愛しい花




獲物(アークエンジェル)が宇宙に旅立って数日後のある日・・・

「あ〜君達?今すぐに僕の部屋まで来てください。新しいお友達を紹介します」
オルガ・シャニ・クロトの三人にアズラエルからの通信が入った。
「ったく、うっせーな・・・」
「まだゲームの途中なのにさぁ!」
「・・・行かなきゃ怒られる?」
かなり面倒くさいが、薬がもらえなくなっては困る。
三人はブツブツ文句を言いながらも、アズラエルの部屋へと足を向けた。

「「「失礼しまーす」」」

心にもないことだが、一応の挨拶と共に上司の部屋へ入る三人。
「おやぁ?意外と早く来ましたね。あと1分待って来なかったら、お仕置きしようかな〜なんて思ってたのに」
心底残念そうな顔のアズラエル。お仕置き好きは本物だ。
そんな上司に殺意を覚えつつ、ただ黙って言葉を待つ三人。アズラエルの隣に立っている女性を見ながら。
女性もまた、三人を・・・いや、シャニを見ている。何か言いたげだ。
見つめられているシャニは、何?という目で見つめ返す。
オルガ&クロトはただ、ふーん可愛いじゃん。程度の目で見つめる。
と、三人の様子に気づいたアズラエルは、面白そうに話し始めた。
「あ〜、やっぱり気になるんですか?この子。可愛いでしょう?僕が選んだんだから当然ですけど。
この子は今日から君達の健康管理係りになる子です。早い話が食事を作ってくれる子です。仲良くして下さいよ?」
殴り倒したくなるほど嫌味な笑みを浮かべて言うアズラエル。
健康など、アズラエルの一言でどうとでもなるのに。
自分達には健康も何もない・・・お化けに病気も何もないのと同じだ(?)
と思ったが、三人は素直に自己紹介を始めた。
「オルガ・サブナックだ」
「僕はクロト・ブエル」
「・・・シャニ・アンドラス」
名前だけの、簡単な自己紹介。どうせ詳細は聞いているだろうと思ってのことだ。
三人が、お前は?という顔で見ると、
です。宜しくお願いします・・・」
チラリとシャニを見て、も名前だけの簡単な自己紹介をした。
やはり何か言いたげだ。
愛想も何もない顔合わせがすんだところで、アズラエルは手をヒラヒラさせて出て行けという合図をした。
「自己紹介もすんだことですし?もう皆下がっていいですよ」
ホント腹立つ。もう上司だけど、上司にしたくない奴ナンバー1。
・・・などとは口がさけても言えない三人組。黙って出て行く。
その後ろにも続いた。

通路

「まったくあのおっさん、腹立つよね〜」
「いつか撃ちてぇ」
クロトとオルガは相当ご立腹しているらしい。
二人ともアズラエルへの恨み言を言いまくっている。
こんなとき、いつもならシャニが「うざぁ〜い」と言うのだが、今日は言わない。
シャニがいつもと違う事にオルガとクロトは気づいていない。眼中にないようだ。
「・・・」
シャニはただ黙って歩いていたが、どうしても気になってチラリと少し後ろのを見た。
見られた。少し仏頂面で見返してくる。
いったい何だと言うのか?このままはうざい。そう思い、シャニは歩くのを止めのほうを向いた。
もピタリと立ち止まる。
しばしの間見つめあう二人。
後ろのシャニ達の様子に気づかず歩いていくオルガ&クロト。
気づいていても無視だろうが・・・
「さっきから何?俺に何か言いたいの?」
無愛想に言い放つシャニ。
すると・・・
「っ!何って・・・シャニ、私に何か言うことあるでしょっ!?」
今までずっと黙ってたが突然怒りを爆発させた。
「・・・言うこと?別に・・・」
今日初めて会った奴。しかも自分達の健康を管理するだけの奴。何も言うことなんてない。何故怒る?
シャニはそう思っていた。
何も言うことはない。このシャニの言葉と態度でさらに爆発した
「!!!シャニって、そんな冷たい男だったんだ!?婚約者の私に何も言わずに行方くらまして、
やっと見つければ軍人になってて・・・!私は何なのっ!?結婚してくれって言ったのシャニだよっ!なのにっ・・・」
そこまで言うと、は耐え切れなくなり泣き出した。
小さな肩を震わせ泣いている。
「あっ・・・そのっ・・・」
いきなり泣き出され、困ってしまったシャニ。
「っ・・・ずっと、探してたのにっ・・・心配してっ・・・シャニに会いたくてっ・・・」
大粒の涙がの瞳から零れ落ちる。
それを見たシャニは、どうしようもなく胸が痛んだ。
いつもなら、「はっ」とか言ってさっさと部屋に帰るのに、それができない。
放っておいてはいけない気がする。・・・違う。放っておけない。
「泣くなよ・・・お前が泣いてるの、何か嫌だ」
泣きじゃくっているの身を引き寄せ、包み込んだ。
気づいたらそうしていた。自然に体が動いたのだ。
「っ!・・・シャニ・・・」
あたたかくて大好きだった胸。でも、シャニはもう自分のことなんて・・・再び悲しみがに押し寄せる。
「部屋、行こ。俺の部屋。そこで話そう」
シャニはの頭を撫でて言った。
「・・・うん」
通路の真ん中ではゆっくり話はできない。
二人は部屋に向かってゆっくり歩き出した。

シャニの自室

「・・・」
「・・・」
室内に入ってから、沈黙が続いていた。何から話せば、何を話せばいいのか分からなくなっていた。
二人とも俯いたままだ。
数十分もたった頃、シャニが静かに口を開いた。
「・・・俺、記憶ないんだ」
呟かれた言葉には驚いて顔を上げ、シャニを見た。
「シャニ・・・それって・・・」
記憶がない。シャニはそう言った。何故?いったいどうして?何があったというのか?
アズラエルからは何も聞いていない。ただ、三人の食事を作りなさいと言われただけ。
が思いを言葉にしようとしたとき、感じ取ったのか、シャニは自分から話し出した。
「MS乗るのに、何回も手術と薬の投与を繰り返された。今も薬の投与を受けてる。ないといられなくなった。
副作用なのかな・・・何も、思い出せないんだ。どこにいたとか、誰といたとか、何でこうなったのか、全然。
気づいたら、こうなってた。だから、俺・・・。
でもっ、何も覚えてないけどでもっ、お前が悲しんでるの見るの辛いんだ」
シャニの顔が悲しみに歪む。今までは特に何も思わなかった。記憶などいらない。そんなもの必要ない。
音楽と薬があればいい。他は必要ない。そう思っていた。でも今は記憶が欲しいと思う。昔の記憶が欲しい。返して欲しい。
と過ごしていたであろう頃の記憶・・・
「シャニ・・・」
辛そうに話すシャニが痛ましくて、はシャニに身を寄せる。
「・・・ごめん」
今にも泣きそうな顔で謝るシャニ。
そんなシャニを抱きしめ、
「シャニ、いいの。謝るのは私。何も知らずに酷いこと言って貴方を傷つけた。ごめんなさい」
は、通路で自分が放った言葉を謝罪した。
シャニは自分を忘れてなどいない。記憶はなくても、心は覚えていてくれた。
また全て一から始めればいい。はそう思った。
「また、一から始めよう?シャニがよければ・・・だけど」
そう言い、シャニの顔を覗くと、
「一から始める、当たり前だろ」
シャニはニっと微笑み、にキスを落とした。
もう離れないように。

後日、シャニはに花をプレゼントした。
シャニ自らが選んだとても可愛らしい鉢の中で、控えめに咲いている花。

『イカリソウ』

花言葉は・・・「あなたを離さない」














シャニの単独ドリームですっ。
日記で宣言した、「次は連合」約束守れましたっ(*T_T*)
ちょっとシリアス目指したり。・・・ダメダメですね(汗)
全然じゃんかよっ!て感じでしょうか・・・お許しをっ。
それでは、ここまで読んで下さってありがとうございましたっv



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