クルーゼ隊、温泉計画2
朝6時55分・・・ヴェサリウス・ブリッジ・・・
そこには私服姿のラウ・ル・クルーゼ、・、アデスの三人が揃っていた。
「ふむ。後5分だな・・・」
スーツにサングラスという、大人の魅力大爆発な格好のクルーゼが時計を見ながら呟く。
「誰も来る気配がありませんね」
アデスが心配そうに言う。昨夜、ブリッジを去るときの彼らは不満げだった。
ドタキャンでは・・・という考えが嫌でも浮かんでしまう。
彼らが不満げだったのは旅行の事ではないのだが、アデスにはそんなことは分からない。
「そう難しい顔をするな、アデス。まだ5分前ではないか」
別に来たくなければ来なくて良い。むしろ来ないほうが好都合だ・・・と、思っているクルーゼは余裕の表情。
が、ホントに来る気配がない。黙っていたも心配になってきた。
「あのっ、私、通信を入れてみましょうか?」
遠慮がちに申し出る。
上官の話に割り込むのはかなり気を使う。
「いや、必要ない。彼らは軍人だ、決められた時間になれば現れるさ」
ニッコリと微笑みそう告げるクルーゼに、はクラクラしてしまう。
そうこうしているうちに〜
集合時間の7時・・・
「「「・・・・・・・・・・」」」
誰も来ない。
ホントにドタキャンなのであろうか?
「・・・あと1分待って来なければ、我々だけで出発するとしよう」
やった!と、ニヤリとしていたクルーゼだが、あと1分待つことにした。
クルーゼの心の中(何て良い上官なのだろう☆外見も内面も共に良い・・・の心は私の物だな)
クルーゼ隊長、上官としての大きさを示すためではなく、へのポイント稼ぎで待つことにしたようです。
一分後・・・
「時間だ」
クルーゼはどこか嬉しそうにそう言うと、荷物を手に取った。
「どうしたんでしょう?」
心配だが、上官に従わねば・・・もクルーゼに続こうとする。
荷物はクルーゼが持っている。さすが紳士。
「信じられませんな」
まったく・・・という顔をしながらも、荷物を手にするアデス。
と、その時・・・
ドドドッドガッドドドッドドドッ!
物凄い勢いで音が近づいてくるのがわかった。
それが何なのかを、瞬時に判断したクルーゼ。
チッ・・・と、気づかれないよう小さく舌打ちする。
音の正体・・・それは、アスラン達四人が壁などを蹴りながら必死にブリッジを目指している音。
地上と違い、走ることはできない。
数秒後
ガーッ。
扉が開き、四人の私服姿の少年が入ってきた。
息をきらしながら整列すると、
「「「「遅れて申し訳ありません!」」」」
ビシッ!と敬礼する。
「時間に遅れるとは何事だ!それでも赤を着るザフトの軍人っ」
「まぁいいではないか。我らは今日から休暇なのだ」
咎めるアデスを制し、クルーゼはにこやかにそう言った。
内心は違うが。の前だ。
「さすがクルーゼ隊長。心が広い」
の前だからだろ?と思ってはいたが、ゴマをすっておいて損はない。
ディアッカは偽りの尊敬の眼差しをクルーゼに向けた。
「休暇中だからさ。今回だけだぞ。ああ、だが一応遅れた理由は聞いておきたいな。
シャトルへ向かいながらで良い。説明したまえ」
そう言って、クルーゼはブリッジを出て行く。その後ろに、アデス、四人が続く。
シャトルへの道・・・
「で?遅れた理由はなんなのかな?」
少し振り向き、四人の少年に問うクルーゼ。
「それなんですが、隊長!俺の話を聞いて下さい!」
さっきから何かを言いたくてウズウズしているようだったイザークが、真っ先に口を開いた。
「話してみたまえ、イザーク」
四人が揃いも揃って遅れた理由。それが今、イザークの口から説明される・・・
「集合時間に遅れたのは、アスランのせいです!」
やっぱりか。何を言い出すかはだいたい想像できていた。
「ほう。アスランのせいか。だが、それだけでは解らんな。もう少し詳しく話してくれないか?」
さすがのクルーゼも、アスランのせいで遅れた。だけでは事情が解らない。
クルーゼの言葉を聞き、イザークは噛み付いてくるのでは?と思うほどの勢いで話し始めた。
「俺とディアッカ、ニコルは時間に間に合うよう起床し、準備は済んでたんです!
しかし、アスランは時間ぎりぎりになっても準備できていなくて・・・!
何故出来ていないと問い詰めたら、昨夜、解散してからハロを作り始めたため、寝たのは早朝近くだと、
それで起きられなかったのだとぬかしたんです!こいつはっ!」
ここまで言うと、イザークはキッとアスランを睨んだ。
ディアッカも、
「まったく、とんだとばっちりだよね〜。ニコルも同罪さ。
先に行こうと言ったのに、アスランを待ってあげて下さい!なんて言っちゃうもんだから」
と、アスランだけでなく、心優しいニコルまで責める。
ディアッカに責められたニコルは、ムっとした顔をしながらも黙っていた。
ニコルの心の中(僕だって置いて行きたかったですよ!でも、置いて言ったらさんに冷たい男だと思われてしまうから)
本音はニコルも二人と変わらないらしいです。
で、先ほどから責められっぱなしのアスランは・・・フルフル震えている。
シャトル搭乗口
「・・・えばいいだろ・・・」
シャトル搭乗口まで来たとき、下を向き黙って歩いていたアスランが何かを言った。
「「「「「「??????」」」」」」
一同、アスランが何を言ったのか聞き取れなかった。
イライラしていたイザークが、
「何だ!?言いたいことがあるならっ」
そこまで言ったとき、アスランがグワシッ!とイザークに掴みかかった。
突然の出来事にギョッとするイザーク。
「言いたきゃ言えばいいだろ!俺のせいだと!俺が寝坊したから集合時間に遅れたのだと言えばいいだろ!」
ガクガクとイザークを揺さぶりながら怒鳴るアスラン。
普段物静かなアスランが、怒りの形相で掴みかかってきたせいでしばし固まってしまったイザークだが、気づいた。
「っ・・・だからさっき貴様のせいだと言っただろうが!!」
アスラン・・・人の話はしっかり聞きたまえ・・・今まで黙って聞いていたクルーゼはそう思った。
アデスも呆れ顔だ。
はどうしていいのか分からず、オロオロしている。
と上官二人の顔色を窺ったニコルは、
「やめて下さいアスラン!今更逆ギレなんてみっともないですよ!貴方らしくもない!」
そう言い、アスランに手を離すよう促す。
ディアッカも、
「そのくらいにしておけよ!イザークを殺す気か?言い方は悪かったかもしれないが、遅れた原因はたしかにお前だろ?」
と、アスランをなだめ手を離させようとする。
アスランは、掴みかかり揺さぶりながらイザークを絞めていたのだ。
ジタバタしている。このままではイザークは温泉施設にではなく、天国へと旅立ってしまう。
早く救い出さなければ・・・
「もういい、手を離したまえアスラン」
「手を離せ、アスラン・ザラ!」
見るに見かねてクルーゼとアデスまでもがアスランに手を離すよう促す。
イザークは不自然に痙攣している。そろそろヤバイ。
「・・・俺の・・・俺のせいで・・・」
アスランのこの行動は、自分を極限まで追い詰めた結果だった。
言われるまでもなく、深く反省していたのだ。
「アスランさん・・・」
今までどうしようかとオロオロしていたが、優しくアスランに話しかけた。
「クルーゼ隊長もアデス艦長も皆さんも、許して下さってます。ですから、どうかイザークさんを離してあげて下さい。
これから楽しい旅行へ出発するんですから、ね?」
自分の手に触れ、ニコっと微笑むを見て、アスランはパッとイザークを掴み絞めていた手を離した。
何なんだよ!しかもに触れられて!と、今まで説得していた者達は思ったが、早く先に進みたいので黙っていた。
帰ってきて、戦闘になったら少し攻撃してやろうという決意を胸に抱いて。
そしてアスラン・・・
「あ・・・すまない。俺としたことが・・・」
言葉と温もりに、正気を取り戻した。自分のしたことを思い、申し訳ないやら恥ずかしいやらで頬を赤らめから視線を外す。
謝罪する相手が違ってるだろ!と、イザークは喉元を抑えながらも抗議しようとしたが、皆に止められた。
そんなイザーク達に気付かないは・・・
「大丈夫ですよ♪」
と、ニコリとアスランに微笑んだ。
俺は大丈夫じゃない!イザークが叫びそうになるのをディアッカが止める。
イザークを天国へ送ろうとしていたアスランは・・・
優しく可愛い・・・ラクスには悪いが、彼女のほうが好みだ・・・
と、思っていた。
まったくもって面白くない面々。
どことなくいい感じの二人に、代表で割って入ったのはやはりこの方。
「さて、問題も片付いたことだ、シャトルに乗ろうではないか」
スッとクルーゼがとアスランの真ん中に割ってはいる。
一瞬アスランがムッとした顔をしたのを見たが、捨て置く。
このクルーゼの行動を見て、ナイス隊長!と、この時ばかりはアスラン以外の男達の思いが一致した。
ここはまだシャトル搭乗口。
こんな調子でこの先どうなってしまうのか・・・
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