クルーゼ隊、温泉計画




就寝時間30分前。突然ブリッジに集められたアスラン・ニコル・イザーク・ディアッカ。
戦闘配備ではないし、何だろう?という皆の疑問を代表・アスランが尋ねる。
「隊長、何かあったんですか?」
こんな時間にクルーゼ隊長が皆をブリッジに集めるなんて、ただ事ではないはず。
四人とも緊張し、クルーゼの言葉を待つ。
静かに振り返ったクルーゼが言った言葉、それは・・・
「明日から三日間、心身共に癒すためプラントの温泉施設に滞在する」
仮面をしているため表情はわからないが、声からして嬉しそうである。
手には施設のパンフレット。
「「「「・・・・・・・・・・」」」」
「ん?どうした?嬉しくないのかね?」
何も言わない隊員達に、首をかしげるクルーゼ。
「た、隊長・・・」
最初に口を開いたのはイザークだった。
「何かね?イザーク」
フルフル震えているイザークを不思議に思いつつ、聞いてみる。
異議を唱えたところで、却下するつもりでいるが・・・
いや、行きたくないなら別にかまわない。自分と「彼女」だけで行けばいい。
本来なら、「彼女」と二人きりで行きたいのだ。
だが、今はそうはいかない。行くには口実が必要な時だ。
だからこういった形をとることにした。
まぁ、何でもいい。「彼女」と楽しめるのなら・・・何をしよう?背中を流してもあげたいものだ・・・
いつのまにか「彼女」との楽しい温泉休暇を想像していたクルーゼだが、イザークの声で現実に戻される。
「何だって急にそんなっ・・・自分達にはそんな所に行ってい・・もがっ!もががっ」
行っている暇などない。そう言いかけたイザークの口を、ディアッカが塞いだ。
「あはは。すいません隊長♪こいつ、嬉しくて興奮してしまったみたいで」
せっかくだ、ゆっくりさせてもらおうじゃないか!と、ディアッカは思ったのだ。
「そうか、そんなに嬉しいか。君たちに喜んでもらえて、私も嬉しいよ」
ひたすら上機嫌なクルーゼ。
ホントは部下のことなんて考えていない。考えているのは「彼女」のことだけ。
そんな上官の心内を知らない部下達。
「たまには、いいのかもな?」
決まったものは仕方ない。という様子で隣のニコルにつぶやくアスラン。
「そうですね。隊長は、僕らの体を気遣って温泉施設に、と言ってくれているのですし」
心の底からクルーゼ隊長を信頼し、尊敬しているニコルはニッコリとアスランに微笑みかけた。
そのやり取りを聞いていたイザーク&ディアッカも、それもそうだな。と、言った。

・・・皆さん騙されてます。
クルーゼ隊長が突然「温泉施設に〜」などと言い出したのは、部下達に休んでもらうためではない。

「さて・・・」
四人はは丸め込んだ。
後は君だけだvなどと思いながらクルーゼはクルリと向きを変えると、通信担当の女性兵の横に着地した。
、君は私と共に行動してもらおう」
クルーゼは身をかがめ、の耳元でいままで皆が聞いたこともない優しい声でそう言った。
吐息が耳にかかるほどの至近距離。
(そう、さっきから出てくる「彼女」とは、この女性通信兵、のことだ。
一週間ほど前、転属されてきた美しき女性。
よく気も利くこの女性に、誰もが惹かれた)

セクハラです!隊長!という突っ込みと、自分は無視ですか!?という悲しみがアデスの中を支配していることにクルーゼは気付かない。
そして、パイロット四人が凄まじい目で自分を睨んでいることにも気付かない。
騙されたことに早くも気付いた四人。

「はっ?・・・あの、どういうことでしょう?」
突然の言葉に戸惑う
無理もない。会話を聞いてはいたが、それは隊長とエースパイロット四人が行くものと思っていた。
ただの平通信兵の自分が、何故ザフト一のクルーゼ隊長と?
事態がよく解らない・・・ちょっとしたパニックだ。
一方、クルーゼの頭の中は・・・
固まっているも可愛いvv今すぐ部屋に連れ帰りたいくらいだ。
転属されてきた当初から、自分の女に・・・と、思っていたのだ。この機会に手に入れる!
と、危ない考えを起こし始めていた。
が、そこはポーカーフェイスのラウ・ル・クルーゼ(仮面のおかげかも)そんなことは悟らせずに話す。
「ふっ。先に告げたとおりだ。明日からの休暇旅行、私と共にいてもらいたい。嫌かね?」
ウットリしてしまうほどの甘美な低音ボイス。
仮面の下はかなりの美形であろうクルーゼ隊長の誘いを、断れる女性が何人いるのだろう?
元々、転属命令が出る前から憧れていたクルーゼ隊長のありがたい言葉、断る理由のない
「いえ、嫌など・・・喜んでご一緒させていただきます///」
何だかよく解らないが、隊長と一緒にいられる!
そう考えがまとまると、とたんに至近距離であることなどにドキドキしてしまう。
顔が熟れたトマトのように朱に染まりきっているのが自分でもよく分かる。
「ふっ。明日が楽しみでならないよ、
くすり、と笑みを漏らしそう言うと、クルーゼは再び隊員達の所に戻った。
はというと・・・
ぷしゅ〜〜〜。
赤面したままほうけている。

「では諸君、明日の朝、7時に集合してくれたまえ。以上、解散!」
と、クルーゼは今日はもういいと告げた。
「「「「はっ!では、失礼します!」」」」
綺麗に四人の声がハモる。
ビシ!っと敬礼を決めると、ブリッジから退室する。
四人とも不満だが、今は口にしないことを決めていた。
明日からの休暇旅行・・・気が抜けない。




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