一緒にいて




アズラエルが君臨している連合軍戦艦内の一室


「はぁ〜、暇だなぁ〜。はぁっ」
丸一日の休暇を与えられたというのに、軍医・はベッドの上でゴロゴロ転がりながら溜め息をついている。
何故か?答えは簡単。この戦艦は今、基地に戻る途中。=海のど真ん中。何処にも出かけられない。
休みを与えられても、戦艦から降りられないのでは溜め息も出る。
「暇暇ぁ。あーあ、これなら働いてた方がいいよ〜」
ぶつぶつと独り言。
アズラエルのお気に入りであるの部屋は、本当に戦艦内の部屋か?!と思うほど豪華。
TV・DVD・雑誌・その他と、何でも揃っているのだが・・・
「つまんないつまんないつまんない」
一人ではつまらない。枕を抱え繰り返し呟いていると・・・

ピピー ピピー ピピー

通信音。
いったい誰だろう?急患かな?
はムクリと起き上がり、少し緊張しながら通信に出た。
途端

「あ〜、?」

うわぁ〜。と、げんなりしてしまう声。
ムルタ・アズラエルの声が容赦なく耳に絡みつく。
理事のことがあまり好きではない、間違ったフリして切っちゃおうかな。
とか思いながら、「はい」と返事をする。
と、アズラエルは物凄く嬉しそうに、
、今日はお休みでしたよね?暇ですよね?どうです?僕とランチ後に艦内散歩して、(省略)後にディナーを一緒に――」
なんて、早速口説いてきた。
なんとか一緒に過ごそうと、全身が痒くなるような台詞まで使って繰り返し誘ってくる。


の脳内。

しつこいなぁ。
なんなの? ランチ後に艦内散歩して、(省略)後にディナーを一緒に・・・。
ずっと一緒にいろってこと? 無理!!


お断り決定。
はやんわり?と断りの意思を伝える。
「すみません理事ぃ。ちょっと前に怪我人の手当てを、と通信が入りまして。今から行くところなんです。またお誘いして下さいv
失礼しま〜す」
「あっ、」
プツッ。
通信、強制切。ついでに配線も切。


「さて」
通信を切ったは、パパッと身なりを整え部屋を出る。
アズラエルが部屋に乗り込んできたらたまらない。
「よしっ、行くか!って、何処へ行こう?医務室・・・理事が来そう・・・食堂しか行くところない、か」
昼だし、とりあえず食堂へ。





食堂

ひょっこり顔を覗かせる形でアズラエルがいないのを確認し、は中へ入る。
と、すぐに、君の後をつけてたんだ!と言うようにシャニ・オルガ・クロトの三人組みが食堂へやって来た。
仲が悪いのか良いのかいまいちよく分からない三人、互いを罵り合いながらに笑顔で近づく。
「今から飯か?丁度いい、俺も今からなんだよ、一緒に食おうぜ(オル」
「うざい・・・は静かに食いたい派だし(シャ」
「静かに食いたい派だなんて、勝手に決めんなヴァーカッ!は僕と楽しく食べたい派なんだよっ(クロ」
身勝手炸裂。
どうしても二人きりで食事がしたいらしい。
皆で仲良く。などという考えはない。


どうする


脳内。

困ったな〜私としてはシャニと二人で静かに食べたい。
でも、そんな事言ったら喧嘩になるだろうし・・・皆で仲良く食べる。というのも出来ない人達・・・うーん・・・
やっぱり皆で、か。


決まった。
「あ、んー、私は皆で仲良く楽しく食べたい派・・・かな?」
と言い、上目遣いで三人を見てみた。喧嘩防止。
効き目は・・・あるに決まっている。
「そ、そうだよなっ、食事は大勢での方が楽しい!ああ、楽しい!」
オルガ、少し笑顔が引きつっているものの、の上目遣いにコロリ。
シャニは
「・・・・・」
ただ黙っている。何かを考えているらしい目。
クロトは
「ほぉらねっ、僕の言ったとーりじゃないかっ。は皆で楽しく食べたい派なんだよっ」
先ほどとは違う事をサラリと言い放ち、得意気。
まだ怪しい感じはするものの、なんとかなりそう。
というわけで、食事を持ち皆で仲良く席に着く。
は真ん中。両隣はオルガとクロト。シャニはの目の前に。


「〜〜それでアズラエルのおっさんがさぁっ」
「えぇ〜っ、本当にぃっ?理事サイテー」
「マジかよぉっ」


楽しい食事時間、アズラエルの秘密などの話で盛り上がる食堂、とても平和。
皆、少年少女らしい笑顔で話している。
一人、、、シャニを除いて。
皆で食事を摂ると決めた時から一言も話していない。
そんなシャニに気づいたは、「どうしたの?」と声をかけてみた。
元から無口なシャニだが、何かいつもと違う気がして・・・。
「シャニ、どうかしたの?」
繰り返し聞くと、シャニはボソッと小さな声で答えた。

「・・・苦しい」

苦しい・・・。
苦しい・・。
苦しい。

「大丈夫っ?!医務室行くっ?」
はガタッと立ち上がる。
放ってはおけない。
軍医だから、というわけではない。
目の前に具合の悪い人間がいるのに平気な顔をして食事を進めるなんて、には出来ない。
が、オルガ&クロトには出来る。
「放っておけよ、シャニはガキじゃねぇんだ、どうしても調子悪けりゃ自分でなんとかすんだろ」
オルガは立ち上がったの腰にさり気無く手をやり、放っておけと言いながら自分よりに座らせようとしている。
そんなオルガに気づかないはずがないクロト、
「テメェっ、何さり気無くに触ってんだよ!」
立ち上がり、オルガに掴み掛かる。
掴まれたオルガも
「あ゛ぁっ?!うっせぇーよ!完熟トマト頭!」
とクロトの胸倉を掴み、喧嘩体勢。
やはり仲良く、は無理だった。もうどうにも止まらない。


派手に喧嘩を始めた二人は放っておいて・・・


「シャニ、医務室行く?薬飲んだほうがいいって。ね?」
はシャニに医務室へ連れて行こうとしている。
大切なパイロット。
軽い症状でも放っておくわけにはいかない。
「我慢しちゃ駄目、ちゃっちゃとお薬飲んじゃおうっ」
「・・・分かった」
袖を引っ張り言うに、シャニはやたら素直に従う。
二人は喧嘩中のオルガ&クロトに気づかれないよう、そっと食堂を後にする。





医務室


「じゃあシャニ、大人しく横になっててね。すぐに薬用意するから」
はシャニを寝かせ薬を取りに行こうとした。が・・・

「きゃっ!?」

強い力で引っ張られ、ベッド側へ倒れこんだ。
いったい何?何が起こったの?
瞬時には何が起こったのか理解できない。
ただただ固まっていると、「、温かい」というシャニの声。

「温かいって・・・!!///」

何が起こったのか、自分は今どうなっているのか、はやっと理解する。
引っ張ったのはシャニで、引っ張られた自分はベッドに倒れ、シャニの上。抱きかかえられている。
「あ、やっ、ごめんなさい!すぐに・・・」
は慌て、すぐに退くからと言う。
が・・・
「駄目。一緒にいて」
シャニはぎゅうっとを抱きしめ、放さない。
逃げ出さないように抱え込み、寝る体勢。
ちょっとこれは色々と・・・
は慌て、「具合悪いなら一人でゆっくり休まなきゃっ。ね、放して?」と言う。
胸がドキドキいっていて苦しい。
なんだかんだと理由付けして逃げたい。
のに、シャニは放してくれない。背にぴったりとくっ付いたまま。
どうしよう。と思っていると、シャニが耳元でボソボソと話し出した。
「俺、苦しい。お前の事想うと。お前が男と話してるの見ると。・・・一緒にいて。こうしてると、苦しいの収まるんだ」
の事を考えると胸が苦しくなる。が他の男と話しているのを見ると苦しくなる。
何故なのかは解らないけれど。

「シャニ・・・それって・・・」

私の事・・・好き?シャニが・・・シャニも・・・
考えたことがなかった。
いつもグテ〜っとしていて、食堂で一緒になってもあまり反応がなくて・・・
何とも思われていないと思ってたのに。
嬉しい・・・

「シャニ・・・傍にいるよ。貴方が苦しくないように・・・もう苦しい思いをしなくて済むように」

はそう言い、シャニの手にそっと自分の手を重ねた。
もう、苦しまなくていい。
生がある限り、貴方の傍にいる。






シャニとが仲良く眠っている頃、アズラエルは・・・

「あぁっもうっ、どうしてがいないんだよ!」
食堂でオルガ&クロトに銃を向け乱心していた。
イライラし過ぎて艦内を探し回るという考えをなくしている。
オルガとクロトは腹の中、シャニの野郎!と、ひたすら怒。
何だか後が怖い気がする。









お疲れ様でした。
リクエスト頂いた(多分もう半年近く前)シャニの甘逆ハー・・・やっと完成いたしました。
半分までは調子よくホイホイと書けていたのですが・・・いっちょ前に途中で書けない病にハマリ・・・あうっTAT
して、さらに申し訳ない事に・・・出来上がった小説はちっとも甘くないときた--;
お待たせしまくった挙句、甘みの足りない小説で本当にすみませんっ。
それでは、頭を下げたまま・・・失礼します。ありがとうございました。



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