かまって下さい
時間は夜11時30分すぎ。のんびり足つきを追跡中のヴェサリウス。
今夜もクルーゼ夫妻は熱い!かと思ったら・・・
「ラウの馬鹿ーーーーーっ!」
叫び、はクルーゼ私室から飛び出した。
一体何があったのか?
数分前
「ねぇ、ラウ〜」
シャワーも浴び、後はもう寝るだけというところまで準備が出来た、愛する夫ラウにかまって欲しくて擦り寄ったのだが・・・
「・・・・・」
ラウは返事をしなかった。
重要書類に目を通すのに集中しているため、妻の呼びかけに気付かない。
ぶつぶつと独り言を言いながら、仕事を進めている。
「ラウ?ねぇ、ラウ〜・・・ラウってばっ!」
返事をしない夫に少しムッとした、つい袖を引っ張り大きな声で呼んでしまった。
妻の声と行動にピクリ、とラウの動きが止まる。
は、やった!かまってもらえる!と思った。
が、愛する夫が口にしたのは愛の言葉ではなかった。
「・・・見て分からないかね?私は今、重要書類に目を通しているのだが?」
僅かだが怒りが感じられる声。
はラウの少し怒っているらしい声に心を痛めつつ、
「分かってるけど・・・少しかまってくれてもいいじゃない?」
と我侭をぶつけた。
これがいけなかった。
ラウはふぅ。とため息をつき、
「、私は軍人だ。そういつも仕事を放って君の相手をするわけにはいかない。分かるだろう?
こう言っても分からぬ、気に入らぬと言うのなら、私とは上手くやってはいけない。離れるしかないな」
と言った。
最後の言葉は本気ではなく、少しのイライラから出てしまった言葉。
だが、を傷つけるには十分すぎる言葉だった。
こんな事があって、は叫びながら部屋を飛び出したのだ。
部屋を飛び出した
出てきたものの何処へ行けるわけでもなく、ただ艦内をウロウロしている。
「ラウの馬鹿・・・」
仕事が大切なのは分かっている。
大勢の兵の命を預かっているのだ。邪魔をしてはいけない。我侭は許されない。
分かってはいるが、どうしても寂しかった。
いつ命を落とすかも分からない時、少しでも長く触れ合っていたい。
複雑な気持ちを分かってほしいのに・・・。
「・・・浮気・・・しちゃうから・・・」
はボソっと呟くと、ある人物の部屋へと足を向けた。
ある人物の部屋
「出来た、と。次は何色にしようか・・・」
スッキリとした室内、もうすぐ0時だというのに少年はメタリックブルーの丸い物体を転がしていた。
アスラン・ザラ。クルーゼ隊のエースパイロットだ。
丸い物体はハロ。簡単な言葉を話すペットロボット。婚約者への贈り物。
「・・・やっぱりパールピンク・・・かな」
独り言を発し、次のハロ作りに取り掛かろうとするアスラン。
まだ作るんですか?もういらないでしょう?と、誰からも言われないのが不思議。
「少し大きさを変えてみようか?」
部品を手に色々と考えていると・・・
ダンダンダンッ!
「アスラン!!開けてっ!」
乱暴なノックと共に、ドアを開けろと声をかけられた。
「っ、さん!?」
クルーゼ隊長夫人、言う通りにしなければどんな目に合うことか・・・
アスランは慌ててドアのロックを解除した。
ランプが赤から緑に変わる。
ドアが開くとは「失礼するわっ」と言いながら部屋にズカズカと入ってきた。
アスランは、見るからに不機嫌そうだな・・・と思った。
下手なことは言わないほうが身のためだ。
「こんな時間にどうしたんですか?」
隊長夫人、邪険に扱うわけにはいかない。
中々辛いものだ。
アデス艦長の苦労が少しだけ分かった気がする。
さて、事情を聞かれた、
「何でもいいでしょっ。アスラン、私、今日は貴方と一緒に寝るわ!いいわね?」
と言うと、返事を待たずにアスランのベッドに潜り込んだ。
止める間などなかった。あっても止められなかったが。
「あっ、ちょっ・・・さん・・・はぁ。分かりました。私はこちらで休みます」
何を言っても駄目そうだ。
そう思ったアスランは、開いている隣のベッドで寝る事にした。
友、ラスティが使っていたベッド。
ゴロンと横になると、がムッとした声で命じてきた。
「何してるの?貴方もこっち!一緒にって言ったでしょ?早く来て!」
「・・・・・」
命令を聞いてアスランは固まった。
一緒って・・・
いくらなんでもそれはできない。
自分は男では女。自分には婚約者がいてには夫がいる。
同室で寝るというだけでも問題なのに、同じベッドで眠ったなどと知れたら・・・
隊長にバレたら・・・確実に死ぬ。殺される。
かと言って、に「その命令には従えません」と言ったら・・・
アスラン、人生最大のピンチ。
必死に考える。どうしたら無事でいられるのかを。
そして、数十秒で答えを出した。
「分かりました。失礼します」
の隣に横になるアスラン。
隊長ならきっと分かって下さる。しっかり事情をご説明すれば、きっと。
多分・・・
「(母上、もしかしたら近いうちに会えるかもしれません。・・・キラ・・・もうお前と話せないかもしれない)」
アスランは痛む胃を押さえながら眠りについた。
朝方
「・・・寝てる・・・わよね」
はアスランが寝ているのを確認すると、そっとベッドから抜け出した。
そして静かにデスクに近づき、PC(アスランの私物)を勝手に起動させ、カタカタと文字を打ちはじめた。
信じられない!アスランと隊長夫人が!?
なんと、ヴェサリウス掲示板へ書き込みをしているではないか。
自分とアスランが一夜を共にしたと。
「・・・ラウ・・・これでも冷たいこと言える!?」
自分を見て欲しい。かまってほしい。
その一心でアスランを巻き込み噂まで流す。
嫌な女でかまわない。
全ては夫との愛のため!
どこまでも自己中である。
そして、昼過ぎ
アスランはクルーゼの私室へ呼び出された。
「アスラン・ザラ、出頭いたしました」
ビシっと敬礼し、上官の言葉を待つ。
内心ハラハラだ。
何を言われるのだろう・・・
アスランがそう思っているとラウは
「ああ、急に呼び出してしまってすまないな。君に聞きたい事があってな」
と軽く微笑み用件を語り始めた。
「今朝何気なくヴェサリウス掲示板を見たら、君とが一夜を共にしたという内容の書き込みがあった・・・
一体どういうことなのか知りたくてな。書いてあることは事実かね?」
話している声は何時もどおり優しいが、放っているオーラは優しくない。
アスランは青ざめた。
何故こんなに早く・・・
まさかさん!?・・・有り得る・・・
背中に冷たい汗を感じながら、命をかけた説明タイム。
「その、はい。事実です。ですが隊長!私は誓って何もしていません!それに、申し上げにくいのですが・・・
奥様のほうから・・・」
途中まで説明を聞くと、ラウは「そうか」と呟いた。
そして・・・
ガタッ
引き出しから眩しいほどに光り輝く銃を取り出した。
「!!!???」
アスランは取り出された銃を見て、今までよりもさらに固まった。
こ、殺され、る!?
「隊長っ・・・」
目を見開き、自分はどうなるのかを心配していると、
「ん?ああ、驚かせてしまったかな。コレの手入れを忘れているのを思い出してね。の事は分かった。
迷惑をかけてしまってすまない」
ラウは銃を磨きながらニッコリ笑い、妻のしでかした事を詫びた。
怒りのオーラは消えている。
良かった・・・
ホッとするアスラン。
が、また再び固まることとなった。ラウの言葉で。
「そうそう、この銃、かなりの威力だそうだ。いずれ君達にも支給されるだろう。その時まで生き残っていられればいいな?」
笑顔で話すラウの仮面は妖しく光っている。
まだ怒ってる・・・
このままでは危険だ。どうする・・・
必死に考えていると、シュンっとドアが開き、が入ってきた。
良いタイミングだ!
「あっ、さん。では隊長、私はこれで失礼しても?」
夫婦二人で話したいだろう。自分は邪魔なはず!出て行くなら今しかない!
アスランが申し出ると、ラウは「ああ、下がりたまえ」と言ってくれた。
読みどおり、夫婦で話したいらしい。
アスラン、何とか生き残ることに成功。
喜びを噛み締めながら、
「はっ。失礼します!」
来た時と同じようにビシっと敬礼し、足早に部屋を出た。
今日は体調が悪いと言って訓練をサボろう。心身共に休みを・・・
アスランは胃を押さえながら私室へ急ぐ。
もう今日は寝たい。
アスランが出て行った後
「・・・・・」
無言で入室してきた、夫に言葉をかけずにベッドへ向かうと、
ボフッ
背を向け横になってしまった。
アスランは安全株だと思って部屋に押しかけたのだが、やはり気になって眠れなかったのだ。
夫の気配に気を配りながら、シーツに包まり目を閉じる。
「(ラウ、アスランと何を話してたんだろ・・・)」
考えていると、ラウが側に来る気配を感じた。
「(・・・・・)」
気付かぬフリをしていると、ギシッと音を立てベッドが少し沈んだ。
ラウが腰掛けたのだ。
甘えつきたい衝動を抑え目を閉じたままでいると、
「・・・」
大好きな優しい声で名前を呼ばた。
いつものラウだ・・・
そっと目を開け後ろを見ると、仮面を外しいつも以上に優しい微笑みを浮かべた夫がいた。
怒気は少しも感じられない。
「ラウっ」
嬉しさに我慢できなくなったは、ゴロリと転がり夫のほうを向くと、ガシっとラウの腰にしがみついた。
すりすりと擦り寄ると、大きな暖かい手で頭を撫でられた。
「仕事が思うように進まず、つい八つ当たりをしてしまった。すまない」
擦り寄り甘えるにラウは昨夜のことを詫びた。
大人気なく八つ当たりをしてしまってすまない。と。
謝罪を聞いたも大粒の涙を目に浮かべ、
「っラウ・・・私こそごめんなさいっ!・・・いくら辛かったからって・・・アスランなんかと一緒に寝て!
でもっ、でもね、何もなかったよ!」
夫以外の男と一夜を共にしたことを謝罪した。
アスランなんか・・・という暴言付で。
「もういい、分かっている」
ラウはを起き上がらせると、唇で涙を拭ってやった。
幸せ感が押し寄せる。
「ラウ、大好き!」
「私も、だ。では少し眠ろうか?昨夜はずっと起きていたのだろう?」
そう言うとラウはを抱え、横たわった。
今日も足つきには追いつけそうにない。休んでも大丈夫だろう。という判断。
側にいてやりたいのもある。
「おやすみ」
ニッコリ微笑むと、ラウは部屋の明かりを消した。
「おやすみなさいっ」
はラウに擦り寄り、頬にチュッと口付け目を閉じた。
少し時間がかかったが、望んでいたようになった。
愛する夫と二人きり、触れ合い温もりを感じながらの就寝。
やはり二人は熱かった。
はいっ。この物語はここまでです。
久々のクルーゼ隊長ドリーム、お楽しみいただけましたでしょうか?
今回のこのドリームは、50000hit感謝!ありがとうございます!という気持ちを込め、皆様に捧げさせていただきたいと思います^^
少しでも楽しい思いをしていただけたらv
それでは、
これからも頑張っていきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。
失礼します。
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