STORM (後編)
「私……
私っ……
ザラを殺すわ!!」
夫の懐から出した銃をジャキッとパトリックに向け叫ぶ。
目を見開くアスラン。父のピンチ。
パトリックは、何をっ。と慌てて警備兵を呼ぶ。
数秒後……
ドヤドヤドカドカ
「議長!」
銃を装備した兵が数名駆けつけてきた。
「パトリック・ザラ……覚悟!」
警備兵達に構わず銃の引き金に指をかける。
ラウは止めない。
止めたのは……
「さん!!」
アスラン。
なんて事をするんです!と、に飛び掛った。
このままでは撃たれてしまう。
最高評議会議長に銃を向け、覚悟!なんて言ったら、父よりも先にが撃たれる。
そう思って行動したのに……
「何するのよアスラン!邪魔しないで!撃つのよ、パトリック・ザラを!」
乱心したは撃つと言ってきかない。
そんな事を言ってはっ!
アスランは必死でを止める。
非常時なので腕を捻り上げて銃を奪い、ガシッと抱きしめて動きを封じる。
そして、落ち着いて下さい!なんて言っていると……
ラウがポンポンとアスランの肩を叩いた。
「何ですか!って、隊長っ」
アスランはまた目を見開く。
ラウに銃を突きつけられたから。
何故……
答えは一つ。
を抱きしめているから。
「あ…父っ、ぃやっ、ぎ、議長!」
助けて下さい。
父を顧みるけれど……
「なっ、何んだ貴様ら!!」
父上っ、あなたもですか!
警備兵達に銃を突きつけられている父、パトリック。
警備兵達はの味方だった。
後で待ち受けている処分より、憧れの少女を選んだ兵士達。
国やトップを守る者としては失格だが、追っかけファンとしては合格である。
さて、夫妻の恐ろしさをよく知っているアスランは……
「な、なかった事になりませんか?」
を解放し、万歳。
降伏。
アスランに銃を突きつけているラウの答えは……
「ザラ議長のご返答次第、だな」
解放された妻の腰に手を回し、ニヤリと微笑む。
パトリックの返答次第……
「ザラ議長、に謝罪をしていただきたいのですが?」
ラウの冷たい声。
アスランは涙目で父に叫び言う。
「議長!SAY YES!分かったと、謝罪すると言って下さい!私は議長と一緒に硝子の棺に並びたくはありません!」
ワンコの目で縋るように言う。
どうする?パトリック。
答えは……
「ぐ、うぅ……」
まだ謝罪を躊躇っている。
夫の腰に絡みついていたは……
「そう、嫌なの」
低く呟き、ニコッ。と警備兵に微笑みかけた。
そして、一言。
「やっておしまい!」
ジャキッ
兵達は銃を構え直し、狙いを定める。
ターゲットロックオン、議長を殺す。
兵達の指が銃の引き金にかかる。
終わった!と、アスランが目を閉じた瞬間……
「わっ、悪かった!」
パトリックの口から謝罪の言葉が飛び出た。
やっと、やっと最高評議会議長の座を手に入れたのだ!こんな所でこんな奴らに殺られてたまるか!
という気持ちが屈辱に勝ったようだ。
「…………」
静まり返る室内。
はジィーっとパトリックを見つめた後、
「ザラ家のお抱えシェフが作るフルコース」
と一言。
ザラ家お抱えのシェフが作る最高級料理。
一度味わったら忘れられない味。
の目が、「分かってますよね?議長閣下?」と言っている。
パトリックは、「分かった!分かったから銃を下ろさせろ!」と目で訴える。
数分の沈黙後……
「銃を下ろしなさい。もう行っていいわ。ありがと」
は笑顔で兵達に退室を命じた。
命令を受けた兵達は敬礼をし、幸せそうな顔で去っていった。
ラウもアスランに突きつけていた銃を仕舞う。
…………
助かった。
ザラ親子はホッと息をつく。
クルーゼ夫妻は……
「ふふぅ〜。じゃっ、議長閣下、今夜7時に……」
「失礼します」
夜の約束を確認した後、とても眩しい笑顔を見せて帰っていった。
幸せそうに寄り添いながら……
残ったザラ親子……
「っふー……」
緊張が解けたアスランは思わず床にへたり込んだ。
何だってこんな……。
転属してやっとあの夫妻から逃げる事が出来たと思っていたのに……。
心の中で繰り返していると……
「アスラン」
父、パトリックに呼ばれた。
のろのろと視線を向けると、なんと父も同じように床にへたり込んでいた。
「……父、上……」
「アスラン……」
生きてるって素晴らしい。
恐怖の後なせいかこの後数時間、パトリックは気味が悪くなってしまうくらい優しかったという。
嵐のような少女は一組の親子の距離を縮めた。
何をしに来たのか?という謎を湧かせたが、たしかに親子の距離を縮めた。
長くなってしまったので前編・後編にわけました><。
スッキリ短く完結する物って難しい……。どうすれば良いのか(涙)
悩みながら失礼します。読んで下さってありがとうございました。
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