優しい人……
「ありがと……信じるわ……ねぇ、私……これからどうしたらいいのかな?」
あっさりとロブノールの言う事を信じた。
そして、何処にも行く所がない、この先どうしたらいい?と聞く。
ロブノールは溜息を一つ、ゆっくり立ち上がると
「……これからどうするのか、それはお前が自分自身で考え決めること。
自分の思うように、好きにすればいい」
自分で考え決めろ。と言い、踵を返した。
その背に、は信じられない言葉を投げる。
「っ、好きにしていいなら、ここに置いて!ここで生活したい!」
「っ!」
唐突な申し出に驚いたロブノールは、思わず立ち止まり振り返った。
吸血鬼と暮らす……人間のまま……
人間からは吸血鬼に肩入れする魔女と言われ、抹殺の対象にされるだろう。
他の吸血鬼達からは食料や花嫁候補として狙われるだろう。
それでも?
「……覚」
「覚悟は今した!きっと、人間からも吸血鬼からも狙われる。それでもっ、ここに置いて欲しい。
受け入れてくれない人間より、親切にしてくれた貴方達吸血鬼がいい!貴方達と一緒にいたい!」
とても真っ直ぐな瞳をしている。
さっきまで弱気になって泣いていたというのに、なんて立ち直りの早い……
貴方達と一緒にいたいという言葉にロブノールは
「面白い娘だな」
と言うと、身に着けていたペンダントを外し、の首にかけた。
柔らかな光を放つ大粒のムーンストーン。
「え、と?」
「お前にやろう」
「???」
仲間の印か何かなのだろうか?
何だかよく分からないが、とても綺麗。
素直に嬉しい。
は首にかけてもらったペンダントをキュッと手に包むと、「ありがとう」と笑顔を向けた。
完全復活。
ランプを片手に鏡の前に立ち、ペンダントに触れたりして嬉しそうだ。
"……悪くはない、な"
ロブノールは穏やかな瞳での様子を見守っている。
少しの間、話をしてみようか?
と思ったが、チラリと時計を見てやめた。
もうすぐ夜が明ける。
吸血鬼はお休みの時間。
「さて、私はもう眠る時間だ」
「えー、寝ちゃうの?」
寝ると言うロブノールに、が駄々をこねる様な声を上げた。
「……起きていて欲しいのか?」
「あ、その、んー……」
起きていて欲しい!が本音。
だけど……
「んー……いい。気にしないで休んで?」
色々と聞きたいことがあるのだが、仕方がない。
起きてからにしよう。
「おやすみなさい」
はロブノールを見送った後、ベッドにボフッと倒れこんだ。
"今日からここが私の家……部屋……やっと落ち着ける、かな"
瞳を閉じ、ウトウトと寝る体勢。
歩き回ったら迷子になりそうだし、一人で起きていてもつまらないし。
午後まで眠っていれば、深夜遅くまで起きていられる。
彼らと話すことが出来る。
"アウインさんと、ユークレースくんに宜しくのご挨拶しなきゃな……"
夜が楽しみ
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ウェルカム五話目、やっとヒロインさん住み着き完了v
ロブから貰ったペンダント……嫉妬を買うことになりますが、手を出されることはまだないと……多分。
それではっ、失礼いたします。ありがとうございました。
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