眠ること数時間
「ん、んー……」
瞼を震わせる。
「ぅー……眩し」
大きな窓から差し込んだ光が眩しくて、夢の世界から現実世界に引き戻されてしまった。
ムクリと起き上がり目をグシグシと擦る。
「……晴れたのね……何時だろう?」
窓の外を見た後、辺りを見回して時計を探す。
暖炉の側にある柱時計、繊細な針は午後13時をさしていた。
「どうしよう」
中途半端な時間に起きてしまった。
この空模様だと今日はずっと晴れているだろう。
陽が沈むまでの間、彼等が起きてくるまでの間、どうやって過ごそうか?
「はあ、どうしよう」
退屈。
は室内をウロウロと動き回って考える。
どうやって時間を潰すかを。
―――考えながら室内をぐるぐる回ること十数分―――
「決めた!お城の中を散策しようっと」
迷子になりそう。迷子になったら困る。など、色々迷ったが散策くらいしか浮かばない。
「どっちに行こうかなぁ?」
決まれば早い、早速部屋を出て散策開始。
「ここは何だろう?」
ひたすら歩き、色々な部屋を見てきた。
図書室も発見した。
それでもまだまだ見終わらない。
「本当に広いなぁ」
タンタン
独り言を発しながら軽くノックをし、少し待つ。
返事は返ってこない。
「誰もいないみたいね」
いたらいた時。
うん。と一人頷き、はそっと扉を開けた。
部屋の中、窓は全て厚いカーテンで覆われていて薄暗い。
が、まったく見えないというわけではない。
「うわぁ……」
目に付く物全て繊細で高級感漂う物ばかり。
「ここのお部屋も凄いなぁ……ロブノールさんの趣味?」
「半分はね」
「!!」
独り言に返答され驚く。
慌てて振り返ると・・・
「え、あ、あれっ?」
誰もいない。
気のせいかな?と思い、再び前を向いたら・・・
「きゃああっ!?」
茶髪の少年が天井からスタッと下りてきた。
目覚めて最初に会った少年、ユークレース。
「そんなに驚く事ないのに」
自分は吸血鬼。天井から下りてこようが人間の目に止まらぬ速さで移動しようが不思議ではない。
いちいち驚かないで欲しい。
ユークレースは、はわわ。と驚いているを冷めた目で見つめながらそう思った。
「……で、何の用?」
「え、用?」
何の用だと聞かれた、今度はキョトンとした顔になる。
用などない。
目的も何もなく城の中を見て回っていただけだ。
「用は……ない。って言ったら、怒る?」
恐る恐る聞くと・・・
「別に」
素っ気なく返された。
そして、用がないなら出て行ってくれる?と言われた。
今いるこの部屋、ユークレースの自室だったらしい。
は慌てて詫び、退室しようと扉へ向かった。
出て行く時、そうだ!今日からこのお城に住まわせて貰う事になったって話さなきゃ。
宜しくって言わなきゃ。と思い出し、あのね……。と切り出したら・・・
「知ってる……ロブから聞いた」
ロブノールから聞いた、と冷たく返されてしまった。
少し寂しい。
「そ、そっか、ん。えと、とにかく……宜しくね?」
これから一緒に暮らすのにな。
少しションボリしながら言い、背を向けると・・・
「そこのテーブルの上にある本、持っていけば?」
本を持っていって良い。という言葉を投げられた。
散策に疲れて部屋に戻った時、暇つぶしになる。と。
「え?あ……ありがとう!」
ユークレースの好意は初めて。
はパァッと明るく微笑み、振り返った。
が・・・
「別に」
また素っ気ない態度で返され、バタンと棺に入られてしまった。
何か気に入らなかったのかな?
は小首を傾げた後、まあいっか。と、遠慮なく本を借りてユークレースの部屋を後にした。
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六話目、やっと書き終わり。
今回のお話相手はユークレースv
初対面の時よりは柔らかい態度になったかな?とか。
素直ではない子、徐々に……。
と、それでは、読んで下さってありがとうございました。
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