「ん、ちょっと……ね」


ドアを叩いていた元気は何処へやら?
は部屋に入るなりしょんぼりとベッドに腰掛けて俯いてしまった。
らしくない。


さん?何か……」


心配したアスランはの隣にそっと腰掛けた。
その瞬間――





「アスラン!」



ガバッ



「はあ!?え゛っ、ちょっ、ちょっと!」


突然何なんだ!?
アスランはわけが分からず混乱するばかり。
は絞め殺す気ですか?という程の力で抱きついてきているし。
一体何がどうしたのか全く分からない。
自分に抱きついているの両肩を抱いて慌てるばかり。


さん、一体どうしたんですか?何が」
「ラウがね……」


隊長が?何だ?


「ラウが……」
「隊長が?」
「う、うっ……浮気をっ」


そこまで言っては泣き出してしまった。
夫が浮気をした。
そう言って泣き出した。


「まさかっ……そんな」


アスランは固まった。
あの隊長が浮気だなんて、信じられない。


「何かの間違いではないんですか?」


相手は女性。しかも泣いている。
アスランはの眩しい程の金髪を優しく撫で、親指で目尻に溜まった涙を拭った。
安心させるように、落ち着かせるように微笑みながら。



いつも滅茶苦茶なさんも、こんな時は可愛らしい。
そんな風に思ったその時―――





ガー





「……」

「……」

「あ……」


バッドタイミング。
何故に今頃来るのか?
来るならもっと早く来て欲しかった。
実は何処かで監視しながらこの時を待っていたのでは?
それでもってきっと、妻に手を出した云々の理由で懲罰が与えられるのだ。
そんな考えが浮かんでしまう。
もう嫌。
アスランはを離し、項垂れた。


「撃つなり宇宙に放り投げるなりしてください」


好きにすればいい。
疲れた。
そんな事を思いながら俯き黙っていると―


、話したい事がある」

「貴方の話なんて聞きたくない」

「そう言うな。悪い話ではない」


アスランは存在を無視された。
嬉しいような悲しいような腹立たしいような。
複雑な気持ちを抱え、アスランは「失礼します」とクルーゼ夫妻を残して部屋を出て行った。





―アスランが退室した後の部屋―





隣り合って座っている夫妻。


、こっちを」
「いやよ」


自分の方を向いて欲しい。
そう言う夫の言葉に拒絶の言葉を返す妻。


「言い訳なんて聞きたくないの」
「ふむ……困ったな」


話が出来ない。
ならば仕方がない。
実力行使。



「んん!」


ラウはの頬を包み込むと、少々強引に唇を重ねた。
唇を舐めとり口を少しだけ開かせると、そこから歯列をなぞり口内へと舌を侵入させる。


「ん、は、むぅ……ん」


の体から次第に力が抜けてくる。
そうなればラウの勝ち。
話も出来るというもの。


?」


唇をツイと放し問いかけるが、返事は返ってこない。
くったりと身をラウの体に預けている。
聞いてくれそうだ。


、君は何か誤解をしているようだが……私は君に疑われるような行動をした覚えはない」


トロンとした瞳で大人しくしているに優しく語り掛ける。
すると、小さな声で問いが帰ってきた。


「軍服の朱は?」


軍服についていた、自分が使っている物ではない朱。
ルージュ。
あれは何?


「朱?……ああ、もしかしたらあの時かな」
「あの時?」


不安そうにラウを見上げる
なんだろう?
女性兵に迫られたとか?
嫌な考えばかりが浮かぶ。
夫は泣きそうな妻を安心させるように話す。


「多分、ブリッジで女性兵にぶつかった時についたのだろう」


私室ではないので仮面は外せないが、声で分かってくれるはずだ。
柔らかな金髪に指を絡めながら話してやると、はようやく安堵の表情を見せた。


「そう。そうだったの……ラウ、いつもふよふよ浮いているものね」


たまに何かの拍子にぶつかってもおかしくはない。
それなのに、自分ときたら……。


「ごめんなさい。私―」
「気にすることはないさ。どれだけ私を愛してくれているのかが分かって嬉しかったからね」
「ラウ……」


すっかり仲直りをした二人。
アスランの部屋でイチャイチャとくっ付いている。
今日はこのままここで休む気かもしれない。





遅すぎで申し訳ありません><。やっと完成です。
こちらは少しだけ甘く……なっていなかったらすみません。
と、読んで下さりありがとうございました^^



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