Holy night 4





クリスマスイブ、夕方。





「ジングルベルジングルベル」


呪文ではない。
ディラルがパーティーの準備を手伝いながら歌っているのだ。
父母と共に飾りをつけたりしてどこかご機嫌。


「……」


ツリーに飾りつけをしているは眉間に皺を寄せながら無言で作業をしている。
どうしても腑に落ちない。



一時間弱―

飾りつけは直ぐに終わった。
ツリーも綺麗に飾られ、点灯させるのみ。
後は予約していたケーキを買いに行くだけだ。


「は〜。今年はディラルくんがいたおかげで早く済んだわね〜」
「ああ、ディラルくんは本当に良い家族だ」
「ふふん。では、そろそろ……」
「そうねっ」
、ディラルくんとケーキを買ってきなさい。帰ってくる頃には食事が出来あがっているから」
「……はぁい」


何か言いたげな、ディラルとケーキを買いに外へ。
街に出ると、華やかに飾り立てられたツリー、美しいイルミネーション、恋人達というお決まりの光景が目に入って来た。


「ふむ、今年も見事なものだ」


ディラルは珍しく微笑んでいる。
そこでは初めて口を開いた。


「あのさぁっ」
「何だ?」
「貴方、吸血鬼なのよね?」
「ああ、いかにも」
「今日はクリスマスイブよね?明日はクリスマスよね」
「そうだが、それがどうした?」
「吸血鬼の貴方が聖誕祭を祝っちゃっていいわけ!?」


吸血鬼―
神に逆らいし者。
そんな者が聖誕祭に参加していて良いのか。
そう思ったのだが、ディラルは余裕の笑み。
モノクルをいじりながら答えた。


「問題ない。祝うつもりなどないからな。ただパーティーを楽しむのみ。美しい飾りにケーキにチキン、最高ではないか!
贅沢を言うのなら七面鳥が良いのだがな、チキンでも良い」
「ちょっ、ディラル、貴方……」


は思い切り脱力した。
何て日本人的考え方なのだろう。



そんなやり取りをしていて気づけば予約したケーキ屋の前。



「予約していた佐々木です」
「はい、佐々木・ディラル・ド・ワルター様ですね」
「はぁっ!?あ、いえ、はい」


予約したのは貴方だったのかという顔でディラルを睨む
ディラルは睨みを気にせずケーキを受け取り代金を支払っている。
どこからどう見ても妙な外国人。
吸血鬼には見えない。
でも……本物の吸血鬼。


「なんかさぁ、貴方に仲間とかいたらどんな顔するのかしらね。吸血鬼がクリスマスにケーキ買ったりとかしててさ」
「何だ?私が裏切り者扱いされないか心配なのか?」
「まあ、それもあるけど。気になっちゃう」
「心配するな。ほら、あそこで風船を配っているサンタクロース、あれは私の知り合いの吸血鬼だ」
「はあっ!?」


驚いたがディラルの指さす方を見ると、確かにミニスカサンタクロースの格好をして風船を配っている若い女性がいた。
本当かどうか、はディラルを引っ張りミニスカサンタの目の前まで行く。
すると……


「あれっ、ディラルでねぇの!」
「久しいな、メアリー」
「久すぶりどころじゃねって」


な、なんで訛ってるの?
は固まっている。
何処から来たの、何処で日本語覚えたの、この綺麗な女性は。
色々と固まっているうちに話は済んだらしい。
ディラルに突付かれた。


、行くぞ」
「え、ええ」
「やったらめいこい子だで、持ってけ」


去り際、は女性から風船を貰った。
何だか変な気分。
映画の中の吸血鬼しか知らなかったには妙なショックがあった。
が、いい。
気にしても仕方がない。


「ねえディラル、ちょっとお願いしてもいい?」
「何だ?突然」
「えへへ〜」


ちょっと恋人気分を味わいたくなった。
はディラルの腕に絡み付く。
ディラルもまんざらでもない様子。


二人は寄り添い家へと向かう。


「あっ、雪!」
「ほう、これはまた」


天からのプレゼントだろうか。
漆黒の夜空から真っ白な結晶が舞い降りてくる。
何とも美しい。


「素敵ね、イブの夜に」
「そうだな」


暖かい気持ちで二人は家へ。





Merry Christmas





とディラルのクリスマスイブv
また少し二人の距離が縮まりました^^
これからもどんどん……v
腕も組んだし次はどうだろう。
それでは、読んでくださってありがとうございました^^



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