激突!キュラスさん






風が突き刺さるように冷たく感じられる夜。
一人の男が達の住む街にやって来た。


「ディラル、この僕の手でお前を……ふふっ、ふふふっ。
ふはーっはっはっはっ、あ゛っ!?あ゛あ゛あ゛ーーーーーっ!!」


パッパー!
ドンッ!
キュルルルルルッ!


「歩道橋の上から人が落ちたぞー!」
「飛び降りか!?」
「トラックに撥ねられたわ!」


突然の事故に辺りは騒然となった。
飛び降りだ!と騒ぎながら、大勢の人々が男の周りに集まってくる。


「違っ……風……」


ダクダクと血を流しながら周囲に「違う」と訴える男。
カッコつけて柵(?)に上っていたら強風に煽られてバランスを崩し、そのまま転落してしまった。
投身自殺を図ったわけではない。


「くそ……」

「おおーっ!」
「立った!」
「嘘でしょ!?」


血まみれの男はヨロヨロ立ち上がると、ゾンビウォークで事故現場から立ち去ろうとした。
その時―


「危ないっ!」
「避けろー!」

「???」


ガッシャーンッ!
ガコーンッ!
グアングアングアン……


工事中のビルの上から落ちた鉄筋が見事に男の上に落ちた。
狙ったように直撃した。


「きゃーっ!」
「なんて運の悪い奴だ!」

「ちょ……消え……前、に……カレー……食……」

「おい見ろ!まだ生きてるぞ!」
「救急車はまだか!?」
「あいつは不死身か!?」


辺りは先ほどの比にならないくらいパニックに陥っている。
悲鳴や怒声が響く。
その道路を建物挟んだ向こう側で―





「もうっ、待ってよ!」
「相変わらず歩くのが遅いな」
「なっ!身長差を考えなさいよ、身長差を!それに、女の子に合わせるのが紳士ってもんじゃないのっ」


ディラルとは仲良く家を目指していた。
買い物袋をプラプラさせながら。
今夜の夕食はカレー。


「―ねえ、なんか向こう側騒がしくない?」
「事故でも発生したのだろう」
「見に行ってみる?」
「必要ない。迷惑になるだけだ。それに、私は空腹なのだ。早く帰ってカレーを作って貰いたい」
「はいはい。ったく、カレー好きな吸血鬼なんて、アンタくらいなもんよね」
「いいや、私だけではない。私の友もカレー好きだ」
「友達?メアリーさん?」
「違う。男だ。あいつは、キュラスは……」
「?」


は急に黙ったディラルの顔を見上げた。
気のせいか、少し寂しそうな目に見える。


「ディラル?」
「キュラスはな」
「うん」


何かあったんだろうな。
きっと辛い思い出なのだろう。
はそう思いながら俯き、続く言葉に耳を傾ける。


「キュラスは―」


「う゛あ゛あ゛ーーーっ!!!」


「!?」


ドシャッ!


「……こんな奴だ」
「は、はい?」


突然どこからともなく飛ばされてきた男。
(気合で立ち上がったところにダンプが突っ込んできて撥ねられた。運が悪い奴である)
ディラルはこの男がキュラスだと言う。


「……なんていうか」
「悲惨だな。相変わらず」


ズタボロなんていうレベルではない。
普通の女の子なら気を失ってしまうような有様だ。
が、は大丈夫。
スプラッター映画も平気なクチ。
そっと男に近づき、大丈夫ですか?などと声をかけてみたり。


「うっ……助け……あ!?」


に声をかけられたキュラスは、助けを求めて手を伸ばしたところで気が付いた。
ターゲットが、ディラルがいる事に。


「久しぶりだな。元気そうでなによりだ」


ちっとも元気そうに見えないキュラスに微笑みながら手を差し伸べるディラル。
微妙すぎる再会。



続く





キュラス登場っ。お馬鹿系吸血鬼が欲しい。と思い、作りました。
可愛い奴になってくれると嬉しいです^^
それでは、読んで下さってありがとうございました*^^*



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