道士が旅立って一ヶ月・・・
接触
風が冷たくなり始める夕暮れ、
「あ゛ーーーーーーっ!」
夕食の準備をしようと台所に立ったは大切な事に気付き叫んだ。
その叫びは、一大事です!という感じがしすぎるほどのもの。
こんな声を上げたら・・・
『っ!!』
聖が焦った顔で飛んでくる。
の叫びを聞き、飛び起きたのだろう。髪がおろされたまま。
どっからどう見ても寝起きです!という感じ。最近の聖は昼間、用事がないと棺の中で寝ている。
夜になると出てくるのだ。規則正しいキョンシー生活。
さてさて、何事かと飛んできた聖だが、に何かあったようには見えない。
『?どうした?』
一体何がどうしたのだろう?に聞いてみる。と、
「・・・忘れちゃったの・・・山菜採ってくるの」
泣きそうな声で、夕食に使う山菜採ってくるの忘れた。と返してきた。
脱力するに十分な言葉。普通なら、なんだよーそんなことで大声出すなよな。という言葉が出てくるところ。
が、聖はお人好し。大好き。
『そっか。、そんな悲しそうな顔しないで?今から採ってきてあげるよ、山菜。俺なら暗くても見えるから』
聖はの両肩を抱きながらニッコリ微笑み言うと、「じゃあ、行ってくるね」ヒューンと飛んで山へと出かけていった。
必要な山菜の名も聞かずに。
「あ、聖!・・・行っちゃった。使う山菜、分かるかなぁ?」
山中
いつもが山菜を採っている場所へとやって来た聖。
『たしかこの辺りだったよな、山菜いっぱいあるの、って、どの山菜が必要なんだ?・・・聞いてくるの忘れた』
大切な事を聞き忘れ、ガクっとうな垂れる。今から戻って聞いたら・・・
『カッコ悪いよなぁ』
頼りにならない男。なんて思われたら嫌だし、よし、かたっぱしから揃えていこう!全種類採ってけば間違いなしv
というわけで聖、しゃがみ込むと、せっせと山菜をとりだした。
『採りすぎは良くないんだよな、根こそぎ持ってったら次生えてこなくなっちゃうし』
独り言を発しながら聖は夢中で山菜をとる。
謎の男二人に狙われていると気付かずに・・・。
「獲物発見、だな」
「ええ。状態は綺麗ですね、高く売れますよ」
「ああ、顔もマダム好みだしな。さて、どうやって捕まえるか?」
謎の男二人。一人は道士、もう一人は弟子のよう。
この二人、聖を捕まえ、どこぞのキョンシーマニアの奥様に売り飛ばすつもりだ。
「息を止めても歩く音で気付かれてしまいますし、武器を使うのも・・・傷をつけると値が下がりますし」
「ふ、ん。毎度毎度面倒だな。よし決めた。顔に傷がなければ問題ないだろ?動かないようにしてくれる」
道士、やることが決まるや桃剣を構え聖に突進していく。
ズザザザザザッ!
『!?』
今まで山菜採りに夢中になっていて気配に気付かなかった聖。
何だ?!と思い振り返った時には自分めがけて桃剣が・・・
ザクッ
「ちっ、避けやがった!」
「あー、おしいですね!腕をかすっただけか」
道士&弟子は忌々しげに吐き捨てる。
『っ!』
何とか胸部への攻撃を避けた聖は、右腕を押さえながら謎の男達を睨む。
普通の刃物ならばどうという事はない。切れたり刺さったりなどすることはない。
が、桃剣はキョンシーにサックリ刺さる。大ダメージを与えることができる。まともに刺さったらヤバイ。
聖は男達を睨んだまま考える。
この道士殺気が凄い・・・話して分かるタイプじゃないな。逃げないと!
戦ってもいいが、戦えば殺してしまう率が高い。
逃げるが一番。
「次はしとめる」
「顔は駄目ですよ、顔は!」
「わかっている!」
二人が言いあっている今がチャンス!
聖はヒュッと浮かび上がり、飛んでその場を逃れようとしたが、
「逃がすかぁ!」
『っ!』
瞬時に反応した道士の投げた札によって飛行を阻まれ、ドサァッと地面に落ちてしまった。
くそっ。もう一回・・・ムクリと起き上がり再び飛ぼうとする聖。
道士はそんな聖を蹴り倒すと、ゲシッと踏みつけ、「まったく、このキョンシーめっ。少しは大人しくしていろ!」
と、聖の右腕の傷にもち米を擦り込んだ。
じゅううぅぅぅ。という肌が焼ける嫌な音と、『ぅあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!』苦痛に満ちた叫びが辺りに響く。
「ぅへぇ、キョンシーも痛いんですかねぇ?」
ちょっと可哀相かな。と思った弟子。痛いのかな?と道士に言う。あまりいたぶるのはちょっと。
が、道士は、「死人が痛がるわけない。気のせいだ。さて、とどめといこうか」
可哀相も何もあるか。相手は人間じゃない。と、笑みを浮かべながら桃剣を構える。
そして・・・
ドカッ!!
聖の腹に深々と桃剣を突き刺した。
『がぁっ、はっ・・・う、あ゛あ゛っ・・・あ゛う゛っ!あ゛あ゛あ゛うっ・・がぁっ!』
声を上げずにはいられない。
聖はあまりの激痛にガバァッと起き上がると、
ドンッ!
道士を力一杯突き飛ばした。
突然のことに防ぐ事が出来ず、吹っ飛ぶ道士。
「ああっ!お師匠!」
弟子は飛ばされた師匠にかけより、助け起こしにかかる。
そのすきに聖は桃剣を腹部から引き抜き、力を振り絞って場を離れた。
帰って、棺の中へ・・・。
傷を癒さないと・・・。
っ・・・。
聖が場を離れて数分後
「お師匠、大丈夫ですか?」
「っつつ、あのキョンシーめっ・・・ぅんっ!?おい、キョンシーは!?」
軽いぴよぴよ状態から回復した道士、キョンシーは何処に消えたのだと弟子に聞く。
久々の上物。逃がせない。
弟子は、あいつはもう諦めましょうよ〜。と言いたい気持ちを抑えて、
「あ、ああ、あっちの方に飛んでいきましたけど」
と聖が飛び去った方向を指差した。
すると道士、「っ、追うぞ!」と鼻息荒く言い放った。
なんとしても手に入れる。売り飛ばせば大金が入る事間違いなしなキョンシーだ。と。
すっかり乗り気でなくなった弟子を引っ掴み立ち上がる。
そして、「行くぞ!」と一歩踏み出したところで・・・
「「!!」」
ドササッ
道士と弟子は急に地面に倒れ動かなくなってしまった。
白目を剥き、口の端からは泡が・・・死んでいる。
ピクリとも動かない。
一瞬で葬られたよう。一体何が起こったのか。
道士達の魂がこの世を去った頃、聖の帰りを待っているは・・・
「聖、遅いなぁ」
椅子に座ってテーブルに肘を付き、まだかなぁ〜と独り言を発している。
もう帰ってきてもいい頃なのに。
迎えに行こうかな・・・と思ったとき、
ガタタッ
聖の棺が置いてある部屋から物音がした。
「なっ、何?」
ビクっとし、立ち上がる。
泥棒?それとも、キョンシー?聖もお師匠様もいないのにどうしよう。
怖い。が、見てこなければ。
はお札と銭剣を握り締め、物音がした部屋へとそっと近づいていく。
扉、壊れてる・・・やだなぁ・・・キョンシーいたらどうしよう・・・
ドキドキしながら中の様子を窺う。と、
「っ、聖!?」
棺の下、聖が倒れているのが目に入った。怪我をしているらしい。
「聖!聖っ、しっかりして!酷いっ、誰がこんなこと!」
は聖に駆け寄り、傷の具合を見る。
はっきり言って、最悪。
「聖っ、ね、返事して?!お願いっ」
『・・・・・』
呼びかけても返事はない。
このままでは・・・。
「どうしよう・・・そうだっ、お線香っ!」
は大慌てで線香をかき集め焚きだす。線香はキョンシーにとって回復アイテム。
他には?後は何が役に立つ?
「思い出せないよぉ!」
パニックになっている、師匠に教わった事が中々思い出せない。
どうすればいいのか。どうすれば聖を救えるのか。
「ごめんね、聖・・・私、何もできないっ・・・どうしよう」
どうしていいか分からず、聖の横に座り込み涙する。
お師匠様ぁ・・・と、弱音を吐いたところでハッ!と思い出した。
お師匠様・・・森を少し走ればお師匠様の先輩、烏道士様の家がある!!
道士様なら聖を助けてくれるはず!
ぐっと拳を握ると、
「聖、待ってて!烏道士様をお呼びしてくるから!助けてもらえるから!だからお願いっ、待っててねっ?」
と言い、バタバタと烏道士の元を目指し走っていった。
6へ
ここまでお疲れ様でした。ちょっと一休み^^; 一話じゃ終わりませんでした(涙)
かなりの遠回り。素直に戻せばいいものを><。なのですが、暴走癖がありまして・・・。
困ったものです--;
と書きながら、「もう誰にも止められはしないさ!」と心は叫んでる。
それでは、次回も宜しくお願い致します。ありがとうございましたv
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