「どうしようかな」



は迷っている。



このまま部屋へ戻ろうか、まだ部屋などを見て回ろうか。



「うーーーん」



本をぎゅっと抱えこんで考える。



どうする?



散々考えた末に出した答えは―



「見て回ろうっと」



見て回る。



好奇心旺盛なお年頃。





適当に歩き回り始めて十数分―――





「ここは……ちょっと寂しいお部屋ね」


他の部屋に比べ置いてある物が少ない。


必要最低限の物だけしか置かれていない。


すっきり整っていて良いと言えば良いのだが―


「冷たい感じがしちゃうのよね」


はぶつぶつと独り言を零しながら室内を見て回る。


そして……


「ん?あれは」


部屋の半分ほどを見たところで寝台上の棺に気づいた。


布団などはない。


寝台の上に棺が置いてあるだけ。


「……アウインさんかロブノールさんが入ってるのかな?」


起こしちゃおかな。


暗いし、大丈夫よね?


ユークレース君は起きてたんだもの。


大丈夫よ、きっと。


棺の前に立ち、そっと手を伸ばした瞬間――





「何をしているの?」





背後から突然声をかけられた。


びくりと肩を震わせる


高圧的に問いかけてくる声はメゾソプラノ。


女性。


言葉を交わした者達の中に女性はいなかった。


ここは吸血鬼の城、考えて出てくる答えは一つ。


女性吸血鬼。





どうしよう……口調からして友好的じゃないし。


なんて言って説明しよう……





緊張から苦しくなった胸を押さえて考えていると、


「人間、この部屋で何をしていたのか、早く答えなさい?」


苛立った口調でもう一度問いかけられた。


答えないわけにはいかない。


ゆっくりと声の主の方へと向く。


振り向いて初めて目にした女性吸血鬼は想像していた通り、自信たっぷりの妖艶な美女だった。



うわぁ、胸大きい……コンプレックス刺激されるな。



緩んだことを考えてまた黙ってしまう



何馬鹿なこと考えてるのよ私っ。


早く答えなきゃ……



「あの」

「あら?」


女は女で鋭い目でを見て黙っていたが、ふと首にかかっているペンダントに気づき冷たい口調で


「人間、そのペンダントはロブノールの物ではなくて?」


今度はペンダントのことを問いかけてきた。


何をしていたかよりも気になるといった様子。


「え、あ、ペンダント?これ、これはロブノールさんから」

「彼から貰ったというの!?」

「は、はいっ」


責めるような口調で彼から貰ったと言うのかと言われ、また肩を震わせた。



この人怖い……



縮こまっていると―


「そう、そうなの……よく似合っているわ。素敵」


どうしたことか、女は急に表情を柔らかくした。
素直なには分からない。
女の内心で激しい嫉妬の炎が燃え上がっていることなど。
敵視されたことなど。
内心に気づかないは、きっとペンダントのおかげ。と判断し、人懐っこい笑顔を見せた。


「ありがとうございます!とっても気に入ってるんです!」

「そのようね。で、貴女、名前はなんていうの?」

っていいます!」

「そう、……。覚えておくわ」


人に名前を聞くときはまず自分から!なんて考えは飛んでしまったらしい。

無邪気に女にペンダントを見せていると―――



「随分と賑やかだな」



カチャリと戸が開き、ロブノールが入ってきた。


正確に言うと、帰ってきた。


「ロブノールさん、あのっ」

「ロブノール!ああ、もう。貴方ったら全く逢いに来てくれないものだから、私寂しくて来てしまったのよ」


が勝手に部屋に入った事を詫びようと声をかけたと同時、女に割り込まれてしまった。


何だろう、邪魔されている気がする。


そんな事を思いながら会話を聞いていたら、女の名が分かった。


「カルミア、すまないがまた今度にしてくれないか?」



カルミア……

あの人の名前……



はボウッと頭の中で考えていた。


どういう関係なんだろう?





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七話目、やっと書き終わり。
今回のお話相手は……カルミア?
いきなり嫉妬心燃やされ始めました、ヒロインさん。
頑張れヒロインさんっ!
と、では、読んで下さってありがとうございました。



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