考えていると―――



「あんっ、残念だわ。色々と聞きたいこともあったのに……まあ良いわ。ではね」



カルミアはをチラリと見、鏡を抜けて帰っていった。


「かっ、鏡が……あの人、どっか行っちゃった」

「格上の吸血鬼が使える技だ。鏡を抜けて自分の城に戻ったのだろう」


ロブノールは不思議に思ってペタリと鏡を触れていたにそう言うと、カチャリと棚からティーセットを取り出した。



ティータイムらしい。



カップが三つあるところを見ると、どうやら自分にも淹れてくれるようだと思った。



あと一つは誰の?

ううん、それより謝らなくちゃ。

勝手にお部屋に入ったこと。



「ロブノールさん」

「敬称はいらん。つけたければ勝手にすればいいが。話しかたも気にするな。あの二人にも」

「あ、うん、ありがとう。でね、そのー、ごめんなさい」

「何かしたのか?」

「勝手に貴方のお部屋に入っちゃって……」

「そんなことか。気にしなくていい。入られて困るようなことはない」

「そうなんだ……」


そういう問題か?とも思ったが、怒られなかったので良しとしよう。


少しだけホッとした。


そうしたら、どうしていいか分からなくなってしまった。



ロブノール、ちょっと話しかけ難いなあ。



そんな事を思っていたら―――


「座ったらどうだ?」

「え?」

「まさか立ったまま茶を飲む気ではないだろう?」

「え、あ、うんっ」


席を勧められた。


どうもまだ少しぎこちない。


勧められるまま黙ってちょこんと座る。



綺麗……



ロブノールの優雅な手つきを見ていたら―――



「いたいた、ここか」



ノック、返事の後、アウインが部屋に入ってきた。


見つけたー。などと言いながら嬉しそうに。


ロブノールはアウインの登場に合わせたかのようにコポコポとカップに紅茶を注ぎいれ、出してくれた。


「良い香!それに……美味しい!」

「はは、そうだろう?ロブノールの淹れる紅茶は絶品だから。ああー、ケーキを持ってくれば良かった」

「――アウイン、何の用だったんだ?」


雑談をしに来たわけではないだろう。


ロブノールはそう目で伝えている。


アウインはポンと手を叩き、そうそう!と話し出した。


「ユークからが起きて徘徊しているって聞いたからさ、きっと退屈しているんだろうなと思って探してたんだ」


心音を辿って探すなんて、自分にはまだまだ出来ないから手間取った。


苦笑して見せるアウイン。


「そうか」


ロブノールは言葉少なにカップに口を付ける。


「……少し早かったな」

「え?」

「ああ、独り言だと思う」

「そ、そう」


普通に喋って欲しいのにな。


自分から喋るしかない。


アウイン相手に。


「そうそう、さっきとっても綺麗な人に会ったの。ちょっと高圧的で怖かったけど、すっごい美人だったわ」

「……もしかして、それって」

「ロブノールが"カルミア"って呼んでたから、カルミアさんね」


無邪気に話すに、アウインは青くなっている。


自分やユークレースを可愛がってくれてはいるけれど……


カルミアは吸血鬼達の主的な存在。


自分達格下の吸血鬼など謁見することなどは到底叶わず、お名を耳にすることすら許されない王の代行。


恐ろしい存在なのだ。


「そう、カルミア様がいらしてたんだ……」


引きつった笑顔のアウインと涼しい顔のロブノール。


には少し分からない。


「カルミアさんって、どういう人なの?その、ロブノールとの関係とか……」


あまり口にしたくないという顔のアウインに代わり、口を開いたのはロブノール。


「お前が感じたままの女だ。役目は高慢で傲慢、身勝手な王の代行。私との関係は特に何もない」

「そう、そうなんだ」


特に関係はない……特別な関係ではない。


はホッと胸をなでおろした。


何故だか分からないけれど、特別な関係でなくて良かったと思った。


「あ、そうそう王様。ちょっと嫌な感じね。カルミアさんも大変よね」

「さあ、それはどうだろう。どちらもあまり変わらない」


ロブノール、二人のこと好きじゃないんだ。


は美味しい紅茶を飲みながらそう思った。


そして疑問が一つわいた。


「ん?あれっ?代行ってことは、王様何かあったの?」


何かあって自分が動けないから任せているのよね?


何があったのだろう。


ロブノールに訊くと―


「特に何も。言ったろう?身勝手だと。300年ほど前だったか……退屈したから、という理由だけで眠ってしまった」

「ちょっ、寝ちゃったって、王様……」


眠っているだけだと返された。


拍子抜け。


アウインはというと、青ざめた顔で紅茶を飲み干すとロブノールとに挨拶をして逃げるように退室していった。


自分には恐ろしい会話でついていけない。


ロブノールが大丈夫なのは彼の格がその王と大差ないから。


が大丈夫なのは何も知らないから。


格下で知っている身の自分は――いられない。


「あ、アウイン……。忙しいのかな?私を探してくれていたはずなのに」


キョトンとしてしまう。


まあ、行ってしまったものは仕方がない。


そうだ、もっと疑問に思った事を聞いてみよう。


「ねえ、高慢で傲慢、身勝手な王様って他にもあるんでしょ?」


気になる。


どんな人物なのか。


ロブノールは聞かれた後、少しの間を置いて口を開いた。



「……人間だけでなく吸血鬼達にとっても恐怖の対象」



そして――





「私を吸血鬼にした張本人っ」





吐き捨てるように言ったロブノールの表情は険しい。


カップが割れてしまいそうなくらいカタカタと音を立てている。


聞かないほうが良かった。


「あの、ごめんなさい、私っ」

「いや、謝るのはこちらだ。すまない。どうしても奴の事を話すと心がざわついてしまってな。
濁すことも出来た。それを話したのは私だ。気にしないでくれ」

「うん……」


そう言い、苦しそうに前髪をかき上げたロブノールの仕草にドキッとしてしまったは、罪な娘であろうか?





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八話目はここまでです。ああ、何だか方向が分からなくなってきてしまいました。
どうなることやら……
もうすぐシュルト出せるかな……
次も読んで下さると嬉しいです^^
それでは、ありがとうございましたっ。



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