お買い物と血
ある日の休日。
コンコン
の部屋をノックする音。
ノックしているのはディラルだ。
「はーい?」
「私だ。今日は一日中曇りだと聞いた。暇ならば買い物に付き合って欲しい」
「良いけど?ちょっと待ってて」
何が欲しいんだろ?
は着替えながらディラルが欲している物を考えていた。
一人で行かないで私を誘うってことは、道案内が必要ってこと?
てか私より長く居るディラルが道案内を必要とする?
必要ないわよね。
付き合って欲しいって、何処で何を買うつもりなのかな。
ま、いいか。
数分後
「お待たせっ。で、何処行くの?」
「日本製の棺を買いたいのだが、何処に行ったら買えるのかが分からないのだ。
売っている場所まで案内して欲しい」
日本製の棺って……
「ちょっ、待ってディラル。それは必要な物じゃないわよね?貴方自分の棺持ってるじゃない。
西洋製の、いかにも吸血鬼が入っています!っていう棺を」
「うむ。だが欲しいのだ。あれは素晴らしく画期的だ。何せ蓋を開けずとも顔が見えるのだからな!
小さな扉を開くだけで顔が見える。わざわざ蓋を開け起き上がることなく会話が出来るのだ!素晴らしい!」
「素晴らしくないっ!!」
の声が家に響いた。
ディラルは耳を塞いでいる。
かなりの大声だった。
「あのねー、家を棺だらけにしないでくれるかなあ?」
「だらけ、ではない。今ある物とでたったの二つだ」
「二つも、よ!そんなに要らないでしょ。駄目よ、駄目」
「、考えてみるがいい。私に何か用があった時、扉を開けるだけで良いのだぞ?
それに面白いではないか。こんにちはー。というようで」
「そうね、こんにちはーって、それは面白いけど。って、面白くない!怖いわよ!
良いじゃない、不便してるわけじゃないんだからっ」
駄目だと言って譲らない。
ディラルは眉間の皺をさらに深くする。
「何故そこまで反対する?」
「気分的縁起の問題もあって反対してるのもあるわ」
「縁起?そんな事は気にするな。縁起が悪いと言うのなら既にもう」
「貴方とは別なのっ」
縁起―――
ディラルは吸血鬼。
イコール不死者。
生きているが死んでいるのだ。
そんな者と一緒に住んでいる。
縁起が悪いを通り越した話。
何を今更。というのがディラルの言い分。
「兎に角駄目っ。西洋製だから我慢出来てるのよ。日本製のは止めてっ」
「同じ棺に変わりはないと思うのだが、良いだろう。そこまで反対するのなら諦めよう。
その代わりと言っては何だが……」
「なぁに?可能なことや物なら良いわよ」
「血が欲しい。自分の血では誤魔化せない程に渇いてきている」
「……もしかして、私の血。とか言う?」
「うむ。大丈夫だ。痛くはない。それに、吸血後に私の血を体内に入れない限り吸血鬼になる事はない」
「え、そ、そんなこと言われても……」
棺の話から一気に変わった。
吸血されても吸血鬼化はしない。
ただ吸われただけなら大丈夫。
そうは言われても少し怖い。
は当然迷った。
が、言われてみれば最近のディラルは調子が悪そうで……。
「い、良いわ。少しだけよ?痛くしないでね?」
「分かっている。致死量まで吸おうとは思っていない。静かに、リラックスしろ直ぐに終わる」
許可が下りた時点でディラルはを抱きかかえていた。
そっと、包み込むようにして抱いている。
はドキドキしながら待っている。
怖いのと、違う感情とで胸が少し苦しい。
ディラル、良い匂い…
待っていると、ディラルの長い指が首筋に触れた。
髪をはらったのだ。
は少しだけビクリとしてしまった。
「あのっ、ディラル?」
「、力を抜け。そう、良い子だ―――」
ディラルの犬歯がスーと伸びる。
そして十数秒後―――
「ふぅ。ご馳走様でした」
「えっ?もう終わりっ?」
「うむ。これ以上は貧血を起こすぞ?」
「そ、そう……痛くなかったけど、傷はある?」
「少しな。浅いものだ、直ぐに塞がる」
痛くなかったのが不思議。
は鏡で傷跡を見ながら不思議がっている。
「蚊みたいなもんね?」
「蚊などと同一視されたくはないが、そんなものだ」
ディラルは満足気にしている。
棺はもういいようだ。
「さて、と……せっかくだ、散歩にでも出るか?」
「んっ。そうね。イチゴパフェが食べたいな〜」
「血の礼だ、食べるがいい」
ディラルの奢りでイチゴパフェ。
は嬉しそうに仕度を始めた。
ディラルに吸血されちゃった。
冷たい唇と舌の感触……
まだ残っている。
何か、いけないことをされたみたい。
秘密めいていてちょっとワクワク。
「おいていくぞ?」
「待って待って」
二人で仲良くお出かけだ。
の足取りは軽い。
とディラルの言い合い&お出かけでしたv
一気に距離が縮まりました。
これから二人はどうなることやら。
書いている自分にも分かりませんっ(をい)
では、読んで下さってありがとうございました。
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