再会3
『!!』
避けられない!
銭剣は聖の胸に突き刺さると思われたが―――
ガシャンッ
チャリン、リン……
どうした事か、銭剣は聖の胸ギリギリのところでピタリと止まると、バラバラになって地に落ちた。
「なにっ!?」
『え、えっ?』
驚愕する羅那。
戸惑う聖。
「俺の術を破った!?馬鹿な!こんなキョンシーに……っ!」
自分の術を破るなどあり得ない。
そう思った羅那だったが、直ぐに思い当たる事が浮かび上がった。
「お前、まさか、奴と関係があるのか?」
奴―――
以前、呪殺の依頼を受けた時、いとも簡単に術を跳ね返してきた道士。
相手側が雇った道士。
力を封じられているとはいえ、俺には魔人の血が流れているのに。
相手はただの人間なはずなのに。
それなのに、いとも簡単に術を弾き返してきた、あの男。
間違いない。
俺の術を跳ね返すなど、そう出来るものではない。
奴しか考えられない。
奴は今、何処かで俺達を見ている。
そして、俺がこのキョンシーを殺すのを阻止した。
そうでなければ説明がつかない!
じっと聖を睨んで黙っている羅那。
しびれを切らした聖は、苛立ちながら声を上げた。
『奴って、誰だよっ!?』
奴と関係があるのか?なんて、突然何なのか。
自分には"奴"が誰のことなのか分からない。
何のことか分からない。
このままでは、かなり気持ちが悪いではないか。
そう、羅那に目で訴える聖。
羅那はそんな聖を見て、小さな溜息をつくと―――
「面倒だな。でもま、良い機会だ。今度は俺が破ってやる!」
から離れ、強力な術を使う体勢をとった。
このキョンシー。
倒して奴に思い知らせてやろう。
お前は所詮人間なのだと、思い知らせてやる!
「悪く思うなよ!?」
羅那が恐ろしいほどの力を聖にぶつけようとした、その時。
「止めて!お願い、羅那!聖を殺さないで!殺すと言うなら私、私っ……」
は、聖を殺すと言うなら自分も死ぬと、手近にあった小刀を喉に突きつけた。
『!?』
「よせっ、!」
こうなっては、羅那は聖をどうすることも出来ない。
が死んでしまっては、また一から出直しになってしまう。
「っ……分かったよ、分かったから、そんな物は捨てるんだ」
『、大丈夫だから、ね?』
「本当?本当に……?」
は羅那の「分かった」という言葉を聞き、小刀をカチャリと落とした。
その次の瞬間、羅那は素早くの側に戻り、結界を張った。
聖が入ってこられないように。
「、あいつは殺さないよ。だから、大人しく俺と一緒に玄陰へ。さあ」
「ちょっ、いやっ、いやよ!離して!」
『を離せ!くそっ!ー!』
結界をバシバシと叩いて焦る聖。
このままでは、が連れ去られてしまう!
「残念だな、キョンシー。劉道士に宜しく伝えてくれ。じゃあ―――なんだ?」
羅那がを連れ去ろうとしたその時、空間が歪み、裂け目から一人の青年が現れた。
綺麗に纏められた赤茶色の髪に、青い瞳の美しい青年。
「残念なのは貴方ですよ、羅那兄上。
翠龍兄上―――魔王陛下は、その娘が玄陰へ立ち入る事を許可なさらなかった。
戻るのなら、お一人で、ですよ」
11へ
―――と、今回はここまでです。
思ったよりも長くなってしまった、羅那登場編。
次回で一応、落ち着く……はず。
予定は未定。
もしかしたら、なんて事も考えられますが、良かったらまたお付き合い下さい。
それでは、今回も読んで下さり、ありがとうございました!
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