クルーゼ隊、温泉計画5
宿泊施設到着。
送迎バスに乗り、宿泊施設に辿り着いたクルーゼ隊。
「わ〜綺麗〜」
目の前のいかにも高級そうな建物に、が感動の声をあげた。
「気に入って貰えたかな?さぁ、中に」
クルーゼは、ふっ。と微笑み、さり気なくの背中へ手をやった。
セクハラ仮面!!
と、隊の誰もが思ったが、堪える。
明るい空気とドス黒い空気を放ちながら、クルーゼ隊が施設内に入ると・・・
「歓・迎!!」
やたら元気な少年が迎えてくれた。
アルバイトだろうか?
「予約をしていたクルーゼだ」
フロントでチェックイン手続きを取るクルーゼ&アデス。
その間、他の者達はロビーでくつろぐ。
「さんっ」
今がチャンス!とばかりにニコルがに話し掛ける。
「とても綺麗な魚や、可愛い海獣が見られる水族館があるみたいなんです。
よかったら、荷物を置いてから一緒に行きませんか?」
シャトル内で考えていた事を、実行に移す。
「水族館!?行きたいっ!イルカが見たいなv」
瞳を輝かせ、嬉しそうにはしゃぐ。
当然面白くない面々。
「水族館か、俺も行きたいな」
ディアッカが出張る。
「俺も丁度、海獣が見たいと思っていたところだ」
顔をひきつらせながら、自分も行くと言い出すイザーク。
「散歩よりも水族館のほうが楽しそうだし、俺も行く」
遅れをとるわけにはいかないアスランも出張る。
ニコルの表情が一瞬、「何でついてくるんですか・・・」となったのを、三人は見逃さなかった。
後が少し怖いが、を渡すわけにはいかない。
「じゃあ、皆で行こうっ!私、クルーゼ隊長やアデス艦長にも言ってくるね」
「「「「いやっ、それは駄目っ」」」」
四人の声が重なる。
やっかい者を呼んでもらっては困る。
ただでさえ、自分以外は敵なのに・・・中ボスとボスを呼ばないでほしい。
中ボスは何とかできるが、ボスは本当に手ごわい。
「?どうして?」
にとってはかなり不思議なこと。
当然の質問だ。
「あー・・・そのっ」
言葉につまる一同。
「クルーゼ隊長とアデス艦長は、魚アレルギーだ!」
突然イザークがとんでもない嘘を吐いた。
嘘付け・・・すぐにバレることだが、
「そ、そうなの?それじゃ駄目だよね。そんな嫌がらせみたいな事言えないね」
は信じた。純粋。
それじゃあ、五人で行こう。と話していると、手続きを終えたクルーゼとアデスがやってきた。
「なにやら楽しげに話していたな?どこかに出かけるのかね?」
そんなに大きい声で話していたわけでもないのに・・・地獄耳・・・後ろにも目が付いてたりして・・・
と、エースパイロット四人は思った。
「隊長、荷物を部屋へ・・・」
会話に入れないアデス。無理やり割り込みました。
「ああ、アデス、すまないが、従業員と一緒に荷物を部屋に運んでおいてくれ。
私は皆と出かける。保護者として、共に行動しなければな」
もちろん口実。が行くから行くのだ。
部屋のことといい、かなり可哀想なアデス。
「あの・・・待って・・・はいだけないでしょうか?」
自分も行きたいです隊長!という感じがする言い方。
「ゆっくり見学し、余裕を持って帰って来たいからな。頼んだぞ、アデス」
「・・・はい・・・」
待てない。と、ハッキリ言わないものの、十分に伝えることができた。
「さて、どこに行くのかな?」
私を出し抜こうなんて十年早い。といった口ぶりで行き先を尋ねると、が困ったという表情でクルーゼを見上げた。
「隊長・・・」
「ん?何かね?」
ああ、可愛い。可愛すぎる。早く二人きりになりたいものだ。と、考えているクルーゼ。
「実は・・・行き先は水族館なんです。そのっ・・・隊長、魚アレルギーなんですよね・・・」
「「「「カっ、ーっ」」」」
慌てる四人。
「・・・魚アレルギー?私がか?」
何だそれは?という表情になるクルーゼ。仮面よりはサングラスの方が表情が分かる。
「はい。さっき、イザークが・・・」
とても正直な。言ってしまいました。
「ほう・・・」
チラリとイザークを見たが、すぐにに視線を移すとニッコリ微笑みながら言った。
「それはイザークの勘違いだな。昼食の時、私はシーフードサラダもオーダーしたはずだ」
そう。たしかにシーフードサラダをオーダーしている。
やっぱり嘘など付くものではない。すぐにバレてしまうのだ。
「あーっ!たしかに・・・申し訳ありません、隊長」
自分の記憶力を疑い、少し涙目になりながらは謝罪した。
「詫びることなどないさ、君は何も悪くない。さぁ、早く行こう」
クルーゼは優しくそう言うと、今度は肩に手を回した。
「「「「(セクハラ変態仮面!殴ったろか!)」」」」
考えることが過激になってきた四人。
自分の部下が反抗的な考えをしている事は感じているが、クルーゼは大人。
無視した。
そして、水族館到着。
チケット売り場。
「大人二枚だ」
自分とのチケットだけ買うクルーゼ。
「隊長!?」
は慌てた。ここまで部下に良くしてくれる上官を知らなかったから。
「気にすることはない。私の気持ちだ」
どこまでもに優しい隊長。
ますます気に入らない四人組み。
「ケチくさいですよね」
「高給取りのクセして」
「ああいう大人にはなりたくないってね」
「ふんっ。自分で買ったほうが身のためだ。後で高くつきそうだからな」
ぶつぶつと文句を言いながら、それぞれチケットを購入する。
全員がチケットを買ったところで、中へ入った。
館内に入ってすぐに広がる美しい光景。色とりどりの魚達が優雅に泳いでいる。
さらに進むと、巨大な魚?が目に飛び込んできた。
「大きい〜!マンボウだ〜」
子供のようにはしゃいでいるを、誰もが可愛らしいと思っていた。
たまたま隣にいた見知らぬ男性も、に気づき頬を赤らめている。
視線に気づいたイザークは・・・
「おいっ!何を見ている!?」
思いっきり威嚇した。
「いっ、いえっ何でもっ」
あまりの迫力に、男は慌てて走り去った。
かなりの慌てよう。
それを可哀想に思ったがイザークに注意した。大分打ち解けたので、大丈夫だ。
「イザーク?お客さん脅かしちゃ駄目だよ〜。ただマンボウ見てただけなのに、気の毒」
何も分かっていない。
どこの世界に水族館のマンボウ見ているだけの人を脅す人間がいるのだろう。
「なっ・・・違う!アイツがいやらしい目で見ていたからっ」
に、誤解されてしまったイザーク。慌てて弁解する。
すると、少し困った顔になったが驚きの一言を放った。
「そういう趣味の人もいるんだよ。マンボウに欲情しちゃ駄目なんて決まりないもの」
イザークが言葉足らずだったのか、それともが天然なのか、とんでもない方向に話が進んだ。
数秒の沈黙。
「ふっ、、、はははははっ」
「・・・君って人は・・・(笑」
「違いますよ、さん(笑」
「あははっ、ってばやっぱ可愛いっ」
黙ってやり取りを聞いていたクルーゼ・アスラン・ニコル・ディアッカが堪えられなくなり、笑い出した。
「??どうしたの?隊長まで、どうしたんです?」
キョトンとしている。
一方、イザークも脱力しているものの、こういう所も和んでいいんだよな。と思っていた。
しばしの間笑っていたが、はぁ。と息をつき、の頭を撫でながらクルーゼがイルカを見に行こう。と言い出した。
そろそろイルカショーの時間、丁度いい。
イルカプール。
イルカショー開演5分前。人が大勢集まっている。
まだ席はあるものの、早く座らなければ埋まってしまう。
「、来いっ」
クルーゼや皆が見やすくて良い席を探している隙をついて、イザークがの手を引いて階段を駆け上った。
人ごみに紛れて座ってしまえばわからない。
「イ、イザーク!?皆と離れちゃ・・・」
「心配ない。いなければ出口で待っているはずだ」
は皆と離れては、と心配したが、イザークはおかまいなしだ。
チャンスがあれば掴む。待っていてるだけでは駄目なのだ。
上手い具合に紛れ込めた。皆は自分達を見失った。と、イザークはホクホク顔。
「とイザークがいない!」
二人がいない事に一番早く気づいたアスランが声を上げる。
「何だと!?」
アスランの叫びに、語気を荒くするクルーゼ。
「あのパッツンカッパ!」
普段は気が合う仲の良いディアッカも、これには怒った。
「やられましたねっ・・・」
ニコルも相当悔しそう。元は自分が計画していたのだ。悔しくて当たり前。
「ちぃっ・・・イザークめっ・・・」
クルーゼは、皆が動けなくなるほどの怒りのオーラを放っている。
すぐ側の席、イルカはまだなのかと泣き喚いていた子供が、クルーゼの迫力にさらに泣き出した。
「ママ〜このおじさん怖いよーっ」
「!?」
子供に気づいたクルーゼ。
おじさんっ!?私はまだ28だ!と、内心憤慨しながらも、
「ははは、すまないな。お兄さん、少しイライラしてしまってね。ほら、飴をあげよう。だから泣き止んでおくれ」
ポケットから飴を取り出し、子供に食べさせた。
子供は喜び泣き止む。母親はお礼を述べつつ警戒する。
母親がいなければ、誘拐犯だと思われても仕方のない隊長。
その頃のイザーク&
「・・・」
さり気なく手を握ったまま、イザークは話し出した。
「なぁに?」
イルカのショーはまだか?とワクワクしている。その瞳はイザークではなく、イルカプールを映している。
「まだショーは始まらん!俺を見ろ!」
強い口調で言われ、驚き、イザークの方に向く。
「あ・・・ゴメンネ」
怒らせてしまった・・・と、反省する。
その様子に少し困るイザーク。
「いやっ・・・そのっ・・・今夜・・・俺と付き合う気があるなら、皆が寝静まってからロビーに来いっ///」
無茶苦茶強引な告白をしてしまった。
言われた本人は目を真ん丸くしている。
「・・・付き合うって・・・」
多分、分かってはいる。が、確信がもてないらしい。
聞き返してしまった。
「付き合うとは、そのままの意味だ!つまりっ・・・俺の女になる気があるかということだっ///////」
そこまで言うと、イザークは真っ赤になった顔を見られまいとそっぽ向いた。
「///っ・・・考えさせてね・・・///」
もまた、赤くなり下を向いた。
考えさせて・・・こう言ったのには理由がある。
の脳裏にクルーゼの姿が浮かぶ。どうしたらいいのか・・・
自分の気持ちが分からない・・・
の心を感じ取ったのか、
「待ってやるさっ。深夜までにハッキリさせておけ。俺はずっとロビーで待ってるからな///」
と告げるイザーク。
待ってやると言ったわりにそれは深夜まで・・・短気だ。
真っ直ぐな男のこの恋、成就するのだろうか・・・?
話しているうちに、イルカショーが始まったが、二人ともそれどころではない。
イルカが飛び跳ねたりして色々魅せているのを、ただ見ているだけになってしまった。
イルカショー終了。
「・・・イ、イルカ、凄かったね!」
イザークに言われたことが気になってイルカどころではなくなってしまったが、沈黙は辛い。
適当にイルカの話を持ち出してみた。
「ああ、綺麗だったな。そろそろ行くぞ。あいつら、今ごろぶーたれてるだろうからなっ」
平然を装っているものの、気になって気になって仕方ないイザーク。
このままでは、答えを迫ってしまいそうだ。
せっかく二人になったのだが、皆と合流することにした。
出口。
「イザーク!勝手な・・・」
「どういうつもりですか!?さんを連れ出すなんてっ・・・」
「何かあったらどーするつもりだったんだよ!?」
「勝手な行動をとってもらっては困るな、イザーク。我々がどれほど(の)心配をしたか、分かっているのかね?」
イザークとの姿を見るなり、皆口々にイザークを責めたてに寄ってきた。
に想いを伝えていた・・・などとは絶対に言えない。
ギャーギャーと騒ぎ責めたてられているイザークが気の毒になり、は嘘までついて弁護した。
「すみませんっ。私があの辺りが綺麗に見えそうだって言ったから・・・だからイザークは連れてってくれただけで・・・」
瞳を潤ませてイザークをかばうを見ては、誰もそれ以上は言えなかった。
「そうか、ならば・・・今度から気をつけたまえ」
ぽむぽむ。との頭を軽く叩くクルーゼ。
「申し訳ありませんでした」
愛しいにいつも触れる上官に、激しい嫉妬心を燃やしながら謝罪するイザーク。
「いいさ。無事だったのだからな」
ちっとも良くなさ気。
「さて、そろそろ宿に戻るか。一風呂浴びて、夕食の丁度いい時間になる」
時間はあっという間。
「そうですね。戻りましょう。まだ二日ありますもんねっ」
クルーゼを見上げ、ニッコリと微笑み話す。
一同も賛成する。
まだチャンスはあるはずだ・・・
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