しくできそうなのに、壊したくない。
「じゃあ〜、明日の夜8時にここ集合ねvあっ、後片付けお願いv」
そう言って、はカボチャを抱えて去っていった。
後に残された三人は・・・
「たまにはガキに戻ってみるのもいいもんか?」
「菓子巻き上げられるんだろ?腹減ったとき丁度良い」
「おっさんからも、強・奪!」
などと話しながらカボチャの中身を片付けると、各部屋へ戻った。

ハロウィン当日・午後8時ちょい過ぎ

倉庫には、仮装を済ませたオルガ・シャニ・クロトが揃っている。
、おせーな」
「はっ、女は支度に時間かかるんだよ。知らないの?」
「ったく、また喧嘩〜?」
三人だけだと、どうしても喧嘩になってしまう。
掴み合いになりそうだ・・・
と、そこへちょうど良くが来た。
「ごめんね〜待った?」
魔女の仮装をしたが舌をちょろっと出して謝る。
ハッキリ言って可愛すぎ。
「///いやっ、今来た」
使い古された台詞を吐くオルガ。
「・・・別に///」
染まった頬を見られまいと、言葉少なに俯くシャニ。
「///ぜっんぜん!いいって!///」
クロトは顔全体が赤くなっている。
三人の顔を見て、怒ってはいないようだ。と安心したは、
「じゃあ〜出発!人に会ったら、Trick or Treatって言うんだからね♪」
と言うと、パタパタと走っていった。
既に何処へ行くか決まっているような様子。
「あっ、おいっ!待てよ」
「!っ」
「おいてくなよっ」
三人も後を追う。
バタバタと戦艦内を走る四人の仮装者達。

走ること約三分

達が走り、辿り着いたのはアズラエルの部屋。
「はぁっはあっ・・・こ、ここ・・・まずはここでしょ」
ぜぇぜぇと息を切らし、が言う。
「っ、たしかにっ・・・」
「・・・っいい物持ってそう」
「・・っくれなかったら、撃滅・・・」
三人も少し息が上がっている。
少しの間呼吸を整えることに専念し、整ったところでブザーを鳴らす。

ビーッ!

「おやっ?誰です?」
部屋の中からアズラエルの声。機嫌は悪くないようだ。
と、いうわけで皆でいっせいに押し入ると・・・
「アズラエル様、Trick or Treat!vv」
「うぉらぁ!Trick or Treat!!」
「おっさん、Trick or Treat」
「Trick or Treat!!何かよこせ!さもなきゃ撃滅!」
皆でアズラエルに何かねだる。
は可愛く、オルガは元気よく、シャニはさり気なくねだる。
クロトはねだっているというより、脅迫している。
突然押し入ってきた仮装者達に少しビックリしたアズラエルだが、
「ああ、今日はハロウィンでしたね。中々可愛いカッコしてるじゃないですか。でも、困りましたねぇ・・・
何もないんですよ・・・あっ、これでもいいのかな?」
と、引き出しの中からチョコレートを取り出す。
それを見た四人。チョコ好きなのか?と考えながら、待つ。
「君達にあげますよ。サザーランド大佐にいただいたんですけどね、僕は食べませんし。かなりの高級品だそうです」
と言って、ぽーんとチョコを投げてよこした。
「おっと」
オルガ、ナイスキャッチ。
ハロウィン、一個目の収穫。
「アズラエル様っ、ありがとうございますv」
「・・・ありがと(これだけかよ」
「どーもっ(ったーく、しけてんな、このおっさん」
「サンキュ(ケチくせぇ」
それぞれ礼を言い、足早に立ち去ろうとしたところ・・・
「あ〜、?君はちょっと残って下さい。後は行っていいてすよ」
何かありそうな笑みを浮かべながら、アズラエルがを呼び止めた。
「?なんですか?」
上司の呼びとめ、無視はできない。
はクルリと向きを変え、気をつけの姿勢をとる。
オルガ達三人は、何かある!と思い、その場に立ち止まった。
「君達はいいんです。出なさい」
少しムッとして言うアズラエル。
が、無視を決め込み動かない三人。
三人が立ち去らないことに腹を立てたアズラエル、今度は強い口調で言う。
「僕はに用があるんです。君達は出なさい。どーしても動かないというのなら・・・」
そう言って机の上にあったボタンを押した。すると・・・
ドカドカドカッ
数十秒も立たずに警備の兵が大勢駆けつけた。
「あ゛っ!?おいっ、おっさん!」
「うざぁーい!お前らうざぁいっ!」
「何なんだよっ!?」
兵達はオルガ・シャニ・クロトの周りを囲み、乱暴に掴むとズルズル引きずって外へ連れ出す。
「!?アズラエル様っ?これはっ・・・」
仲間が連行される様子に戸惑う
アズラエルは、そんなを安心させるようにニッコリと微笑み、
「大丈夫ですよ。心配ありません。ところで、?」
身をかがめ、の顔を覗き込むような形で話し出す。
「なっ、なんでしょう?///」
性格はいまいちだが、中々カッコイイ上司。
顔を覗き込まれて思わず赤面してしまった。
そんなの様子を可愛いな。と思いながら、
「今日はハロウィンですよねぇ?あの言葉、言ったら僕も何か貰えるのかな?・・・Trick or Treat」
と、アズラエルは意地悪っぽく言ってきた。
そんなことを言われても、何も持っていない。
貰う側として行動していたのだから。
「あ・・・すみません。私、何も持ってないんです」
は俯き、何もないことを話す。
すると、アズラエルは嬉しそうにを抱き寄せた。
「!!?///」
急に抱き寄せられ、驚く
アズラエルはクスクスと笑い、
「解ってますよ。でも、何もないってことは・・・イタズラしていいんですよね?」
などと、とんでもないことを言い出した。
何も持っていないことなど分かっていたのだ。
菓子などが欲しいわけではない。を手に入れるための口実。
「///あっ、アズラエル様っ///」
事態を飲み込み、慌てる。が、既に捕らえられている。
「さぁっ、楽しい夜を、二人だけのハロウィンを楽しむとしますか?オバケ(オルガ達)は追い払いましたからねv」
「っ!///////」
ハロウィンの夜、魔女と狼男は結ばれた。


Trick or Treat・・・












何とか間に合った!ハロウィン、間に合わないかと思いましたっ!(当日であっても、間に合ったと言い張る)
何だか妙な終わり方な気もしますが、これでもイロイロと考えましたので〜怒らないで下さい。
それでは、ここまで読んで下さって、ありがとうございました!!




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