続・天上裏のディラルさん
「ご、ご近所さんどーのじゃないでしょ今は!ああ、あんた誰よ!?なに人の家に勝手にっ……ふ、不審者ーっ!!」
混乱したは叫ぶ。
父と母に気づいてもらう為に。
肝心の男―
ディラルはあまりの大声に耳を塞いでいる。
眉間に寄せられている皺がさらに深く刻まれているところを見ると、相当不快なのだろう。
「大声コンテストにでも推薦するか」
独り言を発し、よいしょ。とまた押入れの中に戻ろうとする。
正確には天井裏。
「ま、待ちなさいっ、不審者!」
にはディラルが逃げようとしているように見え、逃がすものかと呼び止めた。
かなり勇気のある女性だ
呼び止められたディラルはというと、片足を押入れの上段にかけた格好で――
「私は不審者という名ではない。ディラル・ド・ワルターという立派な名が―」
「名前なんてどうでもいいのよ不審者!」
自己紹介をしようとしたのだが、どうでもいいと言われてしまった。
少し切ない。
そうこうしていると、バタバタと足音が。
娘の悲鳴を聞きつけた父と母だ。
少し遅い気がするが突っ込んではいけない。
「、どうした!?」
「どうしたのちゃん!」
父はゴルフクラブ、5番アイアン(ドラマなどでよく殺人事件時に映るアレ)。
母はトイレ掃除に使う吸盤状のアレ(使用済み)を片手に部屋に突入してきた。
打撃を受けた際、ダメージを受けるのは攻撃力の高いアイアンだが、精神的にくるのは吸盤である。
計算しつくされた武器な気がするが二人は何も考えちゃいない。
ただ目の前にあった物を掴んだだけだ。
「お父さん、お母さん!あいつ、不審者!」
は天井裏に戻ろうとしているディラルを指さし、叫んだ。
両親の視線は指された方に。
ノソノソと押入れに入ろうとしている男、父と母は口々に叫ぶ。
「おい、君!人様の家で何をしているんだ!」
「うちに金目のものなんてないわよ!」
「黙っていないで降りて来なさい!曲者め!」
と―
トンッ
ディラルは素直に降りてきた。
バサリと服を整え、サラリと髪も整える。
そして、今度こそ!と自己紹介などを始めた。
「私はディラル・ド・ワルター。吸血鬼だ。妖しい者ではあるが、怪しい者ではない。
曲者だ不審者だのという名で呼ばれ、窃盗犯呼ばわりされるのは不愉快だ。
それに、ここへはもう三年住んでいる。誰もいなかったのでな」
さらりと不法入居をしていましたと告げるディラルに突っ込める者はいない。
三人ともフリーズしているから。
何分くらいたっただろう?
父が口を開いた。
サラリと。
「そうか、吸血鬼か。ああ、そうかそうか。なら勝手に住み着いていてもおかしくはないな」
いや、かなりおかしいですよ!という顔のを押しのけ、今度は母がノホホンと言い放つ。
「吸血鬼ってそういうものかもしれませんしねえ。それにしても……初めて見たわ〜。ちょっと触っても良いかしら?」
「ああ」
普通なら不審者として警察に突き出すところなのだが、アッサリと吸血鬼と認めた。
しかもかなり好意的。
怖がりもしない。
は頭を抱えて座り込んでしまった。
何故追い出してくれないのよ。
それに吸血鬼だなんて、いるわけないのに信じないでよー!
「疑っている目をしているな。証拠が見たいなら見せてやろう」
泣きそうになっているの隣にいつの間にかディラルが移動してきていた。
ディラルはソッとの顎を取り、目線を合わせ口を開くと―――
「きゃあああっ!?」
の見ている前でディラルの犬歯がスーと伸びたのだ。
そう、まるで映画の中の吸血鬼のように。
「タネも仕掛けもない」
マジシャンのようなことを言いながら、今度は何処からか取り出したナイフで自らの頬を斬りつけた。
スッと朱の線が走るが―
「き、消えた……」
たしかに傷がついたのに。
血が出たのに。
何事もなかったかのように消えたのだ。
傷が。
これでは信じるしかない。
「嘘……じゃない。夢?」
「でもないな」
呆然とする。
のん気な父と母は―
「三年も住んでいたんだ、このまま住んでもらおう」
「そうねえ。今更出て行って貰うのも悪い気がするし」
全然悪くないのだが……
諦めよう。
「ディラルくん、今まで通りこの家で生活してくれたまえ」
「お部屋も余っているし、もし良かったら使ってちょうだい。天井裏じゃ何かと不便でしょ?」
「ああ、生活はそのつもりでいた。部屋は……遮光カーテンを購入したら使わせてもらうとしよう」
「あら、あるわよ。遮光カーテン。今夜から使えるわ。ね、。?」
「ショックを受けているようだ。受け入れるまでそっとしておくが良い」
「そうね」
「、ディラルくんは良い吸血鬼だ、安心しなさい」
「え、ええ……」
悪い吸血鬼ではないだろう。
悪かったら既に吸血されている。
分かってはいるけれど……
「どうだいディラルくん、色々と聞きたい話もあるし、下で飲まないかね?良いウイスキーがあるんだ」
「いただこう」
「じゃあおつまみを用意しないと」
ワイワイガヤガヤ
「何で二人とも……あーん、これからどうなるのよおっ」
は一人ベッドの中で嘆いた。
こうしてディラルはめでたく正式な佐々木家の一員となった。
ディラル、正式に住み着くことが出来ましたv
まだまだヒロインさんとの絡みは少ないけれど、その内……。
それでは、読んで下さってありがとうございました。
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