「あ〜、疲れたわ〜。今日はこれくらいにしましょうよ」
「賛成っ」
「そうだな、残りはまた明日にするか」



父の仕事の都合で田舎から都会に越してきた佐々木家。
少々のん気な父と母に、明るく活発な娘が一人。
ごくごく普通のこの一家、越してきた家に驚くべき先住人がいる事を知るまで後もう少し―――






天上裏のディラルさん






「〜イイ湯だった」


入浴を済ませた佐々木家の一人娘、は鼻歌を歌いながら階段を上る。
新しい自室で休むため。
荷解きはまだまだ済んでいないが落ち着ける場所。
自然と鼻歌だって出る。


「ふんふん〜」


はカチャリと部屋の扉を開け、中に入るとすぐさまベッドに潜り込み携帯電話を取り出して友人にメールを打ち始めた。


「はあっ」


仲が良かった友人達、これからは簡単に会って遊ぶ事は出来ない。
送信後に携帯を見つめながら思う。

何かなー。

新しい大学でも上手くやっていけるかとか、不安と期待が入り混じった複雑な気持ち。
今夜は眠れないかもしれない。
そんな事を思いながら布団に包まっていると――





ゴト……ゴトト……





「!?」


天井裏から物音が聞こえてきた。
それも、結構大きな音。


「な、何?ネズミ!?」


は起き上がり、携帯を片手に押入れの戸を開ける。
カメラのフラッシュを懐中電灯代わりにし、おそるおそる中を照らす。
天井裏、見て見ようかどうしようか。


「どうしよう……お父さん呼んで来ようかな……あーもうっ、引っ越してきた初日に大きなネズミに遭遇なんてサイテー」


ぶつぶつと言いながら押し入れ内を照らしていると――





ゴト、ゴトン……ガタッ





「黙って聞いていればネズミネズミと失敬な」





少しムッとした声と共に、天井裏から長身の男が出てきた。
瞳は緑で、長い銀髪を背で束ねているのがフラッシュのおかげで分かる。


「ぅ、きっ、きゃー!」
「うるさい騒ぐな。ご近所に迷惑ではないか。何時だと思っている?」


突然現れた見知らぬ男(しかも外国人だ)に驚き叫ぶと、シレッとしている男。
微妙過ぎる初対面。



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吸血鬼と言えば切なかったり耽美だったり。
それを壊すギャグ吸血鬼がいても良いのでは?と思い生まれたディラル。
正統派(?)がお好きな方には向かないこと決定ですが、大丈夫な方には楽しんでいただければな、と思っております。
それでは、読んで下さってありがとうございました。



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