危険なハーレム




ピーッ!ピーッ!ピーッ!
珍しく平和なある日の朝、シャニ・オルガ・クロトの部屋に通信のお知らせ音が鳴り響いている。
が、この三人、中々応答しない。

「あの〜、アズラエル様?」
発信者らしき人物は困ったように隣にいたボスを呼んだ。
「ん?何です?v」
ハートを飛ばしながら振り返る。
このという人物、実は三日前からアズラエルが目を付けていた通信担当の兵なのだ。
初めて見かけたその時、あまりの美しさに立ち止まり、固まってしまったほど。
どうしても自分の側に置きたいと我慢できなくなり、権力をフル活用し手に入れた。今さっき。
「アズラエル・・・様?」
だら〜っと、しまりのない顔で自分を見つめるボスを不気味に感じながら、再度呼びかける
「はっ!・・・あ〜、どうしたんですか?」
ヤバっ!と、我に返り、何事かを聞く。
「はい・・・先ほどから例の三名に通信を入れているのですが、応答なくて。」
心底困った様子の。自己紹介が目的で通信を入れているのだが、返事がない。
このままでは、誰だよ?お前!と言われてしまう。それは悲しいので避けたい。
あの三人に密かに憧れていたのだから。
「返事がない?あ〜もうダメダメですね。僕のの通信を無視するなんて、お仕置きです。」
ちょっと待て。と、言いたい事をサラリとぬかすアズラエル。
オージンジに電話したいところだが、権力者相手では無理。
はぁ。と、ため息をつきながら、は通信を続けることにした。



シャニの部屋

ピーッ!ピーッ!ピーッ!
結構うるさく鳴り響いている通信音。
が、シャニは無視を決め込み、だら〜っとベッドに横になっていた。
ピーッ!ピーッ!ピーッ!なおも続くこの音。
「・・・・・。」
我慢できなくなったのか、ムクリと起き上がるシャニ。
無言で通信機の目の前まで行くと・・・
「はぁ〜〜うざあぁぁぁい!」
気合一発。どこから取り出したのか、ミニ鎌で通信機を真っ二つにしてしまった。
「はっ」
ニヤリ、と満足そうに笑うと、また元の通りベッドに横になった。


シャニ、通信できず。



オルガの部屋

ピーッ!ピーッ!ピーッ!
こちらもうるさく鳴り響いている。
当然のように無視し、ベッドの上で大好きな小説を読み続けている。
が、気にはなっているらしく、こめかみのあたりをピクピクさせている。
ピーッ!ピーッ!ピーッ!止まる気配がないこの音。
しおりを挟み、パタンっと小説を閉じると、オルガは無言で立ち上がった。
通信機の目の前まで行くと・・・
「うっせぇーよ!この通信機!うぉらあぁぁ!」
気合一発。どこから取り出したのか、ミニバズーカで通信機を吹き飛ばしてしまった。
当たり前だが、通信機ごと壁も吹き飛んだ。
オルガ、プライバシー0の状態。
「やっと静かになったぜ。」
静かならいいらしい。満足そうにベッドに戻ると、再び小説を読み始めた。


オルガ、通信できず。



クロトの部屋

ピーッ!ピーッ!ピーッ!
もう貴方だけしかいない!とばかりにうるさく鳴り響いている。
が、ゲームが忙しいので無視をしていた。
ビシュンっ☆やられてしまった。最終ステージだったため、かなり悔しい。
ピーッ!ピーッ!ピーッ!すがるように鳴り続けるこの音。
カチッ。と、ゲームの電源を切ると、クロトは無言で椅子から立ち上がった。
通信機の目の前まで行くと・・・
「てめぇー!邪魔すんな!この通信機!撃滅!」
気合一発。どこから取り出したのか、ミニとげとげハンマーで通信機を潰してしまった。
「僕の邪魔するからだよ。」
少しスッとした顔で椅子に戻ると、またゲームの電源を入れ、やり始めた。


クロト、通信できず。
全滅。



「ア、アズラエル様ぁ〜通信機が破壊された模様です。」
三人への通信が出来ず、泣きそうになる
!?むはーっ!僕のを泣かすなんて!」
まだ泣いてない。
怒りの形相で叫びつつ、机の引き出しの中から銃を取り出すアズラエル。
ムルタ、カタパルト接続。システムオールグリーン、進路クリア、ムルタ、どうぞ!
ズドドドドドドッ!
アズラエルは物凄い勢いで部屋を飛び出して行った。
「うわっ!大変だ!殺されちゃうっ」
も慌てて後を追った。



食堂

いつの間にか食堂に来ている三人組み。
お腹がすいたので、何か食べようと部屋を出たところ、かちあい、共に来たらしい。
仲が悪そうで実は良い?
「あ〜腹減った。おい、食事。三つな。」
ちゃんと三人分頼むオルガ。
「まったく、たまには美味い物食べたいよねっ。あのおっさん、自分ばっかいい物食べてるんだぜ?」
食事と上司への不満を漏らしつつ、コップに水を注ぐクロト。(ちゃんと三人分)
「あいつ、うざぁ〜い。」
同意するシャニ。
「うっせぇよ、お前ら。聞いてたらどうすんだ?」
そう、この会話、本人に聞かれていたら困ったことになる。
薬が貰えない。=苦しい。絶対に逆らえないのだ。
「ですねっ」
水を渡し、クロトが席についたとほぼ同時・・・
ダーンッ!!
ドアが蹴破られた。
「「「!?」」」
驚く三人。目の前には恐ろしい形相のアズラエル。
「・・・な、何だよ?」
「・・・へ?」
「・・・用事?」
いつにない迫力のアズラエルにビビリつつ、何事かを聞く。
「き〜み〜た〜ち〜・・・よくも僕ののこと無視して泣かせましたね!?」
ジャキン!と銃を向け、迫るアズラエル。
「ちょっ、待てよ!誰だよ?って・・・」
「僕達は知らないよ、そんな人。無視なんて・・・あ!」
「・・・通信・・・?」
無視なんて、と否定したものの、すぐに身に覚えがあるのを思い出した。
固まる三人。あの通信、そうに違いない。
やばい、殺されるかも。そう思ったとき・・・
「ア、アズラエル様っ」
ぜぇぜぇ、と息を切らしながらが部屋に飛び込んできた。
その姿を見たとたん、今まで恐ろしい顔で三人に銃を向けていたアズラエルの顔色が一瞬で変わった。
「あ〜、v僕を追いかけて来てくれたんですかvv可愛い僕のー!」
どこまでもいっちゃってます。怖いです。
「アズラエル様!止めて下さいっ。いいんですよっ。ほらっ、今ここで伝えれば。」
必死に止めに入る
「そうですか?まぁ、がそう言うのでしたら・・・」
ご機嫌ムルタ。さっさと銃を懐にしまいました。
その様子をただ見つめている三人。いや、正確には一人を見つめている。
「ヒュ〜。すっげ可愛いじゃんv」
嬉しそうなオルガ。
「可愛い〜v」
頬を赤く染めているクロト。
「・・・可愛い。」
無表情だが、心底そう思っているシャニ。
三人の視線に気付き、ドキっとする
「あっ・・・は、初めまして!といいますっ。今日の朝からこの艦の通信士となりました。宜しくお願いします!」
怒らせてしまったか、不審に思われたと思い、慌てて自己紹介をした。
大丈夫かな?ちょっと不安になっていると・・・
「そう。俺、シャニ・アンドラス。シャニでいい。」
と、少し微笑んでシャニが手を差し出した。
は、ブシーッ☆と鼻血を噴出しそうだった。一番憧れていたシャニが、自分に手を差し出してくれている。
「あ、あのっ、よ、宜しくお願いしますっ」
そう言い、そっと手に触れてみた。暖かい。
と、その時・・・
「シャニィ!てめぇー!」
「何さりげなくの手ぇ握ってんだよ!」
クロト・オルガが怒りをあらわにする。
「シャニ!君ねぇ、は僕のものなんですよ!?勝手に触れるなんて、お仕置きしますよ!?今すぐに!!」
再び銃を取り出し興奮するアズラエル。
が、「うっせーよ!」「滅殺!」と、オルガ&クロトに吹っ飛ばされ、アズラエルは壁を突き破り海へ落ちていった。
興奮しすぎて後のことなんて考えられない二人。
「俺はオルガ・サブナックだ。オルガでいいぜ。何かあったら俺に言えよなっ」
ニッと素敵な笑顔でに迫るオルガ。
「邪魔だオルガ! 僕はクロト・ブエル。クロトって呼んで。ねぇ、一緒にあっちでゲームしようよ。面白いのがあるんだ。」
オルガとシャニを押しのけ、を連れ出そうとするクロト。
「えっ、あのっ、あのっ・・・///」
困る。顔はリンゴのよう。
憧れの三人に言い寄られ、赤面しないわけがない。
どうしようかと思っていると・・・
「お前ら、うざあぁ〜い!」
そう叫び、何処から取り出したのか、等身大鎌にオルガ&クロトを引っ掛け、まとめて海へ放り投げた。
「くっそーっ!」「覚えてろよシャニー!」ザッパーン☆二人はシャニを罵りながら海へ落ちた。
シャニ最強。勝者シャニ。
「うわっ。落ちちゃった!大丈夫かな・・・。」
は〔二人のこと〕を心配した。先に落とされたボスの心配はしていないらしい。ムルタ・アズラエル、哀れなり。
「多分、大丈夫。行こ。」
シャニはの手を取ると、スタスタと歩き出した。
食事など、どうでもよくなったらしい。
「あのっ、行くって何処に?」
ドキドキしながら訊ねる
「・・・俺の部屋。一緒に音楽聴く。いいよね?」
少し照れくさそうに聞くシャニが物凄く可愛くて・・・
「う、うん。///」
嬉しそうに返事をすると、はシャニの手を握った。
チラっとを見たシャニの横顔、心なしか頬が赤かったのには気付かない。
この二人が恋仲になるまで、あと少し。そんなに時間はかからない。



             完



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おまけ?
海に放り出された三人はというと・・・

アズラエル

ーっ!待ってて下さい!今戻りますからねーっ!!vv」
海水をたっぷり吸い、重くなったスーツなど気にせず、猛スピードのバタフライで艦を目指していた。
途中、サメに食われそうになったが、「邪魔です!フカヒレスープにしますよ!?」と、脅して切り抜けた。
言葉を理解したわけではないが、アズラエルの迫力に負け、サメは退散したのだ。
アズラエル、恐るべし。



オルガ

「シャニのヤロー!は渡すかよぉ!うぅおぉらぁぁぁ!」
必死にクロールで艦を目指していた。
その口には何故か一匹の魚が銜えられている。
途中、空腹でどうにも力が出ず、沈んでしまいそうだったので、魚を捕まえたのだ。
こんなところでも薬の成果が出た。



クロト

「くっそー!は僕のものだぁー!」
こちらも凄いスピードで泳いで艦を目指しています。背泳ぎです。
途中、アズラエルから逃げてきたサメと遭遇したが、「邪魔すんな!必殺!」と、パンチで撃退。
サメは涙目になりながら逃げて行った。
多分、一番の被害者はこのサメ。