今日も平和なドミニオン内
戦争中だというのに、この艦だけは何故か平和な時を過ごしていた・・・




Love is everything...





お昼時も去った頃の食堂、一枚の写真を眺めては幸せそうに笑い、体をクネクネとくねらせている不思議な女性が一人。
「あ〜んっ!もう少尉ってば素敵すぎ!」
写真にキスしたりしてとても幸せそうなこの女性、名をという。
ドミニオンの食堂を任されているアズラエルお抱え調理師だ。曹長という階級ももらっている。
只今激しく片思い中。
「アンドラスしゃょうい〜〜vv」
恋のお相手はシャニ・アンドラス。
、自分を可愛がってくれているアズラエルのことなど微塵も想っちゃいない。
写真を抱きしめ愛しい男性に想いをはせていると、食堂のドアが開き背の高い金髪の男性兵が入ってきた。
「あ゛ーっ腹減った!何かあるだろ?何でもいい、出せっ」
入ってきたのはオルガ・サブナック。とても空腹な様子。
少しイライラしているようだ。
が、そんな事はおかまいなし。空腹のため今にも襲い掛かってきそうな男性には笑顔で言った。
「サブナック少尉、お食事の前にいつものアレ・・・例の物をv」
例の物。と催促されたオルガはうんざりした顔つき。
「あ゛ぁ?まだ足りねーのか?もういいだろうが。何百枚あんだよ?」
もうよせ。といった感じ。

例の物とはいったい?

オルガの拒否の意が込められた台詞を聞いた。瞳が一瞬で冷たい色に変わった。
「・・・あ〜、少尉ゴメンナサイ!もう食べる物ないんです〜。今日はもうお終いで〜す。夕食も少尉の分だけありません」
棒読みでそう言うと、じゃ。と、シャッターを下ろした。
食堂に食物がないはずがない。補給も受けたばかりなのに。
ようは「貴方が私に例の物をくれないのなら、私も貴方が欲しがっている物をあげることはできません」ということ。
これは厳しい。それだけは勘弁してほしい。いくら強化されているとはいえ、厳しすぎる。
このまま何も食べさせてもらえなければ廊下で行き倒れだ。
いや、もしかしたらシャワールームでかもしれない。
オルガの脳裏に嫌な想像が広がる。


(オルガの脳)
「あ゛ぁ・・・腹減った・・・」
「おい!オルガ、テメェいつまで入ってんだよ!さっさと出ろヴァカ!」
「・・・・・・・・・・」
「テメェーっ!無視すんなっ!」
シャッ!!(クロト、怒り任せにカーテンを開ける)
「!?」
「・・・あぁ・・・クロト・・・お前が素直に見える・・・」


非常事態でもなんでもない自軍の艦内で行き倒れ。そんな最期は嫌過ぎる。
しかも素っ裸でクロトに看取られるなんて絶対に嫌だ!焦るオルガ。
「な゛っ!ちょっ、待てって!分かったよ!撮ってくる!撮ってるから!とっておきのを!だからメシっ・・・」
少尉という階級の自分が、曹長という下の階級の女に縋って情けないと思うが、生殺与奪件を握っているのは彼女だ。
普通だったらオルガの命令、聞かなければアズラエルの命令で何とでもなる。
が、だけはどうにもできない。アズラエルのお気に入りだから。
さて、オルガの「とっておきのを撮ってくる」という言葉を聞いたは、
「は〜い、いらっしゃいませ〜vこの時間しか味わえない特製ハヤシライスがお勧めですよ〜v」
とガラガラっとシャッターを開け、満面の笑み見せる。
こいつ一度泣かしてぇ。と思うオルガだが、食事のため我慢。


一時間後


「あ〜っ、生き返った〜!マジ倒れるかと思ったぜ」
特製ハヤシライスをお腹いっぱい食べたオルガ、とても幸せそうな顔をしています。
「サブナック少尉?アイスティーどうぞv」
とっておきとは一体なんだろう?楽しみだvと思っている。可愛らしい仕草でアイスティーを差し出す。
「サンキュ。んー・・・うまいっ」
とっても上機嫌。この幸せにいつまでも浸っていたい。が、やることがある。男たるもの約束は守らねば。いや、人として守りたい!
「さて・・・」
数十分の食休みの後、との約束を果たすべくオルガはカメラを手にシャニの所へ向かった。
例の物とはシャニの盗撮写真。
最初は大切な本を盾にとられて仕方なく盗撮に協力したのだが、ズルズルとここまでやってきてしまった。
ちなみに本は最初の盗撮成功時、返してもらっている。

「いね〜な〜」
シャニのいそうな場所を見て回るオルガ。
中々見つからない。探しているときは見つからないものだ。
「とっておきとか言っちまったけど、撮りまくってるからな〜後ないのはシャワー浴びてる姿くら・・・シャワー?」
自らの言葉にハッとし、そうか・・・これだ!と叫んでシャワー室へと高速移動した。


シャワー室

「〜〜〜」
ここで待ってたんです。さぁどうぞ!と言わんばかりにシャワーを浴びているシャニ。
怪しい人影が自分を狙っていることに気づかない。怪しい人影とはもちろんオルガ。
「・・・悪いなシャニ」
ボソっと小声で言うとそっとカメラを向け・・・

カシャッ

撮った!気づかれないうちに退却!
途中、何やってんだよ俺。犯罪じゃねーか。いや、もう大分前からやってたけど。
それに、誰かに見られたら変態扱いだぞ?女ならまだしも、男のシャワーを隠し撮りなんて!あ゛ーっ許せっ!
と、激しい罪悪感にかられながらの元へ猛ダッシュした。


食堂

「サブナック少尉、どんな写真くれるのかな〜。あぁ、アンドラス少尉っv」
まだかな〜とウロウロしている
様子、見に行ってみようかな?と考えたとき、シュンっと食堂のドアが開きオルガが入ってきた。
「あっ!サブナック少尉!」
目が輝く。ついにお宝が手に入る。
「これで文句ねーだろ」
オルガはほらっ!と写真をに渡し、どうだ?すげーだろ!と胸を張る。さっきまでの罪悪感は何処へやら。
で、写真を受け取ったはというと・・・
「・・・・・!!///」
顔を噴火しそうなくらい赤くさせ、ふるふる震えている。少し刺激が強すぎたようだ。
何かを言いたいのか、口をパクパクさせている。
「もうそれ以上のモンは撮れねーぞ」
オルガ、さり気なく今回で盗撮は終わりだと告げる。シャワーシーン以上の写真などもう撮れるはずがない。
もコクコク!と激しく頷いている。
それを見てホッとしたオルガ、このままではなんだし少し助けてやるか。と、親切心を出した。
「なぁ、写真なんか見てたってどーにもなんねーだろ?どうだ、もっとこう〜前向きに動いてみねーか?
料理の腕をいかして弁当作ってやるとか。あいつ、お前の料理好きみてーだし」
とアドバイスする。
すると、
「お弁当は特別なのを定期的に。お菓子とかも作って・・・でも料理だけじゃ・・・
料理しか取り柄のない女なんてアンドラス少尉は・・・」
と言い、は俯いてしまった。
アンドラス少尉はきっと綺麗にメイクした可愛らしい子が好きに違いない。
自分みたいな飾り気のない女なんか・・・
泣きそうになっているを見てオルガは慌てた。
「お、おいっ、泣くなよ?つーか、何でそんなに落ちてんだよ?」
誰かに見られたら俺が泣かしたようにしか見えねーじゃねーか!
それに、泣かれるのは苦手だ。オルガはできるだけ優しく聞いてみた。
オルガの問われた。瞳を潤ませながら、
「・・・少尉はきっと・・・綺麗にメイクした可愛い子が好きなんじゃないかって・・・私みたいな飾り気のない女なんかって」
と、苦しそうに告げた。諦めの色も見える瞳。
オルガはの言葉を聞いて、人間外見じゃねーだろ。いや、外見重視だけで考えても十分可愛い部類だ。と思った。
まったく世話の焼ける・・・
「はぁ。そんなの聞いてみねーと分からねーだろっ。まぁ、どうしてもそう思っちまうなら化粧してみたらどうだ?」
沈みきってしまったにスパッと言うオルガ。
うだうだ悩んでいても仕方ない。
が、そんなに簡単には考えられない
「なっ!あ、で、でもっ、私、そんな物持ってないしっ」
と、無理だ。ということを言う。じれったい。
我慢できなくなったオルガ。
「そんなことどうにでもなんだよ!おらっ、行くぞ!」
と、強引にの手を引き、ある人物の元へと足を向けた。

ある人物・・・それは・・・

目指した人物の部屋の前。
「サブナック少尉!ここって」
驚くの声に耳を傾けず、扉に声をかける。
「オルガ・サブナック少尉だ。アルスター、ドアを開けろ!」
少々乱暴に命令すると、怯えた様子で部屋からフレイが出てきた。
フレイ・アルスター。彼女なら年齢に相応しい化粧品をもっているだろう。とオルガは考えていた。
月基地で大量の化粧品を仕入れているのを偶然みかけたから。
「あ、あの・・・何ですか?」
フレイはビクビクしている。味方なのに味方とは思えないのが原因だ。何故か怖い。
シャニもクロトも、アズラエルも皆。バジルール艦長以外は敵にさえ見える。
そんなフレイの心境など知らないオルガ。
「ああ、コイツに化粧してやってくれ。お前、持ってるだろ?化粧品」
と、の背をトンっと押しフレイに押し付けた。
え?と固まるフレイ。戸惑う
「じゃ、頼んだぞ。俺は部屋に帰る」
そう言い、二人の女性に背を向けオルガは去っていった。
後に残された&フレイ。
「・・・あ、じゃあ、部屋へ」
何がなんだかよく分からないが、命令らしいので従うしかない。
フレイはぎこちなくを部屋の中へと招いた。

十数分後

「できました」
これでいいのだろうか?という感じでフレイが告げる。
「あ、ありがとう」
は短くお礼を述べる。
自分はどうなっているのか?気になって仕方ない。
鏡を貸して欲しい。と言うと、フレイはどうぞ。と貸してくれた。
鏡に映った自分。
何だか別人のようだ。いいなぁ。と憧れた、可愛いメイクを施した自分がいる。
私でもこんなに変われるんだ・・・と思っていると、
「あっ、あの?」
自分の施したメイクが気に入らないのでは?と思ったフレイが心配そうに声をかけてきた。
「え?あっ、ごめんね。綺麗にしてくれたんだな〜って思って」
本当にありがとう。とはフレイに笑って見せた。
その笑顔を見たフレイ、安心したのか少し微笑んだ。
少しの間をおいて、
「じゃあ、私、行くね」
と言い、いつまでもいたのでは気が休まらないだろうとはフレイの部屋を後にした。


フレイの部屋を出た。これからのことを思い悩む。
本当にどうしよう?下を向き人気の少ない廊下を進む。部屋には帰りたくないし、とりあえずもっと人気の少ない所で考えよう。
と、角を曲がったとき、ドンっと人にぶつかった。
しまった!と思い、申し訳ありません!余所見をしていました!と謝罪しながら顔を上げると、目の前に自分が焦がれている男性がいた。
「あっ!アンドラス少尉っ!///」
思わず叫ぶ
なんの覚悟もできていないのに遭遇してしまった。
何て言えばいい?何を話せば?
どうしよう〜と固まっているを見て、シャニはボソっとつぶやいた。
「・・・似合わないし」
つぶやきとはいえ、しっかり聞こえた。

似合わない? 何が? まさか・・・

「化粧、似合ってないよ。変」
無表情で冷たく言い放つシャニ。

やっぱり・・・私じゃ駄目なんだ・・・

熱いものがこみ上げてきて目の前が歪む。喉もカラカラだ。
唇を噛み締めてみるが、堪えきれるものではなかった。
泣き顔なんて見られたくない。下を向いて見られないようにする。
そんなの様子をじっと見ていたシャニは、少し優しい声で言った。
「ねぇ、何でそんなにしたの?」
と。
何故化粧などしたのか?という問いかけに、
「っ・・・私っ・・・しょ・・少尉がっ・・・綺麗にメイク・・した子がっ・・好き・・・だと思って・・・それでっ・・・
私っ・・・・・少尉がっ・・・す・・・好きだったからっ・・・」
と、正直に答えた。
泣いているせいで上手く話せないが、伝えなければ。
ここまできたら言うしかない。
駄目でも想いを抱え込んでいるよりはいいだろう。はそう思った。
「・・・少尉が・・・アンドラス少尉の事が好きです・・・ずっと、前から・・・」
やっと搾り出した声。自分の全ての想いが込められた告白。
後は、返事を聞くだけ。あまり期待はできないかな。と思いながら少し顔を上げると、
「そうなんだ。でも俺、今の嫌い」
告白を黙って聞いていたシャニが静かに言った。
やっぱり・・・やっぱり私じゃ・・・と落ち込みかけたに、まだ早い!というようにシャニが言葉を繋ぐ。
「だから、その化粧落としてくれない?いつもの自然ななら俺、いいから」
そう言ってシャニは少し顔を逸らした。少しだけ赤くなったのを見られたくないから。
「あのっ、少尉?それは・・・その・・・」
本当は聞く必要なんてない。何を言っているのか、ちゃんと理解できている。けど、聞きたい。
言わなくても分かってるクセに。そう思いながらもシャニは、
「いつもの自然ななら付き合ってもいい。俺のこと想ってくれてるの、ちゃんと伝わってる。
だから、いいんだ。無理して変わろうとしなくても。それに俺、化粧品の匂いあんまり好きじゃない」
と、言葉にした。
「アンドラス少尉っ」
の涙が悲しみから喜びに変わった。
ずっと恋焦がれていた男性の隣にいることが許された。嬉しくて嬉しくて涙が止まらない。シャニに抱きつき泣きじゃくる。
シャニは自分に抱きつき嬉しさに涙するの頭をポンポンと撫で叩き、抱きしめてやる。

片思いは終わりを告げ、両思いが始まった。













お疲れ様でした〜。少し長めだったので読むのに大変だったかと・・・
見捨てずここまで読んでくださり、ありがとうございました。
今回のドリーム、ある方にリクエストいただきまして〜ちょっと挑戦したんです。
「ヒロインが頑張ってキャラを振り向かせる!」というのに。
そして出来上がったこの作品。(何か、ヒロインが頑張ってるのではなく、オルガが頑張ってた気が)
少しでも楽しんでいただけたらと思います。
それではっ、逃げっ!



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