激突!キュラスさん2
「久しぶりだな。元気そうでなによりだ」
懐かしい声。
探し回ってやっと見つけた奴の声。
忘れたくても忘れられない奴の声。
キュラスは震えながら必死に手を伸ばし、ガシッと差し伸べられた手を掴んだ。
そして―――
「み゛っ……」
ばたっ。
「み゛っ」という、踏まれてしまった蝉のような台詞とともに意識を失った。
多分、「見つけた」と言いたかったのだろう。
「えっ、ちょっ」
は、どうしよう!?と少し慌てている。
気を失っているキュラスはボロボロで。
放置して帰ったら大変な騒ぎになるだろう。
きっと翌朝、『集団リンチ事件発生。目撃者を探しています』などという看板が立てられるだろう。
嫌でも放っておけない。
もし誰かがこの現場を見ていたら、自分達が疑われて面倒な事になるかもしれないから。
「ねえ、ディラル……」
「ふむ。見なかったことには出来そうにないな。仕方がない。、拾って帰るぞ」
「やっぱりそうなるのね」
は頭を抱えたい気持ちを抑えながら歩き出した。
ディラルはキュラスをズリズリと引きずりながら前を歩いている。
背負ったりしないところが彼らしい。
二時間後―――
「おかわりーっ!」
「はいはい、沢山お食べなさいね」
「うんうん、男の子はいっぱい食べたほうが良い」
カレーのいい香で意識を取り戻したキュラスは、ちゃっかり座って夕食をご馳走になっている。
ディラルとの戦いは少しの間お預けだ。
「んまーいっ」
キュラスはご機嫌。
父と母はニコニコと笑って歓迎してくれた。
歓迎してくれただけではない。
家に住んでも良いとまで言った。
ディラルの時と同じように。
「どうなってるのよ、うちの親は!」
ただ一人、だけが不満そうにグッとスプーンを握って震えている。
見ず知らずの男を住まわせるなんて、どう考えてもおかしい。
変なのに、変だと思わない者だらけ。
どうして?理解できない。
悶々と思っていたら、皆の視線が集まった。
「、冷めるぞ?食べないのか?」
「どうした?食べないのなら僕が食べてやるぞ?」
「、具合でも悪いの?」
「何か嫌なことでもあったのか?」
ポリポリとラッキョウを食べながら聞くディラル。
スプーンを銜えながら目を光らせるキュラス。
普通にの体調を心配をする母。
何かあったのかと聞く父。
皆、色々とおかしいとは思っていない。
「……なんでもない」
もしかしたら、おかしいのは私なのかもしれない。
そんなことを思いながらは深い溜息をついた。
―――このお話はここまでです。
カレー好き吸血鬼、無事に住み付き成功!次回は吸血鬼ハンター(人間)が登場する予定。
それでは、読んで下さってありがとうございました。
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